⑤襲撃
【録音データ:兄貴_恋愛証言_2】
妹「では質問です! 初めて手を繋いだ瞬間を、できれば効果音付きで再現してください!どうぞ!」
俺「…………!!?」
彼女「え、効果音って、どうやって……?」
妹はICレコーダーとは別に、スマホの効果音アプリを起動した。「大丈夫、準備してある。 キュン♡ とか ドクン…… とか、敵襲! とか、色々入ってるから!」
「敵襲!は使わねえよ!!!」
そう叫んだ瞬間だった。
――ピ――――……ッ……
ICレコーダーから、ノイズが漏れた。
妹「?ちょっと、何これ。 アプリじゃないよ? 変な音混じって――」
俺は、その音を知っている。耳の奥が一瞬で冷たくなる。
――ショッカーの通信暗号音だ。
「おい、録音止めろ」「え? なんで? これからクライマックスで――」
バチッ!!!
レコーダーがスパークし、煙を噴いた。
妹「ひゃああああ!? なにこれ!? 壊れ――」俺は反射的に、妹とレジ台を腕で押し倒し、伏せさせた。
次の瞬間。
―――花屋のガラス窓が、スッ……と黒い影で暗くなった。
彼女はすでに動いていた。――花束のバケツに手を突っ込み、鋏ではなく、かつての専用武器のグリップを握っている。
妹「ちょ……え、え、何その……それ、ハサミじゃな……」彼女は振り返らず、小さく呟いた。
「……来た。 追跡個体、5体。全員、現役戦闘型」
その声音は、花屋の店員ではなく、“かつてのコードネーム《蜂女》”の声だった。
妹「……………………えっ?」
俺は深く息を吐いた。
「妹。――悪い、今から恋バナモードを終了する。」
ショッカー残党の影が、ガラスをゆっくり割りながら侵入してくる。
少女のような声で機械音声が響く。
『裏切り対象確認。 元コードネーム《蜂女》、および脱走対象A。 確保を開始する』
花屋の穏やかなBGMが、バキンッ! ……とスピーカーごと破壊されて止まった。
妹の手元には、まだハート形の風船が一つ。
彼女はすっとそれをつまみ、スッと構える。
「兄さん。……まだ、風船、残ってるよ?」
風船が、パァンッ! と破裂する音を合図に、――花屋は一瞬で戦場へと変貌した。




