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審判魔法は偽らない  作者: 於田縫紀
プロローグ 勇者召喚

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4/4

第4話 活路

 とりあえずここで、俺が出来ることをもう一度確認しておこう。

 まずは魔法から。


 勇者として使用できる審判魔法は、強力な魔法だ。

 しかし対象が俺の基準で悪人でなければ、処分することは出来ない。

 極悪人以外が相手の場合は、使いにくい魔法だ。


 そして異世界召喚の影響で使用できるらしい、空属性魔法。

 具体的には転移魔法と転送魔法、遠見魔法などを使用可能な模様。


 転移魔法は認識可能な場所に自分や自分を含む範囲を移動させる魔法だけれど、今の限界距離は3~4kmくらい。

 でも逃げるのには役立ちそうだ。

 

 転送魔法は自分ではなく他人や物を移動できる魔法で、最大距離は転移魔法と同程度。

 移動可能な重量は最大で540kg程度までだが、重ければ重いほど移動可能な距離は近くなる。


 遠見魔法は遠くを見る魔法で、これも転移真穂と同様、3~4km程度先まで。

 収納魔法は目か遠見魔法で見て認識できるものを、異空間に収納出来る魔法。

 取り出す際も目か遠見魔法で見て認識できる場所へ自由に出すことが可能で、収納容量は重さで54kg程度まで。

 他にも危険察知など、空間属性の魔法を幾つか使える様だ。


 あとは神が日常魔法程度と言っていたもので、灯りを灯す灯火魔法、温度を上げる加熱魔法、冷やす冷却魔法、水を出す出水魔法が使える。

 しかし現状では日常生活の範囲程度なので、発動が遅いし、威力もそこまで高くない。


 魔法以外では……

 遠見魔法の応用で、正面から俺を見てみる。


 見慣れた俺自身よりずっと若いというか幼い、小学6年生から中学1年くらいという体格の男子。

 服は白いシンプルな服の上下だけ。

 靴すらなく裸足状態だ。

 髪は濃い茶色で短髪、顔はやや幼いがイケメンといっていいだろう。


 明らかに元の俺と異なるが、それでも見覚えがある。

 俺が攻略ページを読んだ知識から作り上げた、『パルティカ』的に最強なプレイヤーキャラ、そのものだ。


 なら能力も、初期設定そのものと思っていいだろう。

 つまりそこいらの同年齢のガキよりは強いが、それ以上ではない位。


 あとは持ち物。

 今現在持っているのは、先程国王と大司教から奪った豪華な服や装備一式だけ。

 このうち武器として使えそうなのは、大司教が持っていた豪華な杖くらいだ。

 ということで魔法収納から出して、構えてみる。


 遠見で見える限界が5割くらい遠くになった。

 魔法の強化用としては使えそうだ。

 あまり頑丈そうではないので、打撃武器としては使わない方がいいけれど。


 さて、俺はこれからどうすればいいのだろうか。

 食っていくためには金がいるし、服だってもっとまともなのが欲しい。

 何せ衣食住、全てが心もとない状態だ。


 しかし解決する方法に、心当たりがない訳ではない。

 マルド王国、王都トラルテスコ、テオトゥラ正教会、マルド国王イングゼル六世。

 この固有名詞は前世で楽しもうとしたVRMMORPG『パルティカ』の初期設定と同じだ。


 あの神は言っていた。


「これはゲームではありません」

 

 しかしここまで設定が同じであるのなら、この世界は、VRMMORPG『パルティカ』に酷似した世界という可能性が高い。

『パルティカ』の世界そのものではないにしても。


 そして今の俺が直面したのは、『パルティカ』の歴史にある『マルド王国の勇者召喚事案』だろう。

 これは『パルティカ』のゲーム内においてで、図書館で関連書籍を読んだり冒険者ギルドで話を聞いたりすれば、わかる内容だ。


① マルド王国が神の勇者を召喚

② 勇者を旗印としたマルド軍がツォルテッィグ国へ侵攻。

③ テオトゥラ教を信奉するハボロネ聖公国、グワンダ王国、セロウェ王国、マルド王国の4カ国と、テオトゥラ教が大魔タオタロギを信奉しているとするカッタラサ国、ツォルティグ国の2カ国による戦乱が始まる


 なおゲームの方の『パルティカ』世界では、この後、

④ マルド国王の無理な作戦と命令で、勇者率いるマルド軍が全滅

⑤ マルド王国が滅亡

⑥ 更に戦いが泥沼化

と進むことになる。


 ゲームの『パルティカ』そのものは⑤の時点からスタートした。

 サービス開始から様々なイベントを得て、俺が参加しようとした頃には、

  ○ 元マルド王国があった場所は無法地帯と化している

  ○ グワンダ王国とツォルティグ国が戦争中

  ○ それ以外の国も魔の勢力によるテロ活動が頻発中

という状況になっていたと記憶している。

  

 しかし今回というかこの世界では、①の段階で勇者によりマルド国王が倒された。

 だから②の侵攻がなく、戦乱となるのは当分避けられるだろう。

 ゲームの『パルティカ』と違う歴史になってしまったけれど。


 それでもこの世界が『パルティカ』と酷似していて、俺が国王を裁くまで同じ歴史を辿っていたのなら。

 俺の魔法で当座の金を稼げる、ちょうどいい場所がある。

 それも、俺が今いるスラム街の中に。


 このスラム街には、サタナテス(悪魔の手)という名称の大手非合法組織が潜伏している。

 ゲームでは、

  ① 着装している服や装備の買い取り時価換算金額合計が正銀貨10枚(10万円)以上で

  ② スラム街のある地区内に入る

という条件で発生するサブシナリオで登場する敵だ。


 こいつらは強盗、殺人、誘拐等手広く悪事をやっている巨大組織。

 金もたんまり持っている筈だ。

 本部ではなく、一介の支部であろうとも。


 審判魔法でそれなり以上の悪人相手なら無敵なはずの俺が、生活費その他をいただくのに、ちょうどいい相手だろう。

 危険を感じたら、転移魔法で逃げればいい。


 その後にどうするかについても、ある程度思いついた。

 冒険者登録をした後、冒険者C級までなんとか昇格して、ハボロネ聖公国のテオトゥラ中央学園を目指すというものだ。


 この学園の受験資格は、次のどれかを満たす必要がある。

  ① テオトゥラ教の司教以上の推薦

  ② 各国の指定教育機関で基準以上の成績を取得

  ③ それ以外で学力、知識、技能が入校水準に達している

 そして冒険者C級は、③を満たすとされている。


 実はこうやって学園に入って魔法を学ぶのは、VRMMORPG『パルティカ』では、魔法の知識とステータスを上げる為の、割と定番の攻略方法。

 だから俺も、定番ルートで確実にレベルアップしようという訳だ。


 そのためにも、そして今日を生き抜くためにも、最低限の生活費を手に入れる必要がある。

 だからまずは、サタナテスを襲撃するとしよう。

 そんなサブシナリオは無かったけれど、審査魔法と判決魔法があれば、悪人相手には無敵だ。


 ということで、俺は前世の知識を思い出しつつ、偵察魔法でスラム街の中を探索する。

 あったあった。

 しかも悪そうなのが何人か、奥で会議をしている模様。

 中には偉そうなのもいる。


 ちょうどいい機会だ。

 ばっさり倒して、生活の憂いをなくすとしよう。

 出現位置を確認して、そして俺は転移魔法を起動した。

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