69話 歓迎会
「それじゃあ出すぞ~」
ケンがマジックバックからマーダーバイパーを出す。
初めは「おお~」「デカいな」と言っていたバルガスとガンツの、開けた口が次第に塞がらなくなっていく。
たまらずバルガスが声をかける。
「ちょ、ちょっと待て、まだ出てくるのか?」
「えーっと、これで大体半分くらいですね」
「半分!? これで半分なのか?」
「ええ。さっき三十メートルはあるって言ってましたけど、多分五十メートルはありますよ」
「ご、五十メートル……」
「ギルマス、ちょっといいですか?」
二人でコソコソと話し合いが始まる。
ケンがマーダーバイパーを出し終わると、オーク達の歓声が沸く。
リナはすでにオークの子供たちと仲良くしていた。
「ケン、ちょっといいか?」
「なんですか? 二人とも改まって」
「このマーダーバイパー、巣の中も見たのか?」
「一応見ましたよ」
「巣穴の中に他の個体はいたのか?」
「ええ、五メートルくらいのが五匹と、十メートルが二匹。それは倒してマジックバックの中です。それ以下のは全部倒すのも生態系的にまずい気がして、そのままにしてありますけど……二十匹くらいはいましたね」
「五メートル以下だけ残しているなら問題ないだろう。オーク達にも聞いてくれるか?」
ケンはオーク達に話を聞くと、意外な答えが返ってきた。
「どうしようバルガスさん。オーク達、蛇は食べないって言ってますけど……倒してきた方がいいのかなぁ」
「なんで食べないかは聞いたか?」
「蛇を食べると呪われるって言ってますけど」
「それはあれだな、毒のことを呪いって言ってるんじゃないか?」
「ちょっと待ってください」
ケンは再びオーク達に聞く。
「バルガスさんの言った通り、毒のことを呪いって思ってますね。よく分かりましたね」
「だいぶ昔の話だが、魔族がそう思ってたんだよ。カミラが前に言ってた。長に教えてやってくれ。あと、あのデカいマーダーバイパーだが、今日は食べないし解体も無理だ」
「なんでですか? せっかく取ってきたのに」
「デカすぎて解体できないんだよ。あれだけ大きいと、ただ包丁で切るだけって訳にはいかない。毒袋も革も牙も使い道があるからな。それなりの装備がいる」
「そうですか……しょうがないですね。どうせならオーク達にも解体を見せましょう。これからの食料になりますからね。……ガンツさん!」
ケンはガンツに今までの事情を話し、長のもとへ連れていく。
『長、ちょっといいですか?』
『何だケン』
『オーク族はこの蛇を食べないと聞いたんですが』
『うむ。その蛇には呪いがある。食べればお前たちも呪い殺されるぞ』
『その呪い、取り除けますよ』
『何? 取り除ける?』
『ええ。ここにいるガンツさんは解体の――肉を切り分けたり、皮を剥いだり、呪いの場所も知っている専門家です。ちょっといいですか』
ケンは長の前に土魔法でまな板代わりの石板を作り、その上に五メートルほどのマーダーバイパーを出す。
ガンツが説明しながら解体し、それをケンが翻訳する。
『こいつの呪いは首の下に入ってる。だからまず、触って柔らかい場所から頭までを切り落とすんだ。ちょっと触ってみてくれ』
長が喉元を触る。
『うむ、ここだけ柔らかいな。ここに呪いが……』
解体を見るのは珍しいのか、人が集まってくる。
『この柔らかい部分から下、俺の肘から上くらいの長さ迄を余裕を持って切る。そこから皮をつまんで尻尾に向かって引っ張れば剥がれる』
バルガスが皮を引き剥がすと、「おお」と歓声が上がる。
『あとは腹側から切って内臓を出して、よく洗う。骨を取れば終わりだ――と言ってます。とても美味しい肉らしいですよ』
『しかし呪われた肉を食べるなど……』
「おーい! サオリ!」
「何? ……どうしたの?」
「ちょっとこの肉、焼いてきてくれないか?」
「はいはい、ちょっと待ってね」
サオリがコンロを作り、浄化してから肉を焼く。
味付けは塩胡椒のみ。
『どうぞ食べてみてください。俺も食べます……うん、美味い。流石サオリの焼いた肉だな』
『もう、そんなこと言って。ただ焼いただけよ』
ケンが食べる姿を見て、オーク達は息を呑む。
長が意を決して一口食べる。
『うっ……う、美味いぞぉーーー! なんだこれは! 肉がパサつかず、しっとりして、噛むたびに旨味が……! なぜ俺は今まで食べなかったんだ!』
『そんなに喜んでいただけて嬉しいです』
『お、俺にも食べさせてくれ!』
『私も!』
皆、食べると顔が蕩けていく。
「ママ! 私、唐揚げが食べたい!」
「それじゃあ今日は、オーク族のみんなと唐揚げパーティーにしましょうか!」
「やったぁ!」
聞けばオーク族には生か焼くだけで、味付けの文化がない。
塩すら知らず、解体も石ナイフで千切る程度だった。
ケンはガンツと共に長たちにナイフを配り、解体を教える。
サオリは唐揚げの仕込みをしながら料理を教える。
『切るのはそこじゃない、もう少し頭から離して……そう、その辺りだ』
『植物の種を絞って油を出して、その油で肉を温めるの。それが“揚げる”っていう調理法よ』
やがて料理が完成する。
ケンが作ったテーブルの上には、サオリが持参した皿に唐揚げが山のように盛られている。
長が口を開く。
『これから俺たちは人族と共に暮らしていく。今日だけでも解体、料理と教わった。これからも人族に学び、そして人族に教えることもあるだろう。ケンたちの住むコトコト村に何かあれば、必ず助けに行こう!』
『これから共に歩むため、この集落をオークの村と定める! 俺と共に歩む者は声を上げろ!』
『『『ウオォーーー!』』』
『バルガス、ケン。これからもよろしく頼む』
「ああ、こちらこそ」
『よろしくです、村長!』
『村長か、それもいいな』
『それでは村のみんなも、これからよろしくお願いします! 家の妻が腕によりをかけた料理です。皆で食べましょう!』
『『『ウオォーーー!』』』
こうして、オークの森に新たな村が生まれた。
翌朝。村長と約束し、ケンの家が完成したら、お手伝いとして二人のオークがコトコト村に来ることになった。
こうして――
人族とオーク族の大きな一歩が刻まれたのだった。
異世界小説を読んでると豚や猪の獣人がいないと思って、オークを猪の獣人と括りました。
そんな平和な世界があってもいいかなっと思って。
これからも緩く進むのでよろしくお願いします。
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