第27話 必要な道具
翌朝。
4人パーティとなった俺たちは、朝食後、カリミナス迷宮へと向かった。
迷宮の受付へ、今回はこう申告。
「今日はD級冒険者3人とE級冒険者1人で、第一階層を一通り回った後、行ければ第二階層まで足を延ばそうと思います」
「わかりました。お気をつけて」
無事に入れて貰って、昨日と同じ東側の壁沿いの小道を少し歩いたところで。
「今日はどこへ向かうんでしょうか? 受付では第一階層を一通り回った後、第二階層まで行くと言っていましたけれど」
クリスが俺に尋ねる。
あんな話を昨晩したというのに、まったくこれまでと様子が変わらない。
もちろん俺も、いつもと変わらない態度は維持できていると思う。
実際は、あれこれと気になってしまうのだが。
クリスのやっぱり大きい胸とか。
「まずは昨日と同じルートだ。安全な魔物討伐をした後、昨日の宝箱がある場所へ行く」
えっ!?
そう言いたそうな顔をして、三人それぞれ俺の方を見る。
「魔物を倒す訓練をするのはわかります。ですけれど、あの宝箱はもう開けたから、中は空ですよね」
「それに私は、魔物と戦うような強さはないのですよ」
どちらの反応も、俺の予測の範囲内。
だから返答も難しくない。
「アンジェは、最初から戦う必要は無い。まずはクリスやシャルが魔物を倒すのを見るだけでいい。合計20匹くらい倒すのを見れば、何となく戦い方がわかるはずだ」
同じパーティのパーティ員なら、自分は戦わなくても経験値が入る。
それでレベルアップすれば、戦闘のやり方やそれ以外の知識なんてのも、何故かわかる様になるはずだ。
なんてのは、説明が面倒くさいから言わないけれど。
だから次に説明するのは、クリスの疑問の方。
「昨日のあの宝箱は、半日あれば復活するタイプだ。一度中身を取った冒険者が中を見ても空だけれどな。
しかしアンジェはあの宝箱をまだ開けていない。だからアンジェがいる状態で開ければ、最低でもアンジェ用の初心者装備が手に入る筈だ」
チュートリアル用宝箱としての仕様だ。
もちろんチュートリアルというのは、ゲームの『パルティカ』の方の説明だが、どうせこっちも動作は同じだろう。
「あとアンジェは、俺が指定した場所から先、薬草が生えていないか、注意しながら歩いてくれ。見つけたら採取を頼む。ある程度は俺の魔法で持って行けるから、遠慮せず採ってくれ。迷宮内に生えている薬草は半日で元に戻るから、根こそぎ採り尽くしても大丈夫だ」
薬草の多くは、同じ場所に群れて生えている。
しかし普通は後でまた生えてくる様、半分以上は残しておくのが普通。
しかし迷宮内なら、半日もあれば宝箱がリポップするように、採った薬草も復活する。
だから一箇所で、効率よく採取できるわけだ。
「わかったのです。でも薬草を採取する時間分、時間がかかると思うのですよ。それでもいいのですか?」
「問題ない。薬草採取も、今日の目的のひとつだ。根こそぎ採っていいなら、それなりの稼ぎになるだろう。加工して売ることが出来るのなら、更に稼げる。ただ加工は迷宮を出た後にしてくれ。俺の収納は時間停止タイプだから、鮮度が落ちる心配はない」
「りょーかいです。なら遠慮せず、採りまくるのです」
もちろんアンジェに薬草を採らせるのは、単なる金稼ぎのためではない。
ゲームの『パルティカ』にはスキルポイントという裏パラメーターがあるとされている。
職業に関係する行動を行うと貯まり、その職業に関するスキルが上達しやすくなるというパラメーターだ。
スキルポイントについては、ゲームの『パルティカ』のステータス閲覧画面には出てこない。
公式の方も、そんなパラメーターがあるとは言及していない。
しかし目指す職業にあった『らしい』行動をとればとるほど、その職業にあったスキルを身につける確率が上がるし、その職業になりやすいのは事実だ。
故に『パルティカ』の攻略ページは、スキルポイントが存在する前提で書かれているところがほとんど。
つまり薬草採取をすればするほど、薬師や錬金術師に関するスキルが上達しやすくなるはずだ。
『パルティカ』と同じなら、だけれども。
だからアンジェには、薬師や錬金術師らしい行動を取って貰おう。
アンジェのためじゃない。
俺が攻略で楽できる様にだ。
ということで、昨日同様に東側の壁沿いを歩いて、草地と柵がある狩り場に到着した。
「それじゃまずは、安全な討伐場所で魔物を倒す状況の見学からだ。今日は、シャルがメインでクリスが補助という形で魔物狩りをしてくれ。回収は俺の魔法でやるから、倒すことだけに専念してくれてかまわない」
◇◇◇
ゴブリンと角ウサギをあわせて20匹以上狩って、そこからは薬草を採取しながら宝箱のある石造りの小屋へ。
そして俺は確信した。
アンジェ、間違いなく薬師から錬金術師に進む目的でキャラクターメーキングをした場合のプレイヤーキャラクターと同等の能力があるだろうと。
まず薬草を見つけるのが、とにかく早い。
10メートル先に1cmだけ頭を出しているようなものでも、容赦なく見つける。
そして採取も手早い。
土移動魔法だの手元洗浄魔法だのを使用して、あっさりと完璧な状態で確保してしまう。
そんなこんなで、小屋に到着した時には、既に10kg近い薬草数種類を確保していた。
もちろん俺が収納して持ち運んでいるのだけれど。
さて、それでは宝箱だ。
周囲に宝箱以外の魔物の魔力が無いのを確認して、小屋の中へ。
「宝箱がありますけれど、何か微妙に怪しい雰囲気がするのです」
アンジェ、ミミックだと気づいているようだ。
ということで解説した後、さくっと倒して中身を確認。
出てきたのは革鎧とマント、ショートソード、そして錬金術師の象徴ともいえる魔道具だ。
「これは……錬金窯なのですか!」
俺は頷く。
「ああ、やっぱり出てきたな。アンジェの能力に対応して」
「なんでこんなものが、宝箱から出るのですか?」
このなんでという言葉には、きっと広い概念を含んでいるのだろう。
ただ俺が出来るのは、この程度の説明まで。
「ここのミミックは、倒すと必要な装備や道具が出てくることになっている。初心者用限定だし、1人1回しか使えないがな」




