第13話 依頼
3回目の転移魔法で、軽い頭痛を感じる様になった。
これは俺の魔力の残りが限界に近いという意味だろう。
考えてみれば、今日だけで7回、転移魔法を使っている。
そのうち5回は、2人を連れての状態だ。
よくも魔力が持ったものだと思う。
それでもラルゾロ村の手前500mまでは近づけたので、あとは歩いて村門を通過。
無事宿へとたどり着き、俺の部屋と2人の部屋を取ったところで。
「すみません。今後の話がありますので、私達の部屋に来ていただいていいですか?」
クリスティナから、そんな言葉が出た。
もちろん性なる夜のお誘いじゃない。
それはわかっているけれど、女子が泊まっているホテルの部屋なんてのに行くのは、どうしてもシチュエーション的にどきどきとする。
考え過ぎなのはわかっているし、何なら童貞をこじらせているというのも事実だけれど、仕方ない。
なにせ家では基本的にテレビもネットも禁止。
それでもネットは、文字中心のサイトなら授業用タブレットを使って見ることが出来た。
メジャーな動画サイトやショート動画のサイトはアクセス禁止になっていて、見ることが出来なかったけれど。
結果、小中学校では周りの皆さんと話があわず、ぼっち確定。
そのせいで対人能力がボロボロになった結果、高校でもほぼぼっち。
だから大学デビューを飾ろうとしたのだけれど……
いや、今はそういう過去の悲しい事実と向き合うべき時ではない。
クリスティナに返答する場面だ。
「わかった。このまま行く形でいいか」
「ええ、お願いします」
ということで、フロントというか受付と食堂がある1階から、階段を登って2階、そして2人が借りた3号室へ。
ベッドが2つ、他には小テーブルと椅子2脚だけという簡素な部屋だ。
「そちらの椅子に座ってください。それなりに長い話になると思いますから」
何だろう。
でも女子の部屋だから、やっぱりベッドに座るのはまずいよな。
なんて考えつつ座って、クリスティナの目……は恥ずかしいから、口元に視線を向ける。
クリスティナとシャルロットが、何故か俺の真正面に立った。
何だ何だ、何なんだ。
そう思ったところで、2人とも俺に向かって深く頭を下げる。
「フォルティさん。ここまで本当にありがとうございました。あそこで救っていただかなかったら、おそらく奴隷として売られて、そのまま人生が終わっていたでしょう」
まあ、それはそうかなと思う。
でも実は、そう頭を下げられるほどのことじゃない。
「サタナテスを襲撃した際、たまたま確保しただけだ。大したことじゃない」
「しかしその後、わざわざ街の中に家の様子を見に連れて行ってくれたり、ここまで送っていただいたりしています。この状況なのでつい甘えてしまいましたが、本来なら冒険者ギルドなどでかなりお金を積んで指名依頼をするべき事案です」
確かに転移魔法というか、空属性魔法全般は、『パルティカ』では希少な魔法だ。
今の俺の場合は逆で、審判魔法と空属性魔法以外は、大した魔法は使えないのだけれど。
だからまあ、これも大したことじゃない。
「気にしないでいい。単になりゆきだ」
「それでフォルティさんにお聞きしたいのですが、この後に何か行かなければならない場所とか、やらなければならない予定などは入っていますでしょうか?」
何故そんなことを聞くのだろう。
わからないけれど、とりあえず正直に返答しておこう。
「特に無い。ただ身分証がないから、冒険者として登録しようとは思っている」
「ならお願いというか、依頼があります。私とシャルロットを、冒険者として通用するように鍛えてください。依頼ですので、お金は支払います」
シャルロットが頷いて、ポシェットに手を入れる。
次の瞬間、テーブル上に金貨、銀貨を小分けにした袋が出現する。
ちょっと待て、これは……
「多すぎる。さっき店の金庫から出した、ほとんど全額だろう」
貧乏性なので、先程金庫から出したものは、大体覚えている。
少なくとも金貨と銀貨の袋は、同じ数だ。
なお金貨は10枚単位、銀貨は50枚単位で袋にわけているようだ。
だから袋の数が同じなら、金額もきっと同じだろう。
「3ヶ月程度生活出来るお金は、店の他の場所から確保しています。それにこのお金は、フォルティさんの魔法がなければ確保出来ませんでした。ですからフォルティさんへの依頼に全額使っても、問題ありません。私たちだけでは手に入らなかったお金ですから。
今まで助けていただいた分を考えると、これでも少ないかもしれません。ですがこれが、私たちが現在出せる最高額なんです」
なるほど。
しかし、俺としては多すぎる。
そうでなくとも2人は身寄りがない状態なのだ。
蓄えは少しでもあった方がいい。
それに何故『冒険者として通用するように鍛えてください』なのだろう。
ここは聞いてみた方がいい。




