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この世界で生きる少女  作者: あまね


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18/24

激マズ薬、始動

翌日。


またお父様に呼ばれた。

王様がディル薬の使用を許可した――そう聞かされた。


「王様は、この薬にかなり期待しておられるんだよ。

もし、その十一人を麻薬から解放できれば、本格的な麻薬依存症の治療施設を作る。

同じように苦しんでいる国民を、救えるかもしれない――とね」


……責任重大だ。

もし、その十一人が治らなかったら、私はどうなるのだろう。

王様も、もうこの話を知っている。

失敗したら、ただでは済まないかもしれない。


そう思うと、不安がじわりと胸に広がった。

でも、これは私が言い出したことだ。

絶対に成功させたい。


いつも優しくしてくれるお父様のためにも、カイテルさんのためにも。


「はい。王様にも、お父様にも、その期待に応えられるよう、全力を尽くします」


「よろしい。早速、明日だ。あの十一人が入院している病院で、ディル薬を作ってもらいたい」

お父様は淡々と言った。


「カイテルも同行する。他にも数名の騎士、それから保健省の者も立ち会う予定だ。

薬の作り方や、治療中に起きる症状を確認したいそうだ」


「わかりました」


「必要なものは明日までに準備しておこう。間に合うよう手配する。

明日、朝早くから病院に行くから、今日はしっかり休みなさい。もう下がっていいよ」


「はい。では、失礼します」


私はいつもの平民風のお辞儀をして、部屋を出た。




翌日。


私はカイテルさんと一緒に、十一人の麻薬団員が入院している王立病院へ向かった。

ガタガタ揺られているうちに、王立病院に到着した。


受付で用件を伝えると、

「お待ちしておりました。こちらへどうぞ」

柔らかな笑顔の看護師さんが案内してくれる。


しばらく歩くと、十一人の麻薬団員がいる小屋へ辿り着いた。

小屋の中には、すでに騎士が五名、保健省の職員が三名、待機していた。


その人たちは、私を見ると、なぜか一斉に黙り込んだ。

そして、そわそわと落ち着かない様子で挨拶をし、それぞれ名前を名乗ってくれた。


……どうしたのだろうか。


「皆さん、おはようございます。リーマです。今日は、よろしくお願いしますね」

私は、にっこりといつも通りのありきたりな挨拶を返した。


「……アレックスたちが言った通り……すげぇ可愛……」


「女神……」


騎士たちも保健省の職員さんたちも、なぜか全員頬を赤くし、背筋を伸ばして敬礼した。


(……?)

反射的に頭を少し下げた。


「おまえら、さっさと準備しろ。リーマを待たせるつもりか」

カイテルさんが、ぎょっとするほど鋭い目で、騎士たちと保健省の職員さんを睨みつけた。


「なんだよ……カイテルのヤロウ……」


騎士の一人が、小さく呟きながら、しぶしぶ準備に向かった。


……この騎士団って。

仲がいいのか悪いのか相変わらず、判断がつかない。


十一人の麻薬団員は、薬を飲むと暴れたり、吐いたりする。

そのため、騎士たちは麻薬団員たちを管理するために配置されているのだろう。

麻薬団員たちも大変だけれど、騎士さんたちもきっと大変だ。


私はこっそり深呼吸して、気持ちを切り替えた。

調理場には、一袋分の葉っぱが準備されている。


私はその葉っぱを手に取り、確認した。

確かにディルの葉っぱだ。


「あのう、水を、たくさん持ってきてくれますか?」

騎士たちにそうお願いした。


「は、はいっ!何なりと!」

五人の騎士が口をそろえ、さっさと準備に向かった。


「あと、大きな鍋も……」


「はい!ただいま!」

五人の騎士が、再び口をそろえ、さっさと準備しにいく。


水を待っている間、私はディルの葉っぱを、できるだけたくさん潰しておく。


「て、手伝いますよ。リーマちゃん」

三人の保健省職員が、ぎこちなく声をかけてくれた。


……優しい人たちだね。


「ありがとうございます。あとはこれだけです。お願いします」

私は、そう言ってにっこりと笑いかけた。


職員たちはなぜか、必要以上にキビキビ動いてくれた。

さすが国の重要機関の職員だ。

保健省職員がディルの葉っぱを潰している間に、私は火を熾すことにした。


「リーマちゃん」

すると、保健省職員の一人に止められた。


「火を熾すの?じゃあ、私がやるよ。見て。私、火の魔法を持っているから」

ここにも魔法が出てくる。


「すごいですね。じゃあ、お願いできますか」


「リーマちゃんの頼みなら、何でもするよ。何でも言っていいからね」


「黙れ!さっさとしろ!」

カイテルさんが、不満を隠そうともせず、保健省職員に荒げた口調で命じた。


こわっ!

い、いきなりどうしたの、カイテルさん!?


今朝、機嫌がまだよかったのに……。


保健省職員は、カイテルさんにビクビクしながらも、火を熾してくれた。


ディルの葉っぱの準備が、そろそろ終わる頃。

ちょうどいいタイミングで、騎士たちが声をかけてくれた。


「リーマちゃ〜〜ん、水きたよ〜」


大きな十個の鍋に、水がたっぷり入っていた。

これぐらいの水なら、今日の分として、あの十一人には十分足りるはずだ。


私は、まず一食分のディル薬を作ることにした。

水が沸騰したら、ディルの葉っぱをお湯に入れて、さっと茹でる。

それで完成だ。


……超簡単でしょう?


でもこんな簡単な薬は、私と十一人の麻薬団員の命にかかっているのだ。


……失敗したら、王様に何か罰を与えられるかもしれない。


「うぅぅぅぅ……これ、ヤバい……」

私が振り向くと、みんな眉をひそめていた。


「どうしたんですか?」


「リーマちゃん、この匂い、なかなかだね……」


「あぁ……心配しないでください。すぐ慣れますよ」

私はそう答えながら、出来上がったディル薬を、次々とバケツに移していく。


「これが……薬の匂い……」


「これから毎日……これを嗅がないといけないのか……」


誰かが、小さく呟いた。

その間に、隣にいたカイテルさんが無言で窓に近づき、すっと開けた。

新しい空気が入り込み、さっきまでの重たい匂いが少しだけ薄れた。


「ありがとうございます」

カイテルさんは微笑んで、私の手から薬の入ったバケツを受け取った。


「あ……カイテルさん、大丈夫ですよ」


「リーマは運ばなくていいよ」

いつもの優しい声と笑顔だ。


「このための、こいつらだからね」

カイテルさんがチラッと騎士たちと保健省職員を見て、無表情で怒鳴った。


「おまえら、リーマに重いものを持たせる気か!さっさと運べ!」


周囲を見ると、みんなカイテルさんを睨みながら、ぶつぶつと何かを言っている。


それでも結局、言われた通りに、ディル薬のバケツを運んでくれた。


本当に、この人たちは仲がいいのか、悪いのか。


簡単には判断できないわね。


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