第22話 聴取完了
素材にならない魔物の場合、死骸から魔石を取り出すのは簡単だ。
死骸を魔法で焼けば、燃えない魔石が残る。
ということで、俺は回収したゴブリンとスライムを出して、火炎魔法を発動する。
あっさり燃えて、骨と魔石が残った。
魔石を魔法で収納すれば、魔石取り出し作業は終わり。
武器として使用していた出来損ないのショートソードは金属素材として売れるから、収納したまま。
角ウサギは毛皮と肉が素材として売れるので、死骸のままでいい。
ということで、あとは移動するだけだ。
「出口近くまで、魔法で移動する」
クリスやシャルは、そう疲れてはいないだろう。
しかし保護した彼女は、結構疲れている様だ。
だから魔法で移動するのがきっと正しい。
そういう判断で、転移魔法を発動。
あっさり石壁沿いの小道に出た。
「なっ!?」
「気にしなくていい。転移魔法だ」
本当は、もう少し丁寧な説明をした方がいいのだろう。
しかしぼっちだった俺は、会話は不得意科目。
なのでゲームキャラっぽい口調で、最小限の説明にとどめたところ。
「そういえば、私をいきなり移動させたり、その後いきなり魔物のところに移動したのですね」
どうやら自己解決した様だ。
助かるなと思いつつ、説明を追加。
「そういうことだ。俺は転移魔法の他に、収納魔法、遠見魔法が使える」
そんな話をしているうちに、迷宮の出口に到着。
出る場合はゲートの手前、迷宮内部側の受付カウンターで受付をする必要がある。
ここで確認してからゲートを開けて外に出すことで、『入ったけれど出てきていない者』を確認出来るというシステムだ。
また、ここで倒した魔物の魔石や死骸を出して、報奨金を貰うことも出来る。
そして迷宮内で発生した事件の報告についても、ここが窓口のはずだ。
さて、ここで彼女の囮箱事案と、あの冒険者3人が死亡した件について、報告する必要がある。
口下手な俺としては、クリスあたりに全部任せてしまいたいところだ。
しかし遠見魔法で状況を把握したのは俺だから、俺自身が説明する必要がある。
面倒だしやりたくないが、仕方ない。
例によってゲームの主人公になったつもりで、対処するとしよう。
「お疲れ様でした。お帰りですか」
そう言って会釈した受付嬢さんに、俺は告げる。
「そうだが、その前に提出物と報告事項がある。この彼女が装備を奪われた上、足を切られて動けなくなり、囮箱のエサにされていた。なお犯人の3人パーティはその後、全滅した。冒険者証や装備は俺が持ち帰ったが、中には彼女がそのパーティから奪われた物も含まれている様だ」
受付嬢さんが、すっと表情を変える。
「わかりました。詳細について伺う必要があります。出口ゲートを出た場所でお待ちください。係員が参ります。あと迷宮を出る手続きをしますので、こちらで冒険者証を提出してください。中で倒した魔物がある場合は、お預かりして精算します」
なるほど、分業体制ということか。
確かにここであれこれ取り調べというのも、難しいだろう。
この場所は、迷宮から出る者に対する受付に過ぎないし、他の冒険者が通る。
時間がかかる事情聴取を行うには向かないだろう。
今はまだ時間的に早いから、他の冒険者がいないけれど。
「わかった。では頼む。あとこっちの2人は俺と同パーティだ。功績も平等に配布で頼む」
そう言いつつ俺たちは、それぞれ冒険者証を出す。
◇◇◇
あれこれやって、ほぼ1時間経過した後。
俺たちは何とか、事情聴取プラスαから解放された。
正直、無茶苦茶疲れた。
もう宿を取って、そのまま寝たいくらいに。
しかし残念なことに、事情聴取プラスαのおかげで、あれこれとおまけがついてしまったのだ。
そこを整理する必要がある。
「とりあえず、飯を食べながら話すとしよう。アンジェはどこかいい店を知っているか?」
「肉食亭というお店があるのです。夜は酒を出すので入りにくいですが、この時間なら安くて量が多くて、お勧めなのです」
囮箱の犠牲者になっていた女子冒険者は、アンジェという名前で15歳。
見かけより年長だったというのは、まあ置いておいて。
彼女が事情聴取の、最大のおまけだ。
◇◇◇
食堂へ行く途中だの、食事をしながらだので話を聞いた結果、だいたい今までの状況とか背景とかが判明した。
アンジェは1ヶ月前に近くの村にある実家を出て、シルケンゾーの街にやってきたそうだ。
実家を出たのは、税金の臨時徴収のせいで、このままでは家族5人が食べていけなくなったから。
最年長の彼女が、人減らしということで実家を離れたそうだ。
しかし特に技能のない初心者の冒険者に出来る仕事など、そう多くはない。
なので街門のすぐ外辺りで薬草を探すのをメインにして、ぎりぎりの生活をしていたとのこと。
そうして何とかお金を貯めて、最小限の装備を調えて、でも迷宮はE級冒険者1人では入れてくれないから、しばらくはお預けかなと思ったところで。
あの冒険者パーティに『一緒に行かないか』と薬草採取中に声をかけられて。
これで迷宮に入れるし、薬草取りよりはお金が稼げるだろうと、一緒について行ってしまったそうだ。
その後、魔物討伐で安全に稼げる場所があるということで、あの草地へ連れて行かれ、隊列で後ろを歩いていた戦士に足の腱を切られて。
そこで悲鳴を上げたのを俺たちが聞いて、あとは体験した通りとなる。
なおあの冒険者パーティは、冒険者ギルドによると、過去に2人未帰還者を出しているそうだ。
いずれも新しく加わった新人で、おそらくは……ということらしい。
このあたりの事情聴取は、俺もクリスもシャルも聞いていた。
そして特にシャルが、アンジェに思い切り同情してしまった状態だったりする。
◇◇◇
それ以外のおまけとは、冒険者級の変更だ。
今回の事情聴取で、俺もクリスもシャルも、冒険者D級に昇格してしまった。
「攻撃魔法や治療回復魔法を実戦で使用出来る冒険者は、D級以上と認められます。ですので3名とも、ここでD級に昇格します」
なお更なるおまけの文言もついている。
「転移魔法や収納魔法を使用可能なフォルティは、能力的にはC級以上でしょう。しかしC級に認定するには、基本的に実績が必要です。今回の救出事案だけでは、C級と認定することは出来ません。ですのでC級に昇格するには、実績を積み重ねた後に試験を受けるか、迷宮の第10階層へ到達する必要があります。このパーティでしたら、第10階層を目指した方が早いでしょう」
つまり迷宮第10階層を目指すことを、冒険者ギルドから勧められてしまったわけだ。
つまりこの後、食堂で行う予定の話し合いは、
○ アンジェは今後どうするか
○ 元の3人はD級になったけれど、この後もこの迷宮でC級を目指すか
という内容になる。




