第18話 予定通りの行程
そして俺達は、予定場所にたどり着いた。
それではクリスとシャルに、ここがどういう場所で、何をするのかを説明しよう。
「さて、ここが最初の目的地だ。柵の手前側は安全地帯で魔物が入ってこないが、向こう側は魔物が発生するし、他から来ることもある。出るのは主に緑スライムか角ウサギ、たまにゴブリンも単独で出るらしい。ここに魔物を寄せて、安全なこちら側から魔法で狩る。これを全員が攻撃魔法を使えるまで繰り返す」
話している途中で、ガサガサという音がし始めた。
来たな、そう思いつつ、俺は説明を続ける。
「魔物は人間の声や魔力、匂いを感じると近づいてくる。こうやって声を出していれば、聞こえる範囲にいれば襲おうとやってくるはずだ。直接目で見えなくても、魔力が見えればどこにいるかわかる。クリス、シャル、見えるか?」
二人とも頷いた。
「弱そうなのが2体、少し遠くから近づいてきつつあるのが1体でしょうか」
シャルがうんうん頷いている。
どうやら2人とも把握できた様だ。
「ああ、そのとおりだ。ということで」
俺はもともとは空属性魔法以外は、日常程度の魔法しか使えないはずだった。
だからここでも転移魔法を使用して、敵を上空へと転移させ、地上へ落として倒すつもりだった。
しかし今、改めて攻撃しようとしたところで、攻撃魔法が使える様になっているのに気づいた。
具体的には火球魔法、火炎魔法、水撃魔法、氷弾魔法、風刃魔法、渦巻魔法の3属性6種類の攻撃魔法が使える。
どれも初歩かその次くらいの攻撃魔法だが、無いよりはずっとましだ。
おそらくこれは、国王や大司教、サタナテスの連中、セヌテラを倒してレベルアップした影響だろう。
ならここは、遠慮せずに攻撃魔法で倒させてもらう。
草地なので火が燃え広がる可能性がある火球魔法ではなく、氷弾魔法を使う。
対象の位置を確認した後、3発発動。
3発とも対象に命中。
みるみるうちに3体の魔力が減っていく。
倒すことに成功した様だ。
転送魔法を発動させ、3体を柵のすぐ向こう側へと移動させる。
緑スライム2体と、角ウサギ1体だった。
「こんな感じで、柵のこちら側から向こう側を、攻撃魔法で狙い撃つ。魔物が死ねば、俺の転送魔法や収納魔法で回収可能だ」
「その魔物は収納しないんですか? 倒した魔物は出来る限り早く収納するか、火属性魔法で燃やすか、土属性魔法で埋めた方がいい。そう冒険者の方に聞いた気がします」
そう、クリスが言うことが常識だ。
ここは、常識を外す理由を説明しておいた方がいいだろう。
「ああ、魔物の死骸の発する臭いや魔力の残滓は、別の魔物を引きつける。普通は魔物に襲われない様、さっさと始末するのが正解だ。しかし今は安全地帯にいて、魔物を倒す訓練中。なら出しっぱなしにして、他の魔物を呼んだほうがいいだろう」
クリスは、そしてシャルもうんうんと頷いた。
理解してくれた様だ。
「なら私やシャルも、ここから攻撃魔法を撃つ練習をした方がいいでしょうか。まだ攻撃魔法を使えるか、わかりませんけれど」
「ならここから、攻撃魔法が出せるかどうか試してみてくれ。攻撃魔法が使える様になっていれば、自分でわかるはずだ。わかったら教えてくれ。魔物を倒す作業を手伝って貰う」
「わかりました」
「やってみます」
クリスだけでなく、シャルも柵のそばに近づいて、向こう側を確認する。
またガサガサという音が遠くから近づいてきた。
◇◇◇
魔物が来て倒してを繰り返すこと15回。
俺が7体目の魔物を倒してところで、クリスは水属性の水撃魔法と氷弾魔法が使えるようになった。
そしてシャルも、俺とクリスあわせて12体目を倒したところで、風刃魔法を使える様になった。
予想よりいい感じだ。
ただ当初予定の火球魔法は、2人とも使えるようにならなかった。
これは俺が使えるから、とりあえず問題はない。
「これだけ出来れば充分だろう。それじゃ次、宝箱を取りに行く。今の魔法で倒せない敵は出ない筈だが、一応は周囲の魔力を見ながら歩いてくれ。今ならクリスもシャルも、近づいてくる魔物の魔力が見えるはずだ」
「わかりました」
シャルも頷く。
ということで、東の外壁に沿って安全地帯を南へ。
そして次の広場で、壁沿いを離れて右、西側へ続く小道へ。
魔物に遭わないまま、石造りの小屋の前にたどり着いた。
見た限り、目的の宝箱以外に魔力は感じない。
ということで、俺は2人を引き連れて中へ。
「これだ。今は一見普通の宝箱に見えるが、実はミミックという宝箱の魔物だ。宝箱を開けようとするか、攻撃を仕掛けるかすると、魔物としての正体を現す。こんな感じだ」
小屋の中にあった、壊れたハンマーの頭部分を魔法収納し、宝箱の上、天井に近い場所に出す。
ハンマーの頭部分が落下し、宝箱にぶつかってドン! と音を立てた。
次の瞬間、宝箱が大きく開いて、中から緑色の長い腕が2本出てくる。
さっとクリスが身構えた。
しかしこの場合、そんなに警戒する必要はない。
「ミミックは、弱点属性の攻撃魔法を使えれば簡単に倒せる。宝箱部分が木製のミミックは、火属性が弱点だ」
説明しながら、俺は火球魔法を発動。
テニスボールくらいの小さな火球が飛んでいって、ミミックの本体にぶつかった。
次の瞬間、ボオッ! という音とともに、箱部分が炎に包まれる。
「ちなみに宝箱が金属製のミミックの場合は、水属性の氷魔法が弱点になる。吹雪魔法か氷結魔法を使うと、ガンガン魔力が減っていってあっさり倒れる。今後もミミックとは何度か戦うから、参考に覚えておけ」
石造りの小屋だから、小屋そのものに延焼する心配はない。
扉や窓は朽ちてなくなっているから、酸欠も気にしないでいい。
強いて言えば、この戦いに気づいた魔物が、こちらに近づいてくるかもしれない。
今のところは魔力を感じないから、大丈夫だろうと思うけれど。
さて、燃え広がった炎は、すぐに小さくなった。
木製部分と触手部分は良く燃えるが、他はそれほど燃えない物質なのだろう。
もうミミックは倒れた様で、魔力を感じない。
だから俺は、冷却魔法をかける。
これは攻撃魔法ではなく、日常程度の魔法。
それでも死んだ魔物にはそこそこ有効で、炎も一気に収まる。
「ミミックは宝箱でもあるから、アイテムを持っている場合が多い。今の方法では熱に弱いものは燃えてしまうが、今回手に入るものは難燃性だから大丈夫だ。ただ手で取ると煤けるから、一度収納して、安全地帯に行ってから確認しよう」
「わかりました」
シャルも頷いた。




