㉒ 反省会
やがてサン・ジェルマンは、彼の屋敷の自室に戻って来た。
少し遅れて、そこに京子も現れた。
「……あっ、でも、急に留置場から消えてしまって、大丈夫だったのかな?」
今さらながらに、そんな心配をする伯爵。
「大丈夫よ。彼ら夜警のプライドに賭けて、逃げられましたなんて、口が裂けても言わないわ。史実では、証拠不十分で釈放した事になっているわよ」
彼を安心させるように、京子がそう言った。
「それにしても……まさかスパイ容疑で捕まるなんて。フランス語訛りにならないように、気をつけていたんだけどなあ」
「……ごめんなさいね。」
「……えっ?なんで京子さんが謝るの?」
「私、アナタがそうなる事を知っていて、ロンドンに行かせたの」
「どういう事?」
「つまり、全ては確定した史実なのよ。でも、最初は楽しかったでしょ?」
「それは……まあ。そうか、だから最初、あんなに暗い顔をしていたんだね?」
「そういう事。でもまあ、アナタの音楽好きは知っていたし、無理に引き留めると、歴史が狂って、アナタがアナタじゃなくなる可能性もあったから」
「……じゃあ、仕方が無いね」
「この後は……どうするつもりなの?」
「その様子だと、どうせ知っているのでは?」
「1746年から1757年のアナタの活動の記録は、些かあやふやなのよ。だから出かける時には、その腕のリングを着けておいてね?」
「まるで、猫の首輪の鈴みたいだね?」
「そうよ。私の可愛い子猫ちゃん!」
「そりゃあ、笑えないなあ」
「じゃあ、今日はコレで。ちゃんと食べて、良く眠るのよ?」
「まるで、お母さんみたいだ」
「違うわ。私はアナタの……」
そう言いながら、京子は伯爵の目の前から消えてしまったのだった。
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それからしばらくたった、1716年のクリスマス・イブ。
25歳になったサン・ジェルマンは、久しぶりに自宅で寛いでいた。
そこへ突然、また京子が現れたのだ。
「は~い、お久しぶり。元気にしてた?」
何故か、テンション高めな彼女。
「ああ、京子さん。その節はどうも」
「やあねえ。そんな事務的な挨拶なんかしないでよ」
「それより、どうしたんですか。その格好は……?」
「ああ、コレ?だって今日は、クリスマス・イブでしょう?」
彼女は、いつもの黄色いワンピースではなく、赤い服の上下を着用し、赤い帽子まで被っていた。そして、何だか大きな白い袋を担いでいたのである。




