㉑ 逮捕監禁
1688年の名誉革命によって、カトリックのイギリス国王ジェームズ2世が王位を追われ、フランスへ亡命した。これに対し、「やはり正統な血統であるジェームズ2世(およびその子孫)こそが真の国王だ!」と主張し、彼らの王位奪還を支援した勢力の事を、ジャコバイトという。
サン・ジェルマンが巻き込まれたのは、ジェームズ2世の孫である、チャールズ・エドワード・ステュアートが引き起こした、1745年の蜂起だった。
フランスの支援を受けたチャールズは、イギリス北部の、スコットランドを味方につけて挙兵した。彼らの軍勢は非常に強く、スコットランドのエディンバラを占領し、さらに南下して、イングランドの首都ロンドンまで、あと一歩のところまで攻め込んだ。
当時のロンドン政府は恐怖に陥り、街中が「フランスの支援を受けたスパイが潜んでいるのではないか」「裏切り者がいるのではないか」という、極度の猜疑心に包まれた。
つまり、彼がパトロール中の夜警に逮捕された1745年12月こそ、まさに、政府が厳戒態勢を敷いていた時期だったのだ。結果的にチャールズの蜂起は、1746年の"カロデンの戦い"で政府軍に惨敗し、ジャコバイト運動は事実上壊滅した。サン・ジェルマン伯爵は、まさにこの、イギリス史上最大級の政変の、"とばっちり"を受けたと言えるだろう。
さて、留置場のサン・ジェルマンは、少々弱っていた。何しろ唯一の所持品で、頼みの綱の小型トランク……つまり、ポータブルタイムマシンを、没収されてしまったのである。アレが無くては、ここから脱出する事が出来ない。幸いカギは掛けてあるから、そう簡単に中身を見られる心配は無いが、さてどうしたものか?
そんな悩める彼の目の前に、突然、京子が現れた。
「……私の助けが必要かしら?」
伯爵にとって、ニッコリ笑う彼女の姿は、正に地獄に仏のように思えた。
「京子さん、よく来てくれました!でも、どうやって……?」
「私が、以前アナタに渡したその腕輪、発信機なのよ。だからアナタの座標が、すぐに分かったの……はい、コレ。」
彼女はそう言うと、先程夜警に奪われたばかりの小型トランクを、彼に渡した。
「ありがとう。コレさえ有れば……。」
サンジェルマンは早速、そのフタを開き、中の装置のリセットボタンを押した。彼の姿が消えるのを確認すると、続いて京子も、そこから姿を消した。




