⑨ 自分の発明品
伯爵と京子は、6日後の9月7日の15時に、また時間旅行に行く約束をし、その日はそれで王妃と別れた。
伯爵の自室に戻って来た二人は、改めて、お互いの信頼感を高めるために、暖炉の前でワインを飲みながら、少し話をした。
「私は、西暦2003年の世界から来たのよ。」
アルコールで、少々口が軽くなった京子。
サン・ジェルマンの狙い通りである。
「ソレはまた……随分先の未来なんだね?」と伯爵。
「因みに、さっき使った乗り物……今は、すぐそこの森に隠してあるんだけど、あれがビートルよ。」
「あの乗り物全体が、一つのタイムマシンなんだね。」
「そう。正式名称は、フォルクスワーゲンビートル。ドイツ製の自動車よ。それを未来のアナタが、タイムマシンとして改造したの。」
「そうなんだ……このボクがねえ。」
「王妃にあまり詳しく説明すると、後々面倒な事になりそうだったから、ただ"クルマ"とだけ、言っておいたの。」
「……そうだね。それがイイのかもしれないね……えっ、ちょっと待って。」
「何、どうかしたの?」
「今、確か、2003年て……今ボクは18歳だよ。もしもソレが本当なら、そのころボクは、310歳を越えている事になるよ?」
「ええ、その通りよ。未来のある時点で、アナタは、とある手段によって、不老不死のカラダを手に入れるのよ。だから、大丈夫なの。」
「へえ、そうなんだ……って、不老不死!?」
「そうよ。因みに私もそうなの……アナタのせいで、不老不死。永遠の23歳なのよ。」
「……???」
彼にとっては、あまりにも衝撃的な事実の、オンパレードだった。
「でも、アナタは気にしなくてイイのよ。最終的には、私自身が選んだ人生なんだから。」
「……はあ。」
彼にしてみれば、(まったく、そんな事、急に言われても……。)である。
その後、アルコールから覚めた京子は、一旦、2003年の世界に帰って行った。
伯爵とは、翌日の午後10時に会う約束をして行ったのだ。
伯爵自身も、翌日に備えて、身支度を整えておく事にした。
それに、今日のうちにまた、使用人たちに、自分が外出する旨を、伝えておかなければならない。彼等に、要らぬ心配をかけないためだ。まあ、最近は彼等も、伯爵の外泊癖に慣れて来たようだったが……。
そして翌日の午後10時。
彼のポータブルタイムマシンである、小型トランクを、左手に下げたサン・ジェルマンは、屋敷近くの森の中で、黄色いビートルに乗って来た京子と、落ち合ったのである。




