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審判魔法は偽らない  作者: 於田縫紀
第6章 攻略と育成

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第31話 お高めのランチ

「ひょっとしてフォルティは、知っていたのですか? あそこの薬屋へ行けば、薬品(ポーション)作りを教えてもらえるということを」


 薬屋を離れて早々に、クリスにそう質問されてしまった。


「いや、今回はアンジェの、日頃の行いが良かっただけだ。俺が企図したわけじゃない」


 本音だ。

 あくまで俺の作戦は、レベルアップすることと道具を揃えることによるもの。

 クエストを頼りにしたわけではない。


「でも結局は、フォルティが言った様に、3日以内に薬品(ポーション)作りが出来る様になりそうですよね」


「アンジェの実力だ。俺やあの薬店のおばさんがいなくても、いずれ薬師になれただろう。俺たちは、習得期間を若干早めただけだ」


 これも本音だ。

 アンジェはおそらく『パルティカ』の典型的な薬師・錬金術師タイプ。

 放置していても、そのうち経験値やスキルポイントを勝手に貯めて、薬師になっただろう。

 それまでに死ななければ。


「わかりました。それでは昼食を食べに行きましょうか」


 確かに腹が減っている。

 それに俺が何故あれこれ知っているかという話題は、出来るだけ避けたい。

 というわけで、ここは賛成だ。


「わかった。店は昨日と同じでいいか?」


「どうせですから、少し歩いてあちこち見てみませんか?」


 確かにその方がいい。

 昨日の店は安くて量が多くてそこそこの味だけれど、もう少しいい店で食べてみたい気がする。

 元々それなりにお金を持っているし、装備代がかかっていないから余裕がある。

 その上結構な数の魔物を倒しているので、多少高い店で食べても問題ない。


「賛成だ。ただ俺は正直、あまりこういうことに詳しくないし得意でもない。だから店は、クリスとシャルに任せる」


 攻略Webには、宿屋とか飲食店についての情報も載っていた。

 ただ俺はそういった部分は、あまり読んでいなかった。

 レベルアップだの強化だのクエストだのといった、いわゆる攻略に必要な情報をメインに読み込んでいたから。


 だから俺は、美味しい店とかいい宿なんて情報は知らない。

 現実でもそういったところとは縁が遠かったから、うまく見極める自信もない。

 ということで、2人に任せてただついていく。


 ◇◇◇


 表通りと一本裏の通りを行き来してクリスとシャルが選んだのは、店構えが少し高級そうな店。

 看板に書かれていたランチセットも、肉食亭(カルニボス)の3倍くらいの値段だ。


 でも魔物を倒して稼いでいるし、装備代がかかっていない分、お金の余裕はある。

 だから今回くらいは問題ないだろう。

 それに食事をしながら話したいこともある。

 トリギアに行く件だ。

 

 ◇◇◇


 切り落とし肉の香草炒めと玉子焼き、少し薬臭い感じの香りがするけれど豚汁に味も見かけもよく似た具だくさんスープ、パン、ドライフルーツ入りヨーグルト。

 肉は切り落とした端肉で、砂糖などを使った甘い味はない。

 基本的に塩とハーブに、乳製品ちょっとという味付け。


 つまり金のかかりそうなものは、乳製品以外使われていない。

 そしてマルド王国は酪農はそこそこ盛んなので、乳製品は割とお安いはずだ。


 それでもお値段は、昨日の3倍。

 これはこの国が貧しいせいなのか、流通が遅れているのか。

 多分両方だと思うけれど。  

 ただ日本の感覚がある俺以外、クリスとシャルには好評の様だ。


「美味しい。お肉がいっぱい」


「そうですね、ドライフルーツやヨーグルトなんて、久しぶりに食べました。ただきっと、毎日この食事というのは贅沢なんでしょうね」


 こんな感じだ。

 さて、それではトリギア行きの話をするとしよう。


「さて、話は変わるが、今後の予定の話だ。予定ではここで冒険者C級を目指して、その後にテオトゥラ中央学園へと向かうつもりだった。しかしアンジェが加わったから、少し予定を変更しようと思う。具体的には、もう少しここで迷宮(ダンジョン)を攻略した後、トリギアにあるレスアノル迷宮(ダンジョン)を目指そうと思う」


「アンジェを仲間にする話し合いの中で、言っていましたね。錬金術師を目指す場合、トリギアにあるレスアノル迷宮(ダンジョン)へ行く必要があると。それでも来年2月にテオトゥラ中央学園の入学申し込みをするには十分間に合うとも聞きました。だから問題はないでしょう」


 あれ? あっさり。

 シャルも同意とばかりに頷いているし。

 

「ただトリギアのレスアノル迷宮(ダンジョン)には、何があるのでしょうか。そして、どんな感じで攻略するのでしょうか。出来ればアンジェもいる時に説明してくれると、わかりやすいのですけれど」


 確かにそうだな。

 

「わかった。今日の夕食のときにでも、説明するとしよう」


「あと、すぐにレスアノル迷宮(ダンジョン)に向かわない理由は、何でしょうか。道中の魔物と戦える力を身につけるため、ではないと感じるのですけれど。フォルティの魔法を使えば、ある程度の距離なら瞬時に移動できると思いますから」


 そう、まさにその、移動するための転移魔法の問題なのだ。


「今の俺の魔力と熟練度では、4人で転移魔法を使って移動できる距離は最大で5km程度だ。仮に1日で10回使えたとして50km、そしてここからトリギアまでは、およそ450kmほどある」


 一応この世界というかマルド王(この)国にも、乗合馬車はある。

 ただこれが1日にせいぜい80km程度しか走らない上、乗り心地最悪、お値段高めの代物。

 だから歩ける人は歩いて移動するのが普通だ。

 もちろん貴族とか、隊商とかは話は別だけれど。


「だから最低でも4人で10km転移できるようになるまで、カリミナス(この)迷宮(ダンジョン)で、鍛える必要がある。ならついでだから、迷宮(ダンジョン)の10階まで攻略して、全員C級冒険者に昇格しするまで鍛えたい」


「わかりました。それにしても、フォルティ自身も鍛える必要があるのは、不思議に感じます」


 気になったので、聞き返してみる。


「何故不思議なんだ?」


「私からみれば、フォルティは充分強い様に見えます。迷宮(ダンジョン)も、私たちがいるからゆっくり攻略しているだけで、その気になれば一気に第十階層まで行って、C級冒険者になれる気がします。違うでしょうか」


 確かにそれは可能だろう。

 そうやってC級冒険者になった後、攻略Webにあった様なルートを辿れば、ずっと早く自分を強化できるのも確かだ。

 ただ別に、現状で急ぐ必要はない。

 テオトゥラ中央学園の来年の試験に間に合えば、十分だ。


 それに冒険者は、単独よりもパーティの方が一般的だ。

 攻略の為に辺境に行ったとしても、パーティなら単独の場合と比べ、怪しまれる可能性がぐっと減る。

 単独の場合では依頼を受けられないなんて事もある。

 つまりパーティを組むメリットの方が、単独でより大きい。


 そう、あくまで俺の都合で、それだけだ。

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