第12話 脱出 (2)
偵察魔法で外の様子を見てみる。
巡回している騎士団員は、どうやら金や貴金属、そして食料品を中心に物色している様だ。
それも各騎士個人による窃盗ではなく、組織的にやっている模様。
ゲーム上では高価で、一介の騎士では購入できなさそうな自在収納袋を、共用で使っているところから見ると。
そういえばクリスティナが言っていた。
騎士団が『徴発以外で王宮から出てこない』と。
ならきっとこの火事場泥棒も、マルド王国にとっては徴発とか徴税みたいなものなのかもしれない。
経済が弱くなり税収が落ちて、自分の首を締めるようなものだと思うのだが。
やっぱりマルド王国、終わっている。
そう思ったところで、背後から声がした。
「フォルティさん、すみません。こちらで手伝っていただいていいですか」
何だろう。
「わかった。今行く」
危険察知魔法があるし、確認できる騎士団員には魔法を持っていそうなやつはいない。
だからここで見張っていなくても、問題はないだろう。
立ち上がって、そして奥へ。
戸棚が並んでいる部屋の奥の頑丈そうな鉄扉を通った先にある、頑丈そうな鉄製の大型金庫の前で、2人が待っていた。
「この中にお金や貴金属類が入っています。ですが魔法的に封鎖していて、開けることが出来ません。ですがフォルティさんの魔法なら、直接中の物を取り出すことが可能でしょう。お願いします」
「わかった。やってみる」
空属性魔法は、一般的ではない魔法のはずだ。
セヌテラは使えたが、他に使えるキャラクターはごくごく少なかったと覚えている。
だからこの金庫も、空属性魔法に対する対策はしていないだろう。
見た感じでも、魔法や魔術は開閉部分にしかかかっていない様だし。
遠見魔法の応用で、金庫の中を見てみる。
金貨や銀貨、更には書類等が見えた。
こうやって見えるなら、転送魔法も使えるはずだ。
転送場所は、部屋の中央にあるテーブル上でいいだろう。
ということで、金庫の中に見えるもの全部を対象に、転送魔法を発動。
テーブル上に金貨、銀貨を小分けにした袋や書類等が出現する。
「これで全部だ」
「ありがとうございます。それでは持って行きましょう」
シャルロットはクリスティナの言葉にうなずくと、ウエストポーチっぽい入れ物に、金貨袋や銀貨袋を詰め込みはじめた。
結構な量を入れてもポーチが膨れ上がらないのを見ると、あのウエストポーチは自在収納袋としての機能を持っているようだ。
そういえば、さっきまでシャルロットはあのウエストポーチをつけていなかった。
きっとあれは、この家にあったものなのだろう。
重いものや重要なものを運ぶ時などに使うための、身につける運搬具として。
一方、クリスティナは書類の確認をしている様だ。
かなり早い速度でめくって、何枚かの書類を抜き出し、シャルロットに渡してウエストポーチに収納させている。
だいたい3分程度で、作業が終わった。
「ありがとうございました。それでは街の外へお願いします。出来れば西側の方がいいです」
西側だと、先程逃げたのと反対側になる。
東側に比べると開発が進んでいて街も多く、豊かだけれど魔物や魔獣が東側に比べて少ない。
つまり冒険者として稼ぐなら、基本的には東側より向いていない。
でも目的地であるハボロネ聖公国のテオトゥラ中央学園は、西方向だ。
それに西側でも魔物や魔獣が出ないわけではないし、迷宮なんてものもある。
それにゲームで元マルド王国が初期スタート地点となった場合は、西に進むのが一般的なルートだった。
東は魔物や魔獣が強力だから。
だから西でも、あまり問題ない。
拠点に使えそうな街や村も、ある程度は覚えている。
「わかった。何ならどこかの街か村の宿まで行くか。こんな状況だから、まずは宿かどこかで落ち着いて考えた方がいい。方針が決まるまではつきあおう。とりあえず、希望があればそこへ向かう」
何もなければ、ラルゾロ村あたりが無難だろう。
トラルテスコから街道沿いに西に20km程行ったところにある、小さな村だ。
街道沿いだから、まともな宿がある。
「ありがとうございます。では当座は、シルケンゾーの街を目指して進みたいと思います」
予想外の街の名前が出てきた。
いや、ゲームでは重要な場所なので、俺もよく知っている。
知っているからこそ思うのだ。
この2人には似合わない街だと。
でも事情を聞くのは、後でいい。
とりあえずここを移動するほうが先だ。
「わかった。ただシルケンゾーは1回で移動するには遠い。今日は途中のラルゾロ村に泊まって、明日着く形でいいか?」
「ありがとうございます。お願いします」
「わかった。とりあえずラルゾロ村の手前まで移動する。3回連続で転移魔法を使用するから、その間は目を閉じていてくれ」
「わかりました」
シャルロットも頷いたのを確認して、俺は転移魔法を発動する。




