④ タネ明かし
「今日は、ご挨拶だけのつもりでしたので、コレでお暇致します。明日また、改めて訪問しても、よろしいでしょうか?」
伯爵は、出来るだけ丁寧に問いかけた。
「いいわよ。私も今日は、この後忙しいから……じゃあ、明日の、この場所、この時間で如何かしら?」
「有難き幸せに存じます。是非、そうさせて頂きます……それでは、コレにて失礼致します。」
サン・ジェルマンはそう言うと、小型スーツケースを開き、帰還のために、リセットボタンを押した。
すると、彼の姿は一瞬で、マリー・アントワネットの目の前から、消えてしまったのである。
「……どうやら、ホンモノのようね。これから楽しくなりそうだわ。」
一人で呟く彼女だけが、その場に残されていたのだった。
さて、こちらは、自室に戻って来たサン・ジェルマン。少し間を置いて、京子もその場に現れた。
「……タネ明かしが、必要よね?」と彼女。
「是非、お願いします。」と伯爵。
「まず私は、ずっとアナタの隣に居ました。」
「いや、全く姿が見えませんでしたけど……?」
「光学迷彩を使っていたのです。このリングでね。」
そう言いながら、彼女は左腕の黒い腕輪を、伯爵に見せた。
「光学……?」
「まあ、簡単に言うと、科学的に透明人間になれる装置なのよ。」
「ああ、僕も理論的には、考案中だけど……。」
「何言ってんの?コレ、アナタが作ったのよ……って、未来のアナタか。」
「やっぱり、それ、ボクの作品なんですね。」
「そうよ。だから胸を張ってイイのよ。」
「うん、そうだね。」
「因みに、私が乗って行った黄色いビートルも、光学迷彩の透明モードを使って、見えなくしておいたのよ。」
「へえ〜。」
「雪を降らせたのは、私自身のチカラ。私は雪女の末裔なのよ。だから雪と氷は、自由自在に扱えるの。空気中に、少しでも湿気が有ればね。」
「そうだったんだ……いや、何気に、ソレが一番不思議なんだけど!」
「……あら、そう?」
「だってそんなの、自然の摂理に合わないと言うか、エントロピーに反すると言うか……いや、違うな。何だろう?」
伯爵は混乱していた。
「まあ、ともあれ、あのオンナは、どうかしてるわね。」
「……えっ?」
「だって、降って来た雪を見て、笑い飛ばしたでしょ?」
「ああ、確かに。」
「普通は、もっとパニックになったりするモノよ。だって真夏なのよ?余程キモが座っているか、頭のネジが一本取れているか……。」
「……或いは、かなりの大物か、ってところですかね?」




