㉔ クリスマスの朝
翌朝。京子は、自分がサン・ジェルマンのベッドに寝ていた事に、気がついた。
思わずガバッと身を起こすと、伯爵は暖炉の前の安楽椅子で寝ていた。
彼女は慌てて、簡単に身だしなみを整えると、とある物品を白い袋から出し、優しく彼を起こした。
「あのう、伯爵?」
「う〜ん……あ、京子さん、起きましたか。ご一緒に美味しい朝食でも、如何ですか?ウチのシェフの腕前は、最高なんですよ」
「ああ、すいません。早々にお暇しますので……昨晩の私、きっとご迷惑をおかけしましたよね?」
「なあに、大した事は有りませんよ。何か未来のボクが、大切な京子さんを、ないがしろにしたみたいで……」
「……それで、こんなところまで来て、優しいアナタに、当たり散らしたのね?ホントにごめんなさい」
彼女はそう言うと、立ったまま、殆ど120度くらい、ペコリと頭を下げた。
「ねえ、未来のボクと京子さんの関係って……?」
「……自分の未来について、多くを知る事は、とても危険な事なのよ。だから知らない方が、身のためよ」
「そう……なんだね?」
「ソレより、アナタに、ちょっとしたプレゼントが有るのよ。はい、コレ」
彼女はそう言うと、白い袋に入れていたモノを、伯爵に差し出した。
ソレは一見、なんの変哲もない、真っ白なタオルの束だった。バスタオル、フェイスタオル、それにタオル地のハンカチまで。
「京子さん、コレは?」
「私からの、ちょっとしたクリスマスプレゼントよ。と言っても、アナタは大金持ちだから、何でも持っているでしょ?だから選ぶのに苦労したのよ。でも
それは多分、私の世界に来なければ手に入らない、"今治のタオル"よ。こう見えても、なかなかの高級品なんだよ」
彼女はそう言うと、ちょっとドヤ顔をした。
「それは……ありがとう」
サン・ジェルマンは、何だか少しだけ、胸騒ぎがした。
「それぞれ7セットずつ有るから、一週間使い放題……あー、でも、もし追加で欲しくなったら、160年後の、愛媛県今治市辺りに行ってみて。多分そこで、製造が始まっているから……」
「……そうなんだ」
「それに、そのハンカチには、ちょっとした細工がしてあって……とてもいい匂いがするのよ」
「へえ、どれどれ、クンクン」
「ああーっ!ちょっと待って、まだ……って、もう遅いか。」
さっき目を覚ましたばかりの25歳の伯爵が、何故かまたクタッとして、安楽椅子に座ったまま、眠ってしまったのだった。




