表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
9/16

02


「おいおい、まじですげぇ量だなぁ!これ全部種取りすんのかよ!?」


ノクトラスが悲鳴にも近い嘆きをあげる。

わかるわぁ、私もうへぇ、って感じ。


あの後、屋敷にはまさしく山のようなさくらんぼが届いた。

とりあえず3分の2くらいは涼しい地下の食料庫において、使用人たちはキッチンに集まったわ。


「もう業者っすね~。つまみ食いし放題っす!」


「本当にすごい数。終わるのかしら」

ライガくんとリリーも作業を手伝ってくれる。


「おばあでも役立つんかいねぇ」

この人はテールワーツさん。リリーいわく、ベテラン凄腕メイドさんらしいわ。


「1日では終わらなそうですねぇ」

こちらはハインドルさん。親の代から勤務しているという、こちらもベテランさん。


「みなさん、お集まりいただきありがとうございます。コツを教えまーす。この木の棒をさくらんぼの中心に刺して、種を押し出すと簡単にはずせます!」


私は用意しておいた、そこらへんの木の枝を削ったいい感じの棒を人数分配った。

これで作業自体はらくちんよ。数が膨大なことを除けばね!


私たちはテーブルを囲んで、みんなで種を取っていく。


「ディノアマト様の無茶ぶりにも困ったもんだよなぁ。ご自分が何でもできるからって、他人にも期待しすぎだぜ」


「ディノアマト様のことを悪く言わないで!農園のためなんて、すばらしいお考えじゃない!」


すばらしいけど大変は大変なのよ、リリー。


「お前、ディノアマト様とはどうなんだよ?何か進展したのか?」


「……べつにいつも通りだけど。変化とかないわ」


「おいおい、せっかく若えんだからなんかねぇのかよ!まぁ、『いっそ寝室にでも乗りこめ!』……って普通なら言うとこなんだけどなぁ、あの人じゃなあ」


「お掃除で入るけど、ディノアマト様の寝室、奥様の肖像画だらけなのよ。とてもそんな空気にならないわ」


リリーは少し悔しそう。


「あの人、ハニートラップとかもかかんなそうだよな」


たしかに、女性より本物の蜂蜜ハニーでもあげたほうがよっぽど喜びそう。


「やっぱり奥様なんだなぁ。あーあ。鉄壁だなぁおい。つまらーん」


「奥様と死別されてけっこう経ってるっすからね。そろそろ再婚も勧められてるんじゃないっすか?」


「……!!」

再婚、という言葉にリリーは動揺してるわ。


「死別なのね。知らなかった」


「ご病気だったらしいっす。屋敷に来る前の話だからよく知らないっすけど」


そうしてみんなで話しながら作業していた時、キッチンの扉が開いたわ。

目を向けると、そこにいたのはディノアマト様。


「〜〜〜〜!!!」

いち早く気がついたリリーが言葉をなくす。


「ディノアマト様!いかがされたのですか?」


「いや、お前たちだけに任せるのはしのびないのでな。私も手伝おう。……さすがにすごい数だな」


ディノアマト様、まだ地下にも置いてあるのですよ。


「お仕事はよろしいので?」

ノクトラスが聞いたわ。


「ああ、1、2時間くらい構わん。いい息抜きになる」


「ありがとうございます。それでは、こちらの棒でさくらんぼの底から押していただくと、種が取れますので」


「うむ。こうか?」


ディノアマト様が持ったさくらんぼに、棒を押し当てる。

力を入れすぎたのか、さくらんぼがぐしゃりと潰れて、ディノアマト様の手が赤く染まる。


「…………」


正直、予想はつきました。

ディノアマト様の手の大きさに対して、さくらんぼが小さすぎるのですもの。


ディノアマト様が種を取ろうとするたび、潰れてディノアマト様の手が赤く染まる。その姿はなんというか、似合いすぎているわ。3人始末してきました、という風貌。


「大丈夫です、ディノアマト様!最後にはジャムになるので、つぶれても食べられますわ!」


「むう……。そうか……」


ディノアマト様が作業している間、リリーはひたすらディノアマト様をぼーっと見つめ、手が止まっているわ。


それに気がついたノクトラスとライガくんが、ゲシゲシと肘でリリーをつついている。『手を止めるな』『種取りしろ』と暗に示しているのね。 


「ところでディノアマト様、再婚は考えられていないので?」


ノクトラスがちょうど話題になっていた質問をつっこんできたわ。

リリーが怖い顔でにらんでいる。『余計なことを聞くな』って感じね。


「ふむ......。まあ仕事が忙しいのでな。そんな暇はなかろう」


「えー、そうですかね?旦那は男前だしお若いのにもったいないですね~」


「お前こそどうなのだ?奥方とは仲良くやっているのか」


「ぼちぼちですね。ずーっと尻にしかれてますわ」


その後はノクトラスの近況の話に変わって、作業をし続けたわ。うまく話を逸らされたわね。

こうやって手間取りながら、どうにか種取りを終えたの。あくまで今日の分ね。まだまだ残りのさくらんぼがあるわ。


そしてここからが私の仕事。とりあえず今日の分のジャム作りと、おやつ作りにとりかかる。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ