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第三話「腰痛」

 あれから佐圓は警察からパトカー内にて事情聴取を受けていた....。


「えっと...。改めて、○×交番の塚間(つかま)です。先ほど、近所の方から『公園で子供たち相手に叫んでいる人がいる』って通報がありまして....。何をしていたとかお聞きしてもよろしいですか?」


 佐圓の額には冷や汗と、腰から来る痛みでの油汗でまみれていた。


「あ、えっと...。そのぉ...。」


 その絞り出された声は弱々しく、先ほどまでの勢いとは程遠いものだった。


「.....。」 


 塚間は無言の圧力をかける。


「その....。ざ、雑学を...。」


 その小さく弱々しい声に塚間は「すみません、もう少し大きな声でお願いします。」と淡泊に言い放つ。


「ざ、雑学を子供達に披露していたら、ギックリ腰をやってしまった...っていうか、なんて言うか...。」


 佐圓の顔はしっかりとゆでられたタコのように赤く、とれたてのサンマのように脂がのっていた。

 その隣で説明を聞いていた塚間は困惑の表情をしていた。


「は、はぁ....。と、とにかくあまりご近所の迷惑にならないようにお願いしますね。今回は大丈夫でしたが、子供に危害が及ぶなどがあればこちらとしては連行せざる負えなくなりますので...。」


 運転席にいた塚間の相棒と思わしき警察も呆れた顔をしていた。


「とにかく、腰をやってしまってるんですよね、このままパトカーで近くの病院まで連れて行ってあげますので、次からは無いようにお願いしますよ。」


 佐圓は塚間の顔も、窓の外すら見ることが出来なかった....。


「はい....。ごめんなさい...。」


 そうして、佐圓は無事病院へ行き治療することとなった――。


 ~次の日~


「お、おはようございます...。」


 佐圓は腰にコルセットを巻き、腰を少し曲げた状態で会社へ出勤することとなった。

 

「おはようございます、先輩。どうしたんですか?その腰...。」


 佐圓に対して"先輩"と言い挨拶をするこの女。

 24歳、佐圓と同じ部署に所属している出来詩子(できしこ)

 仕事ができる彼女は期待の新人と呼ばれている。


「で、出来さん...。えっと。ちょっとギックリ腰やっちゃって...。」


 出来は「ふーんそーなんですねー」といった様子で気にしていないようだった。


「先輩、ところでなんですけど、昨日の夕方ぐらいに先輩がパトカーに乗ってたところ見たんですけど、何かあったんですかー?」


 !?!?!


『なんで!?見られてたの!?ま...まずい...「子供に雑学披露してたら調子乗って腰やってそこを通報された~」なんて言えるわけないじゃん!』


 そう、言えるわけないのだ、そんなこと...。

 会社にバレたらクビは無いかもしれないが、社会的にここに居ることが難しくなる!

 佐圓が考えに考え絞り出された一つの答え....。それはッ!!


「わ、私じゃないと思うよー?だって昨日の夕方は腰やって病院へ言ってたしー?」


 苦しい言い訳ッ!!!


「へーそーなんですねー。まぁ、腰、お大事になさってくださいー。」


 意外と出来の反応は薄かった。


『あっぶね~...。ギリギリバレ...てないよ..ね...。』


 そうして、いつも通りの一日を過ごす佐圓っだったのだった....。

 

 ~夕方~


「少年少女よ....。今日もとっておきの"話"を持って来てやったぞ....。」


 懲りていないようだった。


「わ~!!昨日の面白かった~!!」

「おねーさん昨日パトカー乗っててずるい~!」

「トウモロコシ数えたけど、ペア一つ余っちゃったんだけど...。」

「今日はどんな"話"??」


 昨日の影響で子供達の期待値は最大級に達していた。


「っていうかおねーさん腰に何巻いてるの~?」


 一人の子供が佐圓のコルセットを指差し疑問を飛ばす。


「こ、これはあれだよ、ふ、ファッションだよ。知らないかい?パリコレって言う海外でも有名な洋服のお祭みたいなのがあるのだが、そこではこう言った最新のファッションを紹介しているのだよ。」


 ※適当なことを言ってます


「私知ってるよ~!パリコレ!外国のせれぶ?とかがおしゃれしてらんうぇい?を歩くんだよね~!」


 佐圓は『ずいぶん物知りな子供もいたもんだな...。』と思った。


「そ、その通りさ。君たちには理解しえないものだろうが、それは子供だからだ....。このファッションの良さがわかった時には大人になったってことだ...。」


 子供達は「へ~」と少しずつ興味が薄れてきているようだった。


「こほん、それでは少年達よ本題に入ろう...。今日持って来た話は君たちのお父さんお母さんに教えると喜ばれる話だ。」

 

 子供達は"お父さんお母さんのためになる"と聞いて、聞き耳を立てた。


「よく聞いて覚えて帰るんだぞ。"腰痛はストレスや習慣で引きおこる"だ。」


 子供達の頭には大きなはてなが浮かんでいた。

 

「君たちはまだわからなくていいんだ...。だが、今は4人に1人が腰痛持ちだという事実と、その内の8割ほどがあまり原因がわからないものが多いのだよ。 改善するにはストレスを少しでも減らすことと、習慣の改善をすること....。 後はポケットに財布を入れるなどの些細な腰への負担も蓄積されるから、出来るだけ腰をいたわって過ごすことが大切なのだよ....。」


 雑学...。なのか...?

 実は、佐圓は病院の先生に言われたことをそのまま言っているだけなのだ。

 腰を痛めてしまい、雑学を調べている余裕が無かった....。


「へーよくわかんない」

「おかーさんに話してみる~」

「昨日テレビで同じことやってたー」


 期待値を超えてこなかった佐圓の話にシラケてしまった子供達はぞろぞろとその場を離れていく。


「あ、えっと...。まって...。」


 佐圓の声は誰に届くこともなく、公園に残ったのはベンチに座り込んだ27歳の冴えない成人女性だけだった...。


 一方...。うなだれる佐圓を遠くから見つめる一つの人影があった....。


「先輩....。怪しいと思ったら子供相手に何を言ってるんだろ...。」


 その人影は一体いつから...?

 そして、会社の後輩、出来詩子に見られてしまった事実....。


 どうなる佐圓!どうする佐圓ッ!!

見られたくないもの見られた時って一番冷や汗かくよね。

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