表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
3/12

③逃亡

彼女は剣先を下ろさないまま、わずかに唇を震わせた。


「壊れる……?私が?」

「違う、そうじゃない」私は一歩、彼女へ近づいた。

「お前の心だ。

ここに居続けたら、戦って、命令されて、誰かを憎むふりをし続けて……その心が、いつか本当に壊れる」


沈黙。

廃工場の天井から、ポタリと水滴が落ちる音だけが響く。


彼女は剣を構えたまま、しかしその瞳は揺れていた。

「……そんなこと、知られても、困るのよ」

強がるように笑ったその顔が、ひどく痛々しかった。


「命じられた相手を倒して、勝てば称賛される。

でも、夜になると、胸が苦しくなる。

戦っても、倒しても、私の中の『空っぽ』は埋まらないの」

その言葉は、剣先よりも重かった。


——この女は、戦うために生きてるんじゃない。

——生きるために、戦わされているだけだ。


私は思わず、手を伸ばした。

「一緒に……逃げるか?」


彼女の瞳が大きく見開かれる。

驚きと、戸惑いと——ほんの少しの希望。

そのすべてが揺らぐように、瞬きの中で混ざり合った。


しかし——。


ズドォォンッ!!


廃工場の鉄扉が爆音とともに吹き飛んだ。

黒い装甲スーツのショッカー戦闘員たちが雪崩れ込んでくる。


「裏切り者——処分対象を確認」

冷酷な機械音声が響く。その銃口が、彼女と、私に向けられた。


彼女は一瞬、迷ったように拳を握りしめた。そして——。


「あなた、本当に……本気で言ったの?」

「言った。もう一回言う。俺と——逃げろ!」


次の瞬間、彼女は振り返りざま、仲間だった戦闘員の銃を叩き落とした。

「裏切り者確認、裏切り者確認!」警報が鳴り響く。


そして——彼女は叫んだ。


「走れ!ここで捕まったら、本当に終わる!」


俺たちの逃避行は、あの錆びた廃工場から始まった。

そして今——花屋の開店準備をする俺の隣で、妹が言う。


「ねぇ〜、いつまで誤魔化すつもり?ねぇってば、どうやって出会ったの?」


……言えるか、こんな話。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ