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美容師パパは魔道具担当、料理人ママは飯担当、娘は赤点担当の勇者です  ~異世界の隅っこで、家族スローライフ始めました~   作者: antomopapa


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73話 家と村の説明 1

『どうぞ、上がって下さい』


 ケンがオーク族のパクとモグを家に招き入れる。


『靴は……履いてないね。後で靴も買いに行こう。取り敢えず足を拭こうか、ちょっと待ってて』


 ケンが奥から絞ったタオルを持って来て、二人の足を拭いてもらう。


『人族の家は、オーク達のテントをもっと大きくして、固くしたものだと思ってください。木と、土を固めたレンガと呼ばれる石で出来ていて、風でも雨でも壊れません』


『テントを固くしたもの……』


『ええ。そして、うちの家は少し変わっていて――テントを“上に重ねた”ような作りになっていますね』


『テントを積み重ねているの!? そんなことをしたら潰れるんじゃ!? 地面はどうなるんだ?!』


『潰れないように柱や壁でしっかり支えてあるんです。実際に見てもらった方が早いですね』


『あ、ああ……』


『下の階は仕事をする場所や物を置く場所、上の階はご飯を食べる場所や寝る場所、風呂、トイレなど生活する場所に分かれています。それぞれの場所を「部屋」と呼んでいて、それら全部をまとめて「家」と呼ぶんだよ』


『場所ごとに分かれているんですか……』


『ああ。それじゃあ、この「階段」と呼ぶもので上に上がりますよ』


『階段? 歩いたら落ちたりしないのでしょうか?』


『木で丈夫に作ってあるから大丈夫ですよ。俺が先に上がるので、付いて来てください』


 ケンはオーク族の住居を思い出す。


 獣の皮で作ったテントは、移動こそしないが遊牧民のような生活だ。部屋も分かれていないし、もちろん二階もない。


 これからのコトコト村での生活は、彼らにとって常識外れのものになるだろう。


 だが逆に言えば、この生活を覚え、オークの村に持ち帰ることが出来れば、生活水準を大きく変える革新にもなる。


 モグはまだ幼く好奇心旺盛なのか、ケンの後ろをスタスタと付いて行くが、パクは慎重に一歩一歩確かめるように上がっていく。


 それを見守ってから、サオリとリナも階段を上がる。


 ケンは階段を上がってすぐのリビングに、パクとモグを通した。


『ここはリビングダイニングキッチンと言って、みんなが集まって話をしたりする場所と、ご飯を作る場所、ご飯を食べる場所ですよ。ここだけ見れば、オーク族の家と同じ感じですね』


『確かに同じなんですが、綺麗ですね。足を拭くのも分かります』


『ええ、そうですよ。人族は家の中に汚れを入れないように、「靴」と言って足を保護する物を履いています。家に入ると靴を脱いで生活しますね』


『もうお昼過ぎだし、急いでご飯作るわね』


『ママ、私も手伝うよ』


『フフ、早速お姉ちゃんっぽいわね』


『それじゃあ俺は、ご飯を作ってる間に二人に部屋の案内をしておくよ』


 三好家の家は、通りを正面に見て右側がサオリの営業するお店「キッチン・サオリ」、左側がケンの営業するお店「ヘアーサロン&マジックアイテム・ケン」だ。


 サオリの店はケンの店の三倍ほどの広さがあり、ケンの店の裏は倉庫になっている。


 ケンの店とサオリの店の間に玄関があり、玄関に入ってすぐに二階へ上がる階段と倉庫、サオリの店へ続く通路がある。


 二階に上がるとリビングダイニングキッチンがあり、ケンの店の上側にキッチン、その奥に風呂が設置されている。反対側のサオリの店側には全員の寝室が作られていた。


『この部屋が君たちの部屋だよ』


『ここが私たちの部屋……』


『凄~い! 綺麗だね、お母さん!』


『ええ、本当に綺麗ね。こんなに立派な部屋に住んでもいいのでしょうか?』


『もちろん。これからは家族と思って住んでください』


『ケンさん、この白いのは何?』


『この白いのかい? これはベッドと言って、この上で寝るんだよ。ちょっと寝てみるかい?』


『いいの!? うん、寝てみる! ……凄いよお母さん、ふかふかしててあったかいよ!』


『あら、本当にふかふかしてるわね。ケン様、こんなにいい場所に住んでもいいのでしょうか?』


『はい。これが標準的な家なので、遠慮せず住んでください』


『でも、こんなに良くして頂いて、二人ぐらいなら難なく産めますよ』


『いや、それは本当に勘弁してください。パクさんもサオリに怒られたくないでしょ』


 今朝のサオリの行動を思い出したのか、パクは身震いをする。


『すいません、余計な事を。もう二度と言いません』


『そうして頂いた方が俺も安心です。次はトイレとお風呂ですね。こっちです』


 ケンはお昼の準備をするサオリとリナの横を抜け、キッチンの裏へ回る。


『こっちがトイレですね。それで、こっちが――』


『ケン様、すいません』


『どうしました?』


『トイレはどう使えばいいのですか? 見た事のない形なので……』


『そうですね……リナ! ちょっといいか?』


 すぐそばにいたリナが、手を拭きながらこちらに来る。


『どうしたの?』


『リナ、交代だ。二人にトイレとお風呂の使い方を教えてあげて』


『オッケー。パパがやるとセクハラだからね。こっちはテーブル拭いておいてね』


『了解! そっちもよろしくな』


 ケンはサオリの下へ行き、一言二言話して手伝いを始める。


 パクとモグの下へリナが行き、説明を続ける。


『えっと、トイレの使い方だったっけ?』


『はい、リナ様お願いします』


『もう、リナでいいよ。モグちゃんもリナでいいからね』


『いえ、そういう訳には……』


『いいの。みんなそう呼んでるし、逆に様って呼ばれると緊張しちゃうよ』


『……分かりました。それではリナとお呼びしますね』


 モグが恥ずかしそうにもぞもぞしながら、リナに話しかける。


『あのね、それならね、私、「お姉ちゃん」って呼んでいい? 一人っ子だったから、お姉ちゃんに憧れてて』


『もう、モグちゃんは何てかわいいの! いいよ! これからはお姉ちゃんね!』


『うん、分かった! お姉ちゃん!』


『えへへ、照れるなぁ』


『それじゃあ、リナ。トイレの使い方を教えてくれる?』


『え~っと、ここにある――』


 リナが楽しそうに説明しているのを見て、ケンとサオリがどこかホッとした表情で話をする。


「これなら仲良くやっていけそうだな」


「ええ、本当に楽しそう」


「もうすぐ説明も終わるから、お昼の準備急ごうか」


「そうね。みんな良く食べそうだから」


 二人はテキパキとご飯の準備を進めていく。


 リナが説明を終えて帰ってくる頃には、テーブルの上にはサンドイッチが並べられていた。


『お昼過ぎてるから軽くね。食べ過ぎると夜食べられなくなるわよ』


『うわ~美味しそう! カツサンドだ! これ絶対に食べ過ぎちゃうよ!』


『牛カツにキャベツにウスターソースの簡単なサンドイッチよ。パクさんとモグちゃんは好き嫌いある?』


『ありません!』


『無いよ!』


『大丈夫そうだね。家では食べる時に「いただきます」って言って食べるルールだぞ。それじゃあみんな、せーの!』


「「「「「いただきます!」」」」」

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