②出会い
あの日、風は鉄錆びの匂いを運んでいた。
廃工場の外壁には、もう役目を終えた機械の亡霊のようにツタが絡みつき、窓ガラスはところどころ砕け散っていた。
私達は潜入部隊。
目的は「悪の秘密組織ショッカー」の新型兵器の情報奪取。
しかし——そこで出会うとは、思ってもみなかった。
内部は薄暗く、剥き出しの配管からは蒸気が漏れ、金属のこすれるような音がどこからか響いていた。
私は息を潜め、壁際を進んでいく。
——その時だった。
「そこから一歩でも動いたら、突き刺すわよ」
背後から、冷たく研ぎ澄まされた声。
振り返ると、月明かりが割れた天井から差し込み、彼女のシルエットを浮かび上がらせていた。
黒い戦闘スーツ、迷いのない構え。ただ、その瞳だけが、どこか悲しげだった。
「……刺さないのか?」
私が言うと、彼女はわずかに眉を動かした。
「あなたたちはただの侵入者。でも——あなたからはあの男たちと同じ臭いがしない」
そう言いながらも、剣先は微動だにしない。
私はゆっくりと両手を上げ、武器を床に落とした。金属音が響く。
その一瞬。
彼女の視線が、ほんのわずかに揺らいだ。
——この人は、本気で誰かを憎んでいる目じゃない。
そう気づいた時にはもう、私は言葉を口にしていた。
「お前……ここに居たら、壊れるぞ」
その言葉に、彼女の瞳が初めて大きく揺らぐ。
ほんの一瞬。
そこから、すべてが始まった。




