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この世界で生きる少女  作者: あまね


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17/24

希望の激マズ薬

「……麻薬をやめさせる方法自体は、なくはないんですけど……」

私がそう言うと、カイテルさんが首を傾げた。


「……え?……本当か?やめさせる方法なんて、あるのか?」


「はい。ただ……すごく辛いです。本人に強い意思がないと、途中で耐えきれなくなってしまいますけど……」


「どうやるんだ?」


「ディルという植物を、たっぷりのお湯で煮出して、飲ませ続けるんです。

そうすると、体の中が少しずつ浄化されていきます」


「ディル?……庭にある、あの木のことか?」


「はい。あのディルは、汚れた水に入れると水をきれいにしてくれます。

そのまま植えておくだけでも、空気を浄化してくれるんです。毒もなくて、すごい植物なんですよ」


「そ、それで……体の中の麻薬まで、きれいにできるというのか?そんなこと……聞いたことがない……」

カイテルさんは、半信半疑のまま眉をひそめる。


「これは……おじいちゃんが、たまたま見つけた方法なんです」

私は、少しだけ視線を落として続けた。


「数年前、森で麻薬に依存していた人を見つけて、

その人をおじいちゃんのところへ連れていったことがあったんです。

でも、おじいちゃんも最初は、どうすればいいのか分からなくて……」


数年前のことを思い出す。


「それで、ディルは水も空気もきれいにするんだから、

もしかしたら体の中の“汚れ”も、同じように浄化できるんじゃないかって、おじいちゃんが思いついたんです。

それでディルの葉を潰して、お湯で煮出して……それを、飲ませ続けました。

四ヶ月くらい、必死に飲み続けて……中毒症状は完全になくなりました。その人は今も元気に村で暮らしています」


「……そんなことが……」

カイテルさんは、言葉を失ったように呟く。

「この話……すぐに、お父様に伝えなければ……」


「ただ……本当に、すごく辛いみたいです」


「……辛い、とは……具体的に、どんな症状が出るんだ?」


「症状というか……その、ディル薬がとにかくすごく濃くて、ものすごく苦いんです。

苦すぎて、飲むたびに吐いてしまうらしくて。

私も一度、味見してみたんですけど……本当に強烈で。

その日は一日中、何を口に入れても味が全然わからなくなりました」


カイテルさんは目を見開いた。


「の、飲んだ……のか!?」


「味見です。ちょっとだけで。それで、その苦いディル薬を――

一日に三回、大きなバケツ一杯分。飲み込んでは吐いて、また飲み込んでは吐いて……

それを、ずっと繰り返したんです」

カイテルさんは、さすがに言葉に詰まった様子だ。


「じゃあ……ディルじゃなくてもいいんじゃないか?とにかく、ものすごく苦い物を飲ませ続ければ……」


「うーん……どうでしょう」

私は少し首をかしげた。


「私は味見しかしていないので、断言はできませんけど……

でもディルは、本当に汚れた水や空気をきれいにしてくれるんです。

だから、体の中に入ったディルの成分が、体内を浄化してくれるんじゃないかって――

おじいちゃんはそう推測していました……実際、成功例もありますし」


「……まあ、確かにな」

カイテルさんは小さく息を吐いた。

「これは……すぐにお父様に話さないとな。どうするかは、お父様の判断に委ねる」


「何か、私にできることがあったら言ってください。カイテルさんの力になりたいです」


カイテルさんは少しだけ顔を赤らめながら、私の頬に触れた。

「……ありがとう」



夜。

早速お父様に呼ばれた。


「リーマ、さっきカイテルから聞いたよ。麻薬をやめさせる薬があるんだってな」

お父様は真剣な表情で続けた。


「その話が本当なら、私たちにとっても――いや、この国にとっても、非常に喜ばしいことだ。

麻薬で苦しんでいる国民を救える可能性がある。

どんな植物なのか。

どんな効果があり、どれくらいの期間が必要か。

どんな症状が出るのか。

知っていることを、できるだけ詳しく教えてくれ」


そう言われてしまえば、話すしかない。


私は一度息を整え、知っていることを一つ一つ、丁寧に話し始めた。

ディルは空気も水もきれいにしてくれる植物のこと。


以前、村に現れた麻薬依存者に、おじいちゃんがディル薬を飲ませたこと。

今その麻薬依存者が村で穏やかに暮らしていること。

ディル薬は異常なほどの苦みを持つこと。

四ヶ月ほど飲み続けると麻薬依存症が完全になくなったこと。


一通り話が終わると、お父様が息を吐いた。


「徐々に体がよくなり、症状も少しずつ消えていった、というわけか……」


「ディルが体内の汚れを浄化しようとした結果、あの急激な吐き気は麻薬による汚れを外に出そうとした反応ではないか、とおじいちゃんは推測していました」


「なるほどな。……理屈は通る。期待はしたいところだな」

一度言葉を切り、お父様は静かに続けた。


「明日、王様に相談してみよう。許可が出たら、

その……げきま……ではなく、ディル薬を作ってもらえるか?

まずは、今回捕らえた麻薬団員に飲んでもらい、実際の働きを見ておきたい」


「はい、わかりました」


「もしリーマの話どおり、四ヶ月で依存症が治るなら……

王都に、そういう治療の場を作ることも考えられる。

うまくいけば、他の街にも広められるだろう」


「とても辛いですから……麻薬をやめたい、っていう強い気持ちがないと、途中でやめてしまう人もいると思います」


「だろうな……それでも、苦しんでいる人が多い。助けられる可能性があるなら、試す価値はあるはずだ」


そして、お父様は私を見た。

「ありがとう、リーマ。この方法は、我々にとって大きな希望だ。今日はもう下がっていい」


「はい。失礼します」


私は平民風のお辞儀をして、部屋を出た。


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