第9話 返答
どうしようか。
少し考えたが、良さそうな返答が思い浮かばない。
それでも神の勇者と認めるわけにはいかないだろう。
ということで、ごくごく最小限の返答にする。
「ああ。ただ特殊な魔法だから、他には口外しないでくれ」
さて、これで納得してくれるだろうか。
「わかりました。それではもうひとつ質問です。今の魔法で、この場にはいない第三者の魔法音声によって、『神の御力』という言葉を含む内容が流れました。今の魔法がフォルティのものなら、フォルティはテオトゥラ正教会の関係者なのでしょうか。また先程の声がどのような存在のものかも、お聞きしていいでしょうか」
この質問のうち、片方は問題なく返答できる。
「違う」
あと、確かテオトゥラ正教会は、庶民には好かれていなかったよな。
そう『パルティカ』の設定を思い出して、付け加えておく。
「全く関係はないし、何ならテオトゥラ正教会の存在を嫌ってもいる。更にいうと、先程の言葉に出てきた神は、あの教会が言うところのテオトゥラではない。とりあえず今言えるのは、そんなところだ」
こんな感じだろうか。
もう一つの答えにくい質問については、こうごまかさせてもらおう。
「あと先程の声は、気にする必要はない。ただテオトゥラという神でないことは確かだ」
ごまかしというより、事実だな。
説明しつつそう思う。
あとは話題を変えるため、こういう提案もしておこう。
「さて、この後どうしたいか、考えて教えてくれ。俺は空間属性の魔法使いだから、トラルテスコや近場の街、村に連れて行くくらいは可能だ」
「わかりました。それではトラルテスコの、ドラヴィダ街3番付近に行きたいのですが、いいでしょうか。私の記憶は店が襲撃されたところまでで、その後店や家がどうなっているかがわかりません。ですので一度、確認したいのです」
なるほど、もっともだ。
ただしドラヴィダ街3番という場所が、俺にはわからない。
現実の街なら住所があるのは当然だし、攻略サイトにもそういった住所の記載はあっただろう。
ただそこまで覚えていないのだ。
「トラルテスコの街はあまり詳しくないから、住所で言われるとわからない。有名な場所や通りの名前を使って説明してくれると助かる」
「わかりました。テオトゥラ正教会の、マルド中央教会はわかりますでしょうか」
俺が召喚された場所だ。
嫌な予感がしたけれど、知ってはいるので一応は頷いて返答する。
「ああ」
「その南に1ブロックいったところに、市場通りがあります。その東端にある、共同市場の近くです」
その説明で、場所はだいたいわかった。
だから俺は遠見魔法で確認する。
ここは3km近い転移を2回使用した場所だから、俺の当初の能力ではトラルテスコの街までは見えない。
しかし予想通り、街の中、あの教会の尖塔まで遠見魔法でしっかり確認出来た。
セヌテラを無力化したことにより経験値が得られ、レベルが上がったのだろう。
こういったシステムというか世界構造は、ゲーム的だと感じる。
ステータスを閲覧する方法があったなら、どれだけレベルが上がったのかわかるのだけれど。
さて、それではということで、遠見魔法の視点を移動させて……
そして俺は、理解した。
先程の審査魔法で『2人とも現時点で身寄りはありません』と出た理由を。
しかしここでごまかしても、後が面倒になる。
現状を把握することは、きっと必要だろう。
ただ一応、覚悟だけはしてもらった方がいい。
襲撃で全滅並みに酷い状況だから。
「場所は把握した。現場に近い場所に移動しよう。ただその前に、2人とも約束してくれ。何がどうなっていても、とりあえず現場では取り乱さないと。考える時間と場所は、後で作る」
「わかりました」
クリスティナはそう返答し、シャルロットも頷いた。
なら仕方ないというか……
必要だから仕方ないな、これは。
仕方ない以外の言葉が思い浮かばない。
「それでは、近くの人がいない場所に移動する」
サタナテスの方は気にしなくていいだろう。
セヌテラ自身が様子を見に来たということは、それなりの実力を持った魔法使いが、他に近くにいなかったということだろうから。
俺は遠見魔法で付近の状況を確認。
誰もいない裏路地を到着場所に設定して、転移魔法を発動する。




