第九話「またもやピンチ!?」
「さあさあ!少年少女達よ....今日もとっておきの"お話"を聞きたくはないかね...?」
公園のベンチでいつものように語り始めるのは皆様ご存知、佐圓乃子だった。
だが、佐圓はいつにも増して満足そうで、かつ自身に満ち溢れた顔をしていた。
「今日話すのはだね....」
佐圓はぞろぞろと集まってくる子供達を横目にひとしきり集まるまでゆっくりと、じっくりと言葉を溜める。
そして、その子供たちの中で当たり前かの如く出来詩子も地面に直接お尻を着けて三角座りの体制を取っていた。
周りの子供達が集まった頃合いを見て話を切り出す。
「今日は"あみだくじ"についてのお話をしよう...。」
そう言うと佐圓は地面へとおもむろに指で縦線を8本書いた。
「この縦線に横線を書いて当たりを引くというのが"あみだくじ"というものだが、このゲームに勝ちやすくなる方法があるのは知っていたかね?」
そう、佐圓は子供達が絶対に知りたくなるであろう雑学を手に入れてしまったのだ。
故に今日は必勝パターン!
子供達は佐圓の言葉を理解するや否や口々に言葉を交わす。
「しりた~い!!」
「ぼくは、一回も当たったことないからなぁ...」
「使えそうな話だ~!!」
「佐圓さん!それは私も知りたいです!」
「ただの運ゲーじゃないの~?」
佐圓はその子供たちの声を聴いてふふふと不敵に笑う。
「このゲームで当たりを引きたいとなった時はどこを選ぶのが正解だと思う?」
更に子供達は口々に言葉を投げかける。
「横線の数によるでしょ~!」
「運ゲーだし!どこも変わらないよ!」
「一番端とか~?」
その言葉を聞き、佐圓は内心『勝ったッ!だが、まだドヤるな...』と唱えていた。
「ふはは....君たちは間違っている...このゲームは運ではなく数学....。当たりの真上を選ぶのが正解なのだよ....。」
"運ではなく数学"、"当たりの真上"という言葉に一同の頭にハテナが浮かぶ。
「簡単な話さ、これには"ランダムウォーク"という考え方があってだね。これは右か左かをランダムに動くとき、最終的にどこにいるかという考え方で、簡単に言うと右と左どちらも行こうとするが最終的に回数をこなすと右と左の数に相殺されて真ん中に戻ってくるって言ったらわかりやすいかな?この考え方をあみだくじに適応した時....みんなが悪意を持っていじわるなあみだくじを作らない限り、完全にランダムで行った場合...当たりの真上の線を選んだ時に確率としてはその線に戻ってくる確率が高くなるっていう事だ。特に、4人でやるとき、普通なら1/4となり25%の確率で当たる計算となるが、1人1~2本の横線を入れるという想定で考えた時、真上を選んだ時には約30%〜35%にまで跳ね上がるんだ!数値がわからないなら、とにかく一番真上の線を選べば当たりやすくなると考えればいいのだよ!!」
ひとしきり話し終えて、呼吸を整えながらも天を仰ぎ、両手を広げる。
もはや、ドヤ顔の領域を超えたのである....。
だが、その話の効果は絶大だった、子供たちの興味を引き、歓喜を煽る。
うおぉぉ!!
「ってことは、学校の役決めの時もこれで狙える!」
「これ使ってお小遣い増やす!」
「やってみよ~!!」
「ちょっと早口で何言ってるのかわからなかった~」
各々が興味津々となり、地面へと指や枝であみだくじを作成し始める。
皆が確率の凄味を実感し、佐圓に尊敬のまなざしを向け......る.....。
「え~...当たんな~い。」
「こっちも~」
「なにこれ~」
「結局、運ゲーじゃね~?」
子供の熱は冷めるのが早い。
「もう帰ろうぜ~」
「そうだな~最近空き巣とかいるらしいし早く帰らないと~」
「私も~ママに早く帰ってきてって言われてた~!」
皆が実感していたのは確率の壁で、佐圓に向けられた視線は尊敬とは程遠いものだった...。
佐圓はその光景に血の気が引いていく。
「い、いや、待つんだ少年達よ、あの、えっと、あれだ、私がやった時はめちゃくちゃ当たって....で、数十回とかやれば解りやすくなって....その...。」
公園に残ったのは、寂しい背中をした成人女性と、それに憐みの目を向けた成人女性の2人のみだった...。
「やめてよ出来さん!私にそんなに憐れんだ目をしないで!!」
出来は佐圓に近づいて方をぽんっと叩く。
「なんか、私も雑学手伝うので次は頑張りましょう。ね?」
そうやって佐圓の心はどんどんと削られて行くのであった....。
佐圓さんはもう少し子供の気持ちになって考えてみては...?




