㉓ クリスマス・イブ
「何故そんな色の服を……?」
まだ訳が分からないサン・ジェルマン。
「ああ、そうか。まだこの時代のサンタクロースは、服の色が確定していないのねえ。確か1931年の、コカ・コーラ社のCM効果が、大きかったんだっけ?」
少し残念そうな京子。(所説有り)
「あれっ?京子さん。さては呑んで来ましたね?」
「何よ。悪い?アナタだって呑んでるじゃない!」
そう言いながら、ふらついてその場にペタンと座り込む京子。
せっかく持ってきた白い袋も、放り出してしまった。
頬が赤く見えるのは、暖炉の炎の照り返しのせいばかりではあるまい。
「どうしたんですか?そんなに吞んじゃって……」
ちょっと心配になる伯爵。
「……アナタのせいよ」
やおら彼を睨みつける京子。
「えっ?」
「2006年のアナタが研究に没頭して、クリスマス・イブの夜に、このアタシを、放ったらかしにするからでしょ!」
「そりゃあ、どうも申し訳ない事を……」
思わず謝りかけて、ふと疑問に思うサン・ジェルマン。
(まてよ。未来のボクと京子さんの関係って……?)
「あー、なんかこの部屋暑いわあ。窓開けるわね」
京子はそう言いながら、本当に窓を開けてしまった。
幸いここはスペイン南部。真冬の夜だが風も無く、冷気は穏やかだ。
「何よ。ムード無いわねえ……エイ!」
彼女がそう言って、夜空に向かって両腕を振り上げると、粉雪が降り始めた。そして雪は見る見る積もり、辺り一面、雪原となった。
「これでよし!ホワイトクリスマスの出来上がりね」
彼女は満足そうに呟くと、満面の笑顔で、伯爵の方に振り返った。
そして、ワイングラスを片手に、安楽椅子に座って居る伯爵のところまで、ツカツカと歩いて来ると、後ろから彼に抱き着いた。
「ああ、私のサン・ジェルマン、大好きよ」
「京子さん、ちょっと呑みすぎなのでは?」
「何よ!290年後の、自分の責任を取りなさいよ!」
「ああ、その事なんですけど、290年後、ボクと京子さんの関係って、一体どういう……?」
「関係?カンケイって、そりゃあ、アタシとアナタは、オトナの……」
京子はそこまで言って黙ってしまった。
伯爵が振り返ると、彼女は椅子の後ろに座り込んで、眠っていた。
(酔い潰れちゃったんだ)
彼は仕方なく、ワイングラスを傍らのテーブルに置き、彼女をお姫様抱っこすると、自分のベッドに連れて行った。




