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審判魔法は偽らない  作者: 於田縫紀
第4章 迷宮突入

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第20話 因果応報 (2)

「あとは簡単だ。十分魔物が集まったところで、攻撃魔法と弓、投槍などで集中攻撃すればいい。ゴブリン10匹程度なら、反撃される前に倒せる。囮にされた怪我人はまず助からないがな。この第一階層のように魔物が少ない場所で、自分たちだけは安全に大量討伐をして金を稼ぐには、効率的かつ効率的な方法だ」


「それって、冒険者ギルドで捕まえたりしないの?」


 シャル、珍しくちゃんと喋った。

 つまりそれだけ気になったということだろう。

 ただここでの返答は、残念ながらシャルの期待に添えない。


「もちろん故意で他人を犠牲に囮箱を使ったと判明すれば、軽くても鉱山奴隷の刑だ。しかし迷宮(ダンジョン)内は広い。人がいない場所を選べば、目撃者も出ないだろう。結果として、そういった悪質な冒険者パーティがいても、すぐには発覚しない。ただし……」


 遠視魔法で見ている先は、予想通りの状況になっている。

 だからこれは、説明しておこう。


「もしその怪我人が、なんとかしてその場から脱出すれば、状況は一気に変化する。特に転移魔法のような魔法で脱出した場合、魔物が後を追いかけることは出来ない。その場合、集まった魔物は最も近い別の人間を探すわけだ。大概それは、囮箱を仕掛けて近くで攻撃準備をしていたパーティになる。

 そしてそういったパーティは、他人を攻撃している魔物を他から攻撃するならともかく、自分たちめがけて集団で襲ってくる魔物を倒せるような腕はない。そんな腕があったら、もっと深い階層で強い魔物を相手にするほうが金が稼げるからな。つまりは、そういうことだ」


 あの冒険者パーティは、3人とも魔物との乱戦状態になってしまった。

 囮に使った彼女が消えた時点で全力で脱出していれば、おそらくは生き残れただろう。

 それをためらったばかりに、動きの速い角ウサギ5匹に襲いかかられ、足を中心に怪我して動けなくなった。


 ここまで来ると、あとは囮箱の囮と同じ状態だ。

 人数が多い分、少しは抵抗する時間が稼げるだろう。

 しかし第一階層で囮箱なんてやらないと稼げないパーティだ。

 ここで切り抜ける実力なんて無い。


 さて、それでは後始末の方の説明だ。


「つまりそっちのパーティ、具体的には戦士2人魔法使い1人のパーティを、俺は見殺しにした。このことについては異議があるかもしれない。捕らえて、その後に冒険者ギルドなり、地域を治める貴族なりに裁いてもらうのが正しいだろう」


 シャルがうんうんと頷く。

 そう、それが理屈の上では正しい行動だ。

 しかし現実は、残念ながら正しいことが認められるとは限らない。


「しかし捕まえて訴え出たところで、正しく裁かれるとは限らない。被害者1人と目撃者1人。向こうは3人。冒険者級も登録後の年数も、向こうが上だ。この状況で正しく裁かれるかどうかは五分五分か、それ以下だろう。何せ発覚したら、最低でも一生鉱山奴隷の刑になる。街の有力者だの何だのを使って、なんとしても話をひっくり返そうとすることは間違いない」


 シャルがちゃんと聞いているのを確認して、俺は更に説明を続ける。


「そして万が一、この訴え出が認められなかった場合。俺達が向こうを罪に陥れようとしたという、虚報の罪に問われる可能性がある。虚報の刑は、訴え出た罪に対する罰状をそのまま適用だ。だから今回の場合は、鉱山奴隷の刑だな」


 明らかにシャルの表情が変わった。

 そう、ここの世界は、そういう意味ではどうしようもない場所なのだ。

 ということで、まとめに入ろう。


「俺もシャルたちも、この街に知り合いがいるわけじゃない。そういう意味では、圧倒的に向こうのパーティの方が有利だ。つまり、訴え出ることは得策じゃない。かと言ってここで見逃した場合、また同じことをする可能性がある。

 となると、同種事案の再発を防止するとともに、罪を償わせる適切な方法なんて、そうないわけだ。だから今回は、自分たちがやったことの意味を直接確認してもらうことにした。以上だ」


 重苦しい説明、終了だ。

 さて、ここで少しは明るい情報で、気分を変えるとしよう。

 俺はクリスに声をかける。

  

「ところで、そっちの怪我の方は大丈夫か?」


「まもなく完治します」


 もうすぐ完治するなら、ついでに行動予定を追加しておこう。


「それじゃ怪我を治して、そこの彼女が意識を回復したら、おまけの行動と行こう。どこかのパーティのせいで、第一階層なのに、魔物の集団が出来てしまった。第二階層に行くルートから外れているから、他のパーティに討伐される可能性は低いだろう、しかし万が一、初心者のパーティがこの集団と出逢ってしまったら危険だ。出来る限り早く、始末した方がいい。今のこのパーティなら、攻撃魔法で力押しして倒せる」


 何故魔物の集団が出来たのかは、クリスもシャルもわかっていると思う。

 これ以上の説明は、言わぬが花というやつだ。


 あとはクリスが治療しているこの冒険者女子が囮箱の犠牲者となりかけた際、むこうのパーティに奪われたものがあった場合は、取り返したい。

 そのためにも、行っておくべきだろう。 


 これだけ魔物が多ければ、いい経験値が稼げるというのも事実。

 でもそのことは、あえてこの場では言わない。


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