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審判魔法は偽らない  作者: 於田縫紀
第4章 迷宮突入

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第17話 戦闘場所

 左側が石造りの東の外壁。

 それ以外は基本的に森林で、外壁に沿って獣道よりはちょっとましという程度の小道が続いている。


 第一階層は天井がないから、本物の空が見える屋外だ。

 第二階層以下は建物内のような感じだったり、洞窟のような感じだったり、偽物の空が広がった屋外風の場所だったりするけれど。


「安全なルートなのに、人の気配がないですね。あとやっぱり、外から見るより広く感じます」


 50mくらい歩いたところで、クリスがそんなことを言う。

 クリスは迷宮(ダンジョン)が外から見るより実際に広いことは、知っているだろう。

 それでもシャルがわかるように、少しだけ丁寧に解説するとしよう。


「迷宮(ダンジョン)の内部は、外から見る広さと一致しない。空間操作系の魔法と同じような仕組みで、拡張しているらしい。このカリミナス迷宮(ダンジョン)は外から図ると縦横300m程度だが、第一階層は概ね2km四方の広さがある。

 あと東側外壁沿いのルートに人がいない理由は、こちらには稼げる場所がないと思われているからだ。魔物が出やすい場所や第二階層への階段からは、離れている。薬草はそこそこ生えているが、わざわざ迷宮(ダンジョン)に入らなくても採取出来る種類がほとんどだ。魔物を倒せるような冒険者にとっては、稼げる対象ではないから、わざわざ採りに行くなんてことは普通はしない」


「だから迷宮(ダンジョン)のお試し、と言ったのですね。ですがフォルがこちらに行くということは、薬草以外にも目的がありますよね、きっと」


「ああ」


 クリスの言葉に、俺は歩きながら頷く。


「まずは魔物と戦う訓練をするつもりだ。魔物は入ってこないけれど、すぐ近くまで魔物が来る場所がある。そこなら攻撃魔法で魔物を倒す練習が安全に可能だ。倒して死んだ魔物なら、俺の魔法で回収して収納できる」


 俺自身も、今はまだ普通の攻撃魔法が使えない。

 使える魔法をあれこれ工夫すれば、ある程度までの敵は倒せる自信はあるけれど。


「そうやって訓練して、誰か1人でも火球魔法を身につけたら、安全な場所から少しだけ離れた所にある宝箱を取りに行く。宝箱は木製宝箱タイプのミミックだから、火球魔法一発で倒せるだろう。倒せば人数分の革鎧や魔法杖などが手に入るはずだ。できればここまでを、今日中にやっておきたい」


 これはマルド王国のこの付近からゲームを開始した場合、チュートリアルに使われる場所だ。

 これでスライムやゴブリン程度までの魔物との戦闘で勝てる能力が身につくとともに、最低限の装備が手に入る。


「わかりました。しかし私はまだ攻撃魔法を使ったことがありませんし、シャルは理論はともかくとして、実際に使えるのは日常魔法までです。それでも大丈夫でしょうか」


 問題ない。


「最初は、俺が魔法で倒すのを見ているだけでいい。魔物を倒すところを何度か実際に観察すれば、攻撃魔法の使い方がわかるようになるはずだ」


 もちろんシステムがゲームの『パルティカ』と同じなら、だが。

 ゲームの『パルティカ』は、同じパーティに属する者は、同じ経験値を得ることができる。

 俺とクリスとシャルの3人でパーティを組んでいる今なら、俺1人で魔物を倒したとしても、経験値は平等に入るわけだ。


 そして経験値がある程度貯まれば、レベルアップする。

 このレベルアップで、新しい魔法を覚えるわけだ。


 何故そうなるのかは後ほど、テオトゥラ中央学園の図書館の本で確認できる。

 ① 魔物を倒すことによって、倒した魔物の魔力がその場にいる者に吸収、蓄積される

 ② 蓄積された魔力が一定の量に達することによって、身体がより戦闘に適した状態に進化する

 ③ この進化によって、新たな魔法が使える様になる

 こんな感じで。


 残念ながらレベル表示はないし、ステータスシートなんてものも見えない。

 しかしこの世界の設定はここまで、ゲームの『パルティカ』と酷似している。

 だからきっと、レベルアップもするだろう。

 とりあえず今は、そう考えておこうと思う。


 このレベルアップで、少なくともクリスの方は、攻撃魔法か、戦闘中に使える治療回復魔法を覚えてくれるだろう。

 そうすれば頼れる戦力になる。


 シャルの方も、クリスに魔法を教わっているなら、攻撃魔法を使えるようになるかもしれない。

 でもこちらは、あまり期待しないでおこう。

 最悪でもゲームの『パルティカ』の知識を活用して行動すれば、そう危ないことにはなるまい。


「わかりました。何から何までフォルに頼ってしまいますが、よろしくお願いします」


「問題ない。それに3人いなければ、迷宮(ダンジョン)に入ることができなかった。この作戦が使えるのは、クリスやシャルが一緒に冒険者になって、行動を共にしてくれたからだ」


 これは事実だ。

 E級冒険者は、3人以上でなければ、東側の安全地帯を知っていても迷宮(ダンジョン)に入れてくれない。

 つまり俺1人なら、この方法は使えなかった。


 その場合は東のもっと魔物が強くて多い場所で戦い、経験値を稼ぐことになる。

 迷宮(ダンジョン)経由より危険が伴うし、それなりに疲れる方法だ。

 だから2人のおかげで楽なルートを選択できて、正直なところ感謝している。


 さて、東側の外壁沿いに、大体300m程度歩いた。

 まもなく森が切れ、草地に出るはずだ。


 迷宮(ダンジョン)外から迷宮(ダンジョン)内、また逆に迷宮(ダンジョン)内から迷宮(ダンジョン)外へは、遠見魔法や転移魔法は使用できない。

 しかし迷宮(ダンジョン)内から同じ迷宮(ダンジョン)内ならば、遠見魔法も転移魔法も転送魔法も可能。

 少なくともゲームの『パルティカ』はそうだったなと思いつつ、俺は遠見魔法を発動する。


 遠見魔法は、問題なく発動した。

 あと100m程先で林が切れて、右側が草地となる。

 そして今歩いている小道とその草地との間に、高さ80cmくらいの柵が100m程度立っているのが見えた。


 魔法の効果範囲も、迷宮(ダンジョン)内の地形も、ゲームの『パルティカ』と同様のようだ。

 ならばそこが、この迷宮(ダンジョン)における最初の目的地、チュートリアルで最初に戦闘を行う場所となる。

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