第33話 御礼品
合計6匹のコボルトを倒して、無事に通路の行き止まり地点を確認。
そこから交差点が見えるところまで戻って、倒したコボルトの死骸を出して。
やってくるコボルトやスライムを、少し離れた地点から魔法で攻撃して倒す、という作業を開始。
これがなかなか効率がいい。
コボルトの死骸があれば、近くの魔物発生地点3箇所で発生した魔物を、ほぼ確実に引き寄せることができる。
そしてこの近くの魔物発生地点は、第二階層内にいる生きた魔物の数が一定以下の場合、10分に1組の魔物が発生するという仕組みだ。
『パルティカ』と同じ設定ならば、だけれども。
そして今の体感的には、この世界は俺が変えてしまた歴史の一部以外、ほぼ『パルティカ』と同じである様に感じる。
まさか『薬品作りマスタークエスト』までほぼ同じ様に始まるとは思わなかったけれど。
なぜこんなことになっているのかはわからないし、今考えても無意味だ。
現状、ここで俺はやっていくしかないのだから。
というわけで、今ここでやるべきなのは経験値&報奨金稼ぎ。
出てきた魔物を倒す作業だ。
「次の魔物をシャルが倒したら、その次は俺が槍で倒す。その後はクリスが倒してくれ」
「まだ倒せる。魔力にも余裕がある」
「俺やクリスも訓練しておかないと、魔法や武器攻撃の腕が上がりにくい。今のシャルは風属性系の攻撃魔法使いとして、十分に強い。だから俺やクリスの訓練にも協力してくれ」
こんな感じで効率よく、合計50匹倒したところで、魔物の死骸に乾燥魔法をかけて、カラカラに軽くなったところで魔法収納に回収。
「魔石を取って放置じゃないんですか?」
「ここは魔物が出るから、時間がかかる作業をしたくない。第一階層まで戻ったら、一気に燃やして魔石を取る。でもその前に、次は第三階層から始められる様、第三階層の入口まで行こう」
「その道順も、フォルティはわかるのですか」
「ああ、一応は。ただ魔物は出るから、用心はしておいてくれ」
ただこの階層に出るのは、せいぜいコボルト3匹組まで。
危ないと感じることも特になく、第三階層への階段へ到着。
階段を降りて、第三階層に出た後、階層転移の魔法陣で第一階層に戻り、乾燥させた魔物の死骸を燃やして魔石を取って、受付へ。
「結構儲かりますね、午後だけなのに」
「攻撃魔法を今くらいに使えれば、冒険者としては中堅以上だ。場所さえ知っていれば、この程度は稼げて当然だろう」
「でもそれって、結局はフォルティのおかげですよね」
「俺一人では出来ることが限られている。迷宮すら、E級では一人では入れなかった」
「でも一日で、D級に昇級しましたよね」
「運が良かっただけだ」
そう、運が良かっただけだ。
D級になったのは、たまたまアンジェが襲われているのを発見したから。
更にいうと迷宮を使う攻略が出来たのは、クリスとシャルが仲間になったから。
仲間に出来たのは、サタナテスを襲った時に、たまたま捕まっていたから。
日本時代の俺は、正直運がいい方ではなかった。
というか、なかなかに救われない環境だったと思う。
それに比べれば、こっちの世界に来てからは順調としか言い様はない。
女子2人と一緒、いや3人と一緒というのは、コミュ障陰キャには荷が重いけれど。
「それより、そろそろアンジェの方もいい時間だろう。せっかくだからお礼の何かを買ってから向かおう」
別に『薬品作りマスタークエスト』そのものには、お礼なんてものの必要性はない。
ただ攻略Webには、ファルマさんの情報がある程度書かれていた。
その中には、焼き菓子類が好みで、贔屓にしているのはシルケンゾーの市場街北側にある『ラムル』という店だなんて情報もあったのだ。
ひょっとしたらこれは、裏クエストのヒントかもしれない。
俺はそう思って、一応は覚えていた。
ただ裏クエストなんてものがなくても、お礼は持っていった方がいいだろう。
アンジェに薬品作りを教えてもらったのだから。
「なにかいい物がありますか?」
「ああ、少し高いけれどな。ただで薬品作りを教えてもらっているんだ。少しくらいいいものを持っていってもいいだろう」
「確かにそうですね。店はどの辺ですか」
「確か商店街の北の外れ近くだったと思う。こっちだ」
記憶通りの場所で、無事店を発見。
無事焼き菓子と紅茶のセットを、正銀貨3枚なんて高いお値段だけれど購入して。
美味しそうだし、アンジェが薬品を作れる様になったお祝い用という名目で、クリスとシャルがケーキと焼き菓子セットをついでに購入して。
クリスにあれこれと少しばかり頼んだ後、薬屋へと向かう。
薬屋が見えたところで、17時の鐘の音が聞こえた。
ちょうどいいだろうということで、空いている出入口から薬屋の中へ。
見るとアンジェと店主、ファルマさんが店内の応接セットでお茶をしていた。
雰囲気から見て、薬品作りを教える作業は終わったようだ。
「失礼します。本日はアンジェに薬品作りを教えていただき、本当にありがとうございました。それで、もしよければ、こちらを……」
このパーティは、どう見てもクリスが年長だしリーダーっぽい。
だからクリスに挨拶その他をお任せした訳だ。
決して俺がコミュ障だから、クリスに投げたわけではない。
本当だ……多分。
「あらあら悪いね。でもこれは、そこらの冒険者パーティなら1日分くらいかかっただろう。いいのかい?」
「いえ、魔法学園で1年かかってやっと習得する薬品作りを教えてもらったのですから。これでは対価には足りませんが、せめてもの気持ちということで」
「ありがとう。ありがたくいただくよ。それじゃちょっと話があるから、そこに座りな」
応接セットのアンジェ側は、長椅子だ。
俺達なら4人で座っても問題ない広さ。
なので手前側から、俺、クリス、アンジェ、シャルという順で座らせてもらう。
「さて、まずは今日、アンジェに教えた内容についてだ。薬品としては、一般回復薬、一般魔力回復薬、毒消し薬、気付け薬……」




