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審判魔法は偽らない  作者: 於田縫紀
第1章 襲撃の後始末

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第7話 まずは片方から

 出たのは街道の横にある、小さな川のそこそこ広い河原。

 出てすぐに思ったのは、誰もいなくて良かったということだ。

 理由は俺の目の前にあるテーブル。

 2人を転移させるつもりで、2人を載せたテーブルまで転移させてしまった。


 河原にいかにも室内用という感じの、そこそこ豪華で大きいテーブルがでんと置かれている。

 その上に女子2人が横倒しで載っている状態。

 なかなかシュールな景色だ。

 さっさと解消するとしよう。


 女子を手で抱えて誤解を招きたくはない。

 だから転移魔法を使用して、2人をテーブル上から河原に移動させる。

 更に上向きで寝かせた後、空になったでかくて豪華なテーブルを収納すれば、事前作業は終了だ。

 

 さて、それでは2人に事情を説明して、今後どうするかを話し合うべきだろう。

 時間停止魔法は空属性だから、俺が解除可能だ。

 しかし2人同時に解除して2人ともパニックを起こした場合、収拾できる自信はない。

 片方を起こして、事情を納得して貰ってから、もう片方を起こす方がいい気がする。


 あとは時間停止を解除する前に、少し離れておこう。

 どういうタイミングで時間停止魔法をかけられたか、わからないから。

 もし襲撃直後に時間停止を受けたのなら、意識を取り戻した瞬間、抵抗というか攻撃される可能性がある。


 用心しすぎかもしれないが、念の為というところだ。

 何せ今までの俺の人生は、理不尽が多かったから。

 大学合格でこれから自由で陽キャな人生を送ろうという時に、この世界に召喚されたのなんて、まさに理不尽。

 そもそも家庭環境が理不尽だったし、おかげで小中学校も……


 いや、今は過去のことでダークになるべき時ではない。

 とりあえず今のこの2名を、適切に処理するのが優先事項だ。

 ということで、まずは年長の方に対して、時間停止魔法を解除。


「う、うーん……」


 いきなり動いたので、とっさに2歩下がってしまったところで。


「あれ、ここは……」


 目を覚ました。

 左右を見て状況を確認しようとしている様だ。

 いきなり攻撃とか口撃とかという様子ではない。


 さっさと説明して、誤解がない様にしておこう。

 魔力をそれなりに感じるから、戦闘になって欲しくないし。


 ただ、何をどう話せばいいのかわからない。

 何せ俺は元ぼっち、対人技能は限りなく低いのだ。

 何か例文はないだろうか。


 そう思ったところで、ここがゲームの『パルティカ』に酷似した世界であることを思い出した。

 なら俺が話しているのではなく、ゲームのキャラクターが話していると考えてみよう。


 ゲームキャラなら、ここはどう説明するだろうか。

 どんな口調で、どんな言葉で。

 

『パルティカ』の攻略サイトは、思い切り読みまくった。

 だから言うべきことを確認して、NPCの会話とかを思い浮かべてみる。


 言葉と口調が、案外簡単に思い浮かんだ。

 間違えないようちょっとだけ頭の中で繰り返して確認した後、俺は思い浮かんだ口調で、言葉を口に出す。


「ここはトラルテスコの東、3離(3km)ほどの場所だ。トラルテスコのメイヨー街にあるサタナテスの支部を襲撃した際、時間停止状態で捕らえられていた。あの場は危険だったので、ここまで連れてきて魔法を解除した」


 彼女は周囲を見回す。

 もう1人、年少の少女が倒れているのに気づいた様だ。

 彼女はとっさに近寄ろうとする。


 ここは説明の追加をしておいた方がいい。

 ということで、俺はやっぱりゲームキャラ的なイメージで、話すべき説明を口にする。


「まだ時間停止魔法を解除していないから、動かさない方がいい。とりあえず1人ずつ説明しようと思って、先に魔法を解除した」


「……わかりました」


 彼女はそう言って、もう一人から手を離した。

 いきなり俺を攻撃するような様子は無さそうだ。

 ならということで、このまま話を進めることにする。


 ただ問題は、どう話を進めるかだ。

 当たり前だがこういった事態、経験なんてしたことがない。


 どうしようかと考えて、ある程度正直に言うことにする。

 ただし俺自身の言葉ではなく、ゲームの登場人物をイメージして。

 そうしないと言葉が出てこないから。


「さて、俺としては2人をサタナテス支部で発見して連れてきただけだ。状況は全くわからない。だからこの後どうしたいか、2人に聞きたい。俺は空属性の魔法使い、トラルテスコや近場の街、村に連れて行くくらいは可能だ」


 俺はわからないから、そっちで答えを考えてくれ。

 そういう意味だ。


「なら申し訳ありませんが、こちらを……」


 彼女はそう言いかけて、そして言い直す。


「申し訳ありませんが、その前に質問をひとつしていいでしょうか?」


 何だろう。


「答えられることなら」


「ありがとうございます。それでは質問です。貴方はサタナテスを襲撃して私たちを発見したとおっしゃいました。犯罪組織であるサタナテスを襲撃するというのは、普通は依頼を受けた冒険者か、犯罪捜査の命を受けた衛士隊の仕事だと思います。貴方はそういった立場の方なのでしょうか」


 確かにそう聞きたくなるのはわかる。

 ただ国王に召喚された勇者で、その国王を殺して逃げてきたところだと答えるわけにはいかない。

 話が余計に面倒くさくなるのは目に見えている。


 ここはごまかすのが、きっと正解だ。

 ならこういう返答はどうだろう。


「俺も拉致されたような立場だと思ってくれ。逃げ出したのはいいが、金どころかまともな衣服すらなかった。なので単に金を持っていて倒しても一般市民に影響がなく、俺の力で何とかなるサタナテスの支部を襲っただけだ。ただ囚われている人間がいるのは予想外だった。だからもっと強力な奴らが来る前に、とりあえずここまで連れて逃げたところだ」


「サタナテス程度なら余裕で倒せる、強力な戦士または魔法使いと思っていいのでしょうか」


 いや、そう思われるほどの力はない。

 少しくらい自慢をしたいところだけれど、誤解されて面倒なことになっては困る。

 ここは正直に話しておこう。


「相手が魔法使いでなければ、数人程度までなら急襲して倒すことは可能だ。ただ相手が魔法使いの場合は、そこまでの自信はない。今回襲撃したのは、サタナテスのアジトといってもスラム街にある方だ。サタナテスの魔法使いや上級幹部がいる場所だったら、襲って勝てる自信はない」

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