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審判魔法は偽らない  作者: 於田縫紀
第2章 再び王都へ

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第11話 シャルロットの家

 転移魔法で出たのは、日本ならコンビニくらいの大きさの店内。

 店の内部そのものは、日本の宝石店とか時計店とかと似ている。

 ガラス製のショーケースがあって、中に商品が並ぶという構成だ。


 内装はきっと、高級感を感じる造りだったのだろう。

 しかし今は、荒れている状態だ。

 ガラスのショーケースの幾つかが壊され、中の商品が持ち去られているから。

 なお人の気配や魔力は、少なくともこの建物の中からは感じない。


「国王が、この付近の住民千人あまりを殺害したというのは、本当でしょうか?」


 クリスティナの問いに、どう返答しようかと考える。

 クリスティナもシャルロットも、先程セヌテラを倒した際、判決魔法の発動と、判決伝達を聞かれてしまった。

 だからこの国王の件も、俺の仕業だとバレるかもしれない。


 それでも2人にとっては、何が起きたのかを把握するのは重要だろう。

 それにここで上手くごまかせるかというと……

 そんな自信も、ごまかす為の台詞も思い浮かばない。

 だから俺は、事実の一部だけを正しく伝えることにする。


「ああ。『国王と大司教が私欲のため、付近の町人や衛士合計1,024人の魔力を代償に神の勇者を召喚した。しかし勇者にそのことを看破され、処分された』という内容だ」


 あと、これも付け加えておこう。


「『この内容は、国民と現に国内にいる者全員を対象に伝達する』とも聞いた。時間はだいたい1時間くらい前。クリスティナやシャルロットが知らなかったのは、時間停止魔法をかけられていたからだろう」


「わかりました。ありがとうございます」


『おまえが勇者だろう』とか言われなくて、とりあえずほっとする。

 言わないだけで、気づかれたり推測されたりしている可能性は否定できないけれど。


 さて、シャルロットが店の端の棚から、ノートらしいものを取り出した。

 取り出して後ろからページを確認している様だけれど、何をしているのだろう。


 そう思ったところで、シャルロットの手が止まった。

 表情がこわばっているというか、無という感じになっている。


「シャル、どうしたの!」


「みんな、騎士団に連れて行かれてる。お父様もお母様もおじいさまもおばあさまも、シュナさんもメディトさんも」


 やっぱり抑揚がないというか、感情を感じない声だ。

 確かに今まで彼女は口数が少なかったけれど、こんな感じではなかった。


「これは少しでも何かあった時に、父がメモするノート。これを見ると、今日の9時に、騎士団が王命だ、全員出ろと言ってきたと書いてある。だからきっと皆、死んでる」


 どうするべきだろう、俺は。

 上手く慰める様な言葉は、思い浮かばない。


 考えてみればマルド王国、ずいぶんと酷い国だと思う。

 普通に生活している人々をいきなり連行して殺して、店を荒らすなんて。

 少なくとも21世紀初頭の日本の感覚では、信じられない。


 でもこれが、今の俺の現実だ。

 なら、ここに2人を残して、俺はゲームの『パルティカ』の知識を元にした攻略を進めるのが正しい。

 もともとこの2人に付き合う義理は、俺にはない。

 犯罪組織(サタナテス)から救っただけで、充分だ。


 ただ、今の俺は、そう言い切ることが出来ない。

 となると……

 とりあえず、こんな台詞ではどうだろうか。


「まだここは、騎士団の封鎖範囲内で危険だ。とりあえず必要なものを持って移動した方がいい。何ならある程度の荷物は持てるし、一息入れられるくらいになるまでは付き合おう」


「ありがとうございます。シャル、とりあえず最小限の物を持って、ここから逃げましょう。ここはシャルの家だけれど、今は安全じゃないわ」


「……わかった」


「なら用意が出来るまで、ここで騎士団が来ないように見張っている。魔法使いでなければ問題はないと思うが、出来るだけ早めに準備してくれ」


 審判魔法を使わなくても、通常の騎士団員程度なら問題ない。

 転移魔法で遠くに飛ばしてしまえばいいだけだ。


「ありがとうございます。それじゃシャル」


「わかった」


 2人はそれぞれ店の奥へと入っていくのを確認した後、俺はカウンター部分にあった椅子に腰掛け、遠視魔法で周囲を確認する。


 規制を張られているのは、この店がある通りに面した2つのブロックと、その東側に広がる共同市場、そして北側2ブロックと、俺が召喚された中央教会。

 各道路に配置して中に入れないようにしている他、街の中を騎士3~4名で巡回している様だ。


 なおこの場合の巡回とは、店舗荒らし。

 店内に入って金が入ってそうな場所を物色し、また気に入った商品を分捕るという行為だ。

 何というか、本当にマルド王(この)国、終わっている。

 王と騎士団と犯罪組織(サタナテス)が酷すぎるだけで、普段暮らしている国民はここまで酷くはないだろうと思うけれど。


 ゲームの『パルティカ』では既にこの国は滅びていた。

 他国も攻め入らないような辺境に、自主警備している村や町が幾つか残っていた程度。


 ゲームの歴史にあった『勇者を召喚してツォルティグ国へ侵攻する』企みは、失敗した。

 だからしばらくはマルド王(この)国も大丈夫かもしれない。

 そう思っていたのだけれど、これでは先は無さそうだ。

 国王だけでなく、騎士団がここまで腐っているところを見ると。

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