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審判魔法は偽らない  作者: 於田縫紀
第1章 襲撃の後始末

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第5話 没収物?

 次の景色が見え始めたと同時に、魔法を発動する。


「審査魔法、対象は移動先の部屋にいる全員」


 ふっと力が抜ける感覚。

 これは魔力を消費したということだろうか。


 転移した部屋では、大テーブルを2人、2人、2人の6人で囲んでいる。

 中央が服と体格と腹回りが立派なハゲで、そのすぐ横にくっつく様に派手な女。

 両側の2人ずつ、あわせて4人はデブ痩せそれぞれいるが、どいつもいかにもチンピラ上がりという感じの男。


 魔法使いっぽい魔力は、6人とも感じない。

 ここの支部は思考力をあまり必要としない、暴力や威圧メインの業務ばかりやっているのだろう。

 少なくともゲームの方では、そういう設定だ。

 魔法使いとか参謀的なのとかは、もっと安全で豪華な場所、具体的には傀儡下にあるソール伯爵家の王都屋敷にいることになっている。


 でもまあ、わかりやすい粗暴犯ばかりの方が、俺としては判断しやすくていい。

 なお6人とも、動きは止まった状態だ。

 中では一番偉そうな、服だけ立派なデブのハゲから審査といこう。


『カルヴィト・カミナイ:サタナテス・トラルテスコ支部長。部下を含め自らの手で殺害した者29人。殺害命令を下して殺した者50人以上。その他、誘拐、暴行、恐喝等の犯罪歴多数』


 次はその横の派手な女。


『マルスナ・パペティ:サタナテス・トラルテスコ支部のナンバー2:殺人7件、暴行22件、恐喝17件、その他多数』


 以降はこんな感じだ。


『スツルタ・マメット:サタナテス・トラルテスコ支部のナンバー3:殺人23件、暴行59件、恐喝3件、その他多数』

 

『バスツーム・ドロワズ:サタナテス・トラルテスコ支部のナンバー4:殺人16件、暴行71件、恐喝42件、その他多数』

 

『ガバ・ナイノーミス:サタナテス・トラルテスコ支部のナンバー5:殺人2件、暴行89件、恐喝71件、その他多数』


『ザッコ・ジイマ:サタナテス・トラルテスコ支部のナンバー6:殺人9件、暴行2件、恐喝1件、その他多数』


 なお実際の犯歴については、こういった言葉以上に具体的内容で、記憶というか情報という形で俺に伝わっている。

 酷いというか惨いというか、おまえら人間かというような……


 おかげで処分しても心が痛まない。

 遠慮する必要もなさそうだ。


 ということで、判決魔法を発動。

 国王の時と同様に脳裏に浮かんだ選択肢から1つを選ぶ。

 例の声が周囲に響き渡った。


「被告はカルヴィト・カミナイ以下、この部屋にいるサタナテス・トラルテスコ支部の6名。全員、所持品および所持金を没収の上、今までの犯罪で相手に与えた苦痛を意識下において追体験した後、死刑とする」

 

 客観的に見ると、この場に限っては俺の方が強盗殺人犯だろう。

 しかし先程の情報を見た俺の心は、全く痛まない。

 なので苦しみ始めた奴らを、ざまあ見ろと思いつつ見ていたところで……


『没収した所持品および所持金を提示します』


 悶え苦しんでいる連中がささっと部屋の端に片付けられ、代わりにテーブル上に、物とか通貨とかが、あれこれ出現した。


『現金が正金貨27枚(1,350万円)、小金貨55枚(550万円)……』


 一人で使うには多すぎるな。

 そう小市民的な感想が出たところで、判決魔法の追加選択肢が脳裏に浮かんだ。


『没収した所持品および所持金で、正当な理由に基づかない形で入手された、いわゆる犯罪被害品について、返還可能な被害者がいるものは返還しますか? [返還する/返還しない]』


 絶対に俺の取り分が減る。

 下手すれば、今回の収益の大半が吹っ飛んでしまうかもしれない。

 それはわかっている。


 しかしここで『返還しない』を選択すると、絶対に何かありそうな気がする。

 何か落とし穴が待っている気がするのだ。


 ゲームの方の『パルティカ』は、こういった部分の選択肢で、更なるサブシナリオが展開するなんてのが結構ある。

 一般的な善ならそういったシナリオに、悪を選べばそういったシナリオに。


 ならここは、無難な選択肢を選んでおくべきだろう。

 別に俺は善人ではない。

 用心深いだけだ。

 そう自問自答しつつ、『返還する』を選択。


『返還可能なものは、返還します。なお術者の特定が不可能な範囲で返還の理由と状況を伝達します』


 予想通り、目の前にあった金貨や銀貨がごっそりと減る。

 それでもそこそこ程度、当分は困らない程度に残っていたのは、被害者死亡等で返還出来ない分だろうか。

 とりあえず通貨や衣服、武器、防具、その他道具類など、出ている物を全て魔法収納する。


 これで終わり、移動しよう。

 そう思ったら、今度は書類っぽいものがどさっとテーブル上に出現。

 そして再び、選択肢が浮かぶ。


『借金の証文や手形や権利書等の書類です。これらの書類について、どのように処理しますか? [相手方に返還する/相手方に返還しない/返還する相手の条件を指定する]

 また返還しない、あるいは返還出来なかった書類はどうしますか? [魔法収納に保存する/燃やして抹消する]』


 また面倒な選択肢だ。

 残すというのは、きっと、大貴族だの大商人だのが絡む証文等を残して置いて、取引だの糾弾だのに使うとかだろう。

 面倒事に巻き込まれるのはごめんだ。


 あ、でも待てよ、こういう意味かもしれない。

 ということで、『返還する相手の条件を指定する』と『残りは燃やして抹消する』を選択。


『返還しない(・・・)相手の条件は何でしょうか[一定以上の爵位(騎士侯、男爵、子爵、伯爵、辺境爵、侯爵、公爵、王族)/一定以上の財産(年収が正金貨200枚(一億円)以上、正金貨100枚(五千万円)以上、正金貨20枚(一千万円)以上]/書類の意味を理解できる・出来ない]』


 やはりあったか。

 ということで、『書類の意味を理解できない者には返還しない』を選択。

 更に出てきた選択肢で、『返還しなかった者には、書類が無効となった旨を、神からのお告げとして通知する』を選択。

 書類の厚さが半分になり、そして次の瞬間、炎をあげて燃えて灰になった。


 これで、これらの書類がこれ以上悪用される可能性は低いだろう。

 別に善意とか正義感とかで、手間をかけたわけではない。

 ゲームの『パルティカ』では、サブシナリオにおけるこういった細かい選択が、後に響いてくることが多々ある。

 だから念のためだ。


 さて、これで金と物と書類を片付けた。

 それでは残った金と物を回収してずらかろう。

 とりあえず残った服を適当に着てから、王都を出て近くの適当な町か村へ行って、冒険者登録をすればいいな。


 そう思ったところで、またもやテーブル上に何か出現。

 おい、ちょっと待て! これはありなのか!

 そう思ったところで、また選択肢が表示された。


『襲撃で捕らえて裏の奴隷市場へ売り払う予定だった女性2名です。捕らえた時点で時間停止魔法をかけられているので、怪我等はありません。

 なお2人とも現時点で身寄りはありません。どのように処理しますか? [奴隷として所有する/この場で解放する/その他]』


 そう、人間、それも日本なら高校生くらいに見える女子と、中学1年くらいに見える女子の2人だ。

 両方とも横に倒れた状態で、テーブル上に乗っかっている。

 時間停止魔法のおかげで、ぴくりとも動かない。

 それでも俺は魔力と体力が見えるから、間違いなく生きているし、生命に関わる怪我や病気はなさそうだともわかる。

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