80話 王都にて 01
遅くなり申し訳ございません。
澄み切った空に日が落ち、星が目立ち始めた頃、ケンたちはようやく公都に到着した。
予定よりも遅くなったのは、今日の護衛をパッツア率いるシルバー・ウィングスだけで行ったからだ。
パッツアがケンに弟子入りして一週間。
ケンはパッツアだけではなく、シルバー・ウィングスのメンバーにも冒険者としての心得を教えていた。
そして公都に到着する予定だった今日は、その集大成としてシルバー・ウィングスだけで護衛を行うよう命じていた。
しかし、運が良かったというか、運が悪かったというか、この日は何も起きなかった。
何事もなく街道を進み、ようやく公都の城壁が見えてくる。
公都が見えたことで、シルバー・ウィングスの面々はホッと息を吐き、緊張の糸が緩んだ。
そんなタイミングでやって来るのが魔物だった。
もちろん、ケンはすでに気付いていた。
だが「任せる」と言った以上、最後まで手を出すつもりはなかった。
ケンは馬車内に結界魔法を掛け、ブイヨン夫妻とバルガスにだけ魔物の存在を知らせた。
さらに運が悪いことに、現れたホーンディアは角で石を引っ掛け、その石を馬車へとぶつけてきたのだった。
中にいるブイヨン夫妻とバルガスはもちろん無事だった。
しかし、石が直撃したことで馬車の車輪が壊れてしまった。
その後、シルバー・ウィングスの面々はバルガスから説教を受けることになった。
ケンは近くに生えていた木を伐り、魔法で乾燥させると、それを使って車輪を応急処置した。
そんなことをしているうちに時間を使ってしまい、公都への到着が遅くなったのだった。
「全く……よく言うだろ。帰るまでが遠足! って」
「遠足? 師匠、それは何ですか?」
「いや、何でもない……。要するに、家が見えても家に着くまで油断するなってことだよ」
「すいません。肝に銘じます」
そんな話をケンとパッツアがしながら公都の門をくぐる。
すると、一人の商人らしき男が馬車へと近付いてきた。
「こちら、ブイヨン子爵様の馬車ですか?」
「はい、そうですけど」
商人らしき男は背が低く、髭を生やした中年男性だった。
ドワーフという種族だろうとケンは思った。
しかし、公都に到着したばかりで興奮していると思われるのも恥ずかしい。
「ド、ドワーフですか!?」
などと聞くのもどうかと思い、黙っていた。
「ああ、よかった。それではケン様はいらっしゃいますか?」
「はい、俺ですけど」
ケンがそう答えると、バルガスが馬車の中から飛び出してきた。
「ちょっと待った! お前、ジャンだな!」
「おや、これはバルガス殿。そういえば、あなたも来ていたのですね」
「来ていたのですね、じゃねーよ! ケンは冒険者ギルドの預かりだからな。今回は商業ギルドには関係ないことだ。ハワードから話が来てるだろ!」
後からバルガスに聞いた話だと、この男はジャンという商業ギルドの副ギルドマスターを務めるドワーフとのことだった。
根っからの商人で、ギルドの利益になるのなら何時間でも粘り、必ず情報を聞き出す男らしい。
街灯のことについても、コトコト村の商業ギルドマスターであるハワードに何度も手紙を送り、情報を聞き出そうとしていた。
しかし、ブイヨン子爵から止められていたため、ハワードから何の音沙汰もない。
そこでハワードから聞き出すことを諦め、今度はケンに直接交渉するためにやって来たのだという。
「とにかく、魔道具の秘匿なんて当たり前だろ! これ以上何かあったら、子爵様に言って君主様に話が行くぞ!」
「ちっ、今回は諦めるが、儂は諦めんからな!」
ジャンはそう言い残すと、渋々その場を去っていった。
「ケン、気を付けろよ。奴はどこで接触してこようとするか分からんからな」
「はぁ……やっぱりドワーフって『儂』って言うんですね」
「そこじゃないだろ!」
こうしてケンは、ブイヨン子爵が公都に所有する屋敷へ泊まることになったのでした。
突然ですが後2,3話で最終回になります。
残り少ないですがよろしくお願いします。




