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審判魔法は偽らない  作者: 於田縫紀
第2章 再び王都へ

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第14話 予定変更

「金額はやはり多すぎると思うが、そちらはまた後で話そう。とりあえず質問だ。何故、『冒険者として通用するように鍛えてください』なんだ。特にシャルロットは、まだ身体的に冒険者は厳しいだろう」


 口調こそゲームキャラを意識しているが、内容は俺の本音だ。

 クリスティナは冒険者になっても問題なさそうだ。

 明らかに一般人より魔力を感じるし、それなりに魔法を使えそうだ。

 きっとシャルロットの護衛か家庭教師といったところなのだろう。


 それなら少し鍛えるだけで、ゲーム『パルティカ』で、魔術師を選択したのと同様の成長をする可能性が高い。

 身体も年齢相応に成長しているし、冒険者となっても問題はない気がする。


 しかしシャルロットは、年齢こそ俺と同じくらいだが、大分華奢。

 体力的に厳しそうな気がする。

 魔力も全く魔法を使えない一般人とそう変わらないか、少しだけ上という程度。

 だから魔法を使えるとしても、ごくごく基礎的なものだけだろう。


 そう思ったところで、クリスティナが口を開く。


「この状態ですと、マルド王国はもう長くはないでしょう。家も店もなくなった今、とどまる理由はありません。ですが他国に出るには、それなりの身分が必要です。冒険者という身分なら、どの国だろうと問題なく行くことが出来ます」


 なるほど。

 一般の国民は、国外に出る場合には、国発行の許可証が必要になる。

 しかし冒険者なら、少なくともテオトゥラ教下にある4カ国なら、自由に行き来する事が可能だ。

 4カ国の間で、そういう協定が結ばれているから。


 しかし他国に出て、どうするつもりだろう。


「どの国に出て何をするという、あてはあるのか?」 


「来年の2月までに、ハボロネ聖公国のテオトゥラ中央学園に行くつもりです。シャルロット元々来年入学する予定で、司教の推薦状を持っていました。あの学校ならマルド王国にいるよりは安全ですし、卒業すればそこそこの職にはつけるでしょう」


 なるほど。

 それなら、冒険者になるというのも頷ける。

 ただその場合、問題がひとつ。


「シャルロットはそれでいいだろう。でもクリスティナはどうするんだ」


「私は元々はマルド王国魔道学園の生徒でした。治療魔法が専攻で戦闘には向きませんが、一応は優等生でしたので、テオトゥラ中央学園への編入は出来る筈です。成績証明書も一応取って、持っています」


 なるほど。


「ですがマルド王国はこんな状態ですので、一般国民の出国は認められないでしょう。ですが冒険者証を持つ冒険者なら、協定で他国への出国が出来る筈です。いくらマルド王国でも、他国との協定は無視出来ないでしょう。そのためにも、冒険者になることが必要なのです。しかし私は戦闘経験がありません。一応は風と水の属性のうち、主に治療回復系統の魔法を使えます。しかし学校で習ったり訓練したりした程度で、実戦で攻撃魔法を使ったことはありません。冒険者登録も、まだしていません」


 テオトゥラ中央学園へ行くなら、ちょうどいい。

 俺の最初の計画通りだ。


 そして人数がいるなら、最初の予定と違う方法でC級冒険者を目指すことが可能だ。

 ゲーム『パルティカ』のチュートリアルで使われる方法や、リア充が、VRゲームまで現実(リアル)の友とパーティを組んで攻略する方法を使用して。


 シャルロットはともかく、クリスティナは少し鍛えれば魔法使いとして戦力になるだろう。

 最悪でも回復魔法は使えるから、それなりに便利だ。

 なら冒険者になるという依頼そのものを、断るという選択肢はない。


 しかしその場合、俺としての注文事項がある。

 ということで、クリスティナに頷きつつ、こう言ってみる。


「わかった。なら逆に、俺からも頼みがある」


「何でしょうか?」


「まずは確認だ。シルケンゾーの街には、カリミナス迷宮(ダンジョン)がある。ならシルケンゾーの街を目指す理由は、迷宮(ダンジョン)で第4階層まで行って、D級冒険者と認定してもらうという意味だろう。E級は見習い扱いで国外移動可能な協定外の扱いだからな。違うか?」


『パルティカ』の世界では、どの迷宮(ダンジョン)も、同じ階層なら概ね同じ程度の難易度だ。

 なおかつ、どの迷宮(ダンジョン)の第何階層まで到達できたかは、魔法や魔道具で確認が可能。

 だから迷宮(ダンジョン)の到達階層は、冒険者の強さを図る尺度としても使われている。


 パーティの人数が3名から7名の標準パーティの場合、

 ① 全員がE級冒険者の場合、第4階層まで到達できてば、パーティ全員がD級冒険者と認定され、

 ② 全員がD級冒険者以下の場合、第10階層まで到達できてば、パーティ全員がC級冒険者と認定される。


 なおC級より下の級の冒険者は、2人以下では迷宮(ダンジョン)に入れない。

 危険ということで、入口で入出場を管理している冒険者ギルドの担当者に追い返されてしたう。

 だから単独行を予定していた頃は、別ルートでの攻略を考えていたわけだ。

  

 クリスティナは頷いた。


「ええ、そうやって迷宮(ダンジョン)第4階層を目指すのが、国外に移動可能な最短で確実なルートだと考えていました。その程度なら、私がある程度攻撃魔法を使える様になれば難しくないでしょうから。

 それで頼みとは、何でしょうか?」


「俺もテオトゥラ中央学園を目指すつもりだった。しかし推薦や指定教育機関の成績証明書がない者が入学するには、学力、知識、技能が入校水準に達していることを証明する公的証明が必要だ。一番手っ取り早いのは冒険者C級だろう。そして冒険者が3人いれば迷宮(ダンジョン)に入っての攻略が可能だ。そこで第10階層に到達できれば、C級冒険者に認定してもらえる。だから俺とパーティを組んで、第10階層到達を目指してほしい」


 クリスティナが訝しげな顔をして、俺を見た。


「前に『テオトゥラ正教会の存在を嫌ってもいる』と伺いました。それなのに何故、テオトゥラ中央学園を目指すのでしょうか」


「必要と思われる知識と魔法全般を身につける為には、もっとも適した場所だからだ。テオトゥラ教側の四カ国の中では」


 クリスティナは頷いた。


「確かに四カ国の中では、もっとも進んだ知識が学べる場所でしょう。それに貴族や多額の寄付金を積まなければ入れないマルド王国の王立学園よりは、入りやすい場所です。実力がある者ならば、ですけれど」


 納得したようだ。

 と思ったら、更に話が続く。


「ですが第10階層まで行くのは、かなり難かしいと聞いています。何年も迷宮(ダンジョン)に入っている冒険者でも、第7階層より先に進める者は多くないとも。私たちを連れて、そんなことが出来るのでしょうか」


 そのとおりだ。

 しかしゲームの『パルティカ』と同じなら、攻略法が使える。

 短期間でレベルを上げられて装備も整えられる、リスクの少ない攻略法が。

 

 当初の予定でこの方法を考慮しなかったのは、パーティが組めないだろうと想定していたからだ。

 俺は対人能力がいまひとつだし、知らないところで冒険者なんて荒っぽそうな人間と仲間になるなんてのは無理そうだから。


 しかし3人以上のパーティを組めるという条件ならば、迷宮(ダンジョン)攻略がC級冒険者になる最短ルートとなる。

 だから俺は、クリスティナとシャルロットにこう告げる。


「問題ない。確かに普通の方法で迷宮(ダンジョン)の第10階層にたどり着くのは難しいだろう。しかしカリミナス迷宮(ダンジョン)を含む幾つかの迷宮(ダンジョン)について、俺はある程度知っている。任せてくれれば、2週間以内に第10階層まで到達して、C級冒険者になれることを約束する」


 何故そんなことを知っているか、疑問に思われるかもしれない。

 疑問ならいいが、転移魔法が使えることをはじめとした、俺の不審点と結びつけてあれこれ探られると面倒だ。


 しかし今までのクリスティナの様子から考えれば、大丈夫な気がする。

 それにC級冒険者になれる最短に近い攻略を使えるのだ。

 俺としては、この機会を逃すわけにはいかない。

 なんて考えながら、更に説明というか、勧誘を付け加える。


「だから俺と冒険者となって、パーティを組んでほしい。俺も冒険者登録をしたことがないから、E級からのスタートとなる。あと短期間で戦闘能力を上げるから、それなりに厳しい活動と感じるかもしれない。

 それでいいなら、一緒に活動してほしい。同じパーティの仲間だから、依頼金はいらない」

 

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