Scene16 風の吹くままに
「それで、提案して万が一蹴られたらどうするんです?」
「その時はその時だろ、アリスには強制してないわけだし」
アリスの居た病室から退出し、アリスの両親と別れたジャスミンは小無の家に向かっていた
「それにしたって無計画過ぎなんじゃないですかね」
「・・・お前が心配しすぎなんだ
今、あいつは私が居ることで普通に過ごせてる
幾らアリスが強大な魔法を行使できるからってそう簡単に今までの事を水に流してはいおしまいじゃないんだ」
「ですがねえ・・・」
そうしているうちに小無の家についた
小無は、家の前に着くと素早く周囲を見渡し、異常がないことを確認して、音を立てることなく玄関に入り、ロックをかける
この家は彼女専用に予め用意されていた物であるため、同居者は居ない
そして2階の自室に入ると、ジャスミンを伴いカーテンを閉める
そしてウォークインクローゼットに入ると、丁度外からは死角になる位置に、不自然な金属製の分厚い扉と、暗証番号及び静脈パターン認証装置の付いたボックスがある
小無が番号を打ち込み、認証装置に手を翳すと小さな電子音と共にロックが解除され、ドアが開く
本来なら魔法文化の発達したこの大陸においては必要がないものだ
他人に入られたくなければ魔力認証術式を用いればいい
にも関わらず、機械にわざわざ対魔法障壁を加えているのは、小無は本来魔法は使えないし、魔力も持っていないためである、と説明された
「何だこの仕組みは」
「一時的とはいえ、こっちの世界で過ごす訳ですから、通信手段は必須でしょう」
そう言いながら開いた扉の中に入る
すると完全に扉が閉まり、明かりが点いた
微かな振動が足下で起こり、続いて降下する時の独特の感覚がした
「なんだ、これ
降りているのか?」
「ええ、私は箱形可搬昇降機と説明を受けましたが」
「どうしてこんなものが・・・」
「地下室も含めて家ごと搬入したんですよ
地下室だけ別に持ち込もうとすると怪しまれますからね、こちらでの工期を出来るだけ短期間に収める必要があったのでこうしました」
「家ごとって・・・
いきなり家が1軒建つ方が怪しいだろ」
「そこは貴女が人間社会に紛れるのと似たような手段を使いました」
「・・・幻覚見せたんだな」
「大体そんなとこですね
・・・貴女の場合は魅了したんでしょう?」
話をしている間にまた微かな振動と共に感覚が収まった
扉が開くと同時に目の前の真っ暗な空間の照明の電源が入り、金属で出来た、よく分からないものが照らされる
そして、正面の不自然な黒い板が目に入った
「少し待っていてくださいね・・・」
そう小無が言いつつ、手元のボタンのようなものを手早く押していく
すると、先ほどまで黒く、小無とジャスミンの顔を反射していた板・・・テレビのようなものか・・・が光を放つ
暫く画面を見ていると、やがて全体的に紫色をした少女がその画面に映った
「お久しぶりです、パチュリーさん」
「私のファーストネームはノーレッジなのだけれど
まあいいわ、わざわざこんなの使って連絡寄越すって事は進展があったのね?」
「ええ、もうそろそろ調査も終了と言うことで」
「ちょっと待った、そっちは誰?」
「私はジャスミン・ルーナ・ノーレッジだ」
「ああ、監視対象の片割れね
・・・ってことは」
「すぐにバレました
アハハ・・・」
「笑い事じゃないわ
それじゃあ監視者失格ね」
「そんなあ・・・」
「茶番に付き合ってる場合じゃないわ
これ使ってきたなら連絡することがあるんでしょう」
「ええ、ジャスミン・ルーナ・ノーレッジ及びアリス・ソル・メイディア共にそちらでも問題ないでしょう
ただ、ここにいるジャスミン・ルーナ・ノーレッジはともかく、アリス・ソル・メイディアの方についてなんですが
彼女、普段は人間の域を越えてない程度の魔法遣いなんですが、どうやら一時的に覚醒するタイプの魔法遣いのようです
少なくとも、こちらの世界では常識外れな威力の攻撃魔法を行使しました」
「その状態になろうものなら境界の妖怪辺りが飛んできそうね」
「尤も、その状態になるのはそれこそ瀕死の重傷負った時だけのようですが」
「そう、あの資料に記載した理性を保った暴走の保有者だったて訳ね」
「それと彼女、伝説の魔導書の保有者でもあるようで」
「一時的とはいえ、バランスブレイカーには充分なり得る程の素質ね
まあ、その辺りはこっちでどうにかできないか試してみるわ」
「報告はそれくらいですね、では」
そう言うと、画面の電源が切れた
「今のは誰だ?」
「彼女はパチュリー・ノーレッジ
100年程生きている、生粋の魔女ですよ」
「私より年下か
それにしてもファーストネームが共通っていうのは・・・」
「『縁があるから』でしょう?」
「そう考えた方が楽か」
「ええ」
あとは、アリスの返答を待つのみか
なんかタイトルがエンディング風ですが、まだあと1.2話ある予定です
しかし、この国の文明設定難しい
前にニュースで流れてたって文があるので、電気があってテレビもあるけれどエレベーターがない、何とも不思議な世界
因みに、途中にScene4.5用に書いてボツになった文を一部改変して流用しました
あの段階でバラすのは早すぎますからね
そして、オリジナルじゃない幻想郷の住人初登場
書いてるうちにこれパチュリーじゃなくてレミリアの口調なんじゃとは思いましたがね




