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美容師パパは魔道具担当、料理人ママは飯担当、娘は赤点担当の勇者です  ~異世界の隅っこで、家族スローライフ始めました~   作者: antomopapa


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第28話 解体報酬とお風呂の完成



ウォーターフロッグの「グルヌイユ・パーティー」から二日。

三好家には平和な時間が流れていたが、ケンには一つ、大きな楽しみが残っていた。

それは二日前にギルドの解体所へ預けてきた、大量の獲物の清算である。

ケンは朝の涼しいうちに家を出ると、活気づき始めた村の通りを抜けて、冒険者ギルドの裏手にある解体所へと向かった。

重い木の扉を開けると、そこには相変わらず血と鉄の匂いを漂わせたベテラン職員、ガンツが待っていた。

「おはようございます、ガンツさん。出来てますか?」

ケンの問いかけに、ガンツは作業台の上に積み上げられた包みと、小さな革袋を指差した。

「ああ、出来てるよ。

こっちが肉だな、数が多いから全部で大体50キロくらいになったぞ。

で、こっちが魔石だ。小が27個と、ケルピーの大が1個。……それと残りの素材の買い取り額だが、全部で金貨205枚だ」

「ブッ、205!?」

ケンは思わず変な声を上げた。

金貨1枚が約1万円の価値だとすれば、200万円を超える大金だ。

驚きを隠せないケンに対し、ガンツは詳細を記したメモを突き出した。

「何だよ、きたねぇな。内訳を言っておくと、ウォーターフロッグの皮が1枚につき金貨5枚。

これは高級レインコートや馬車の幌に使われる特上品だ。27枚分で金貨135枚。

それとケルピーの皮が60枚。水属性の魔法に耐性があるから、主に鎧に使われる。

骨は金貨10枚、これは水の属性付与ができる武器の素材だな。

ケルピーはAランクだからな、なかなか手に入らねぇ高級素材なんだよ」

ケンは震える手で、ずっしりと重い金貨の袋を受け取った。

ふと、仕分けられた魔石の山を見ると、中央に置かれたケルピーの魔石が、透き通るような美しい青色に輝いていることに気づいた。

「はあ……。あれ、この魔石、青いですよ」

「そうだぞ、ケルピーの魔石は水属性だ。

水関係の魔道具に組み込めば、耐久性の向上と属性強化が付与されるはずだ。

……そういやギルドに、ケルピーの魔石の指名依頼が来てるぜ。成功報酬は金貨50枚だ。

どうする? 自分で使うか、依頼としてギルドに収めるか」

金貨50枚というさらなる報酬は魅力的だったが、ケンは首を振った。

「50枚は惜しいですけど、自分で使います。魔道具の実験に使いたいんで」

「分かった、好きにしな。

……にしても、これだけのウォーターフロッグとケルピーをお前さん一人でやったのか。全くとんでもねぇ親子だな。

分かった、今度また倒したら卸してくれよ」

「はい、わかりました。ありがとうございます」

意気揚々とギルドを後にしたケンは、金貨の重みを噛み締めながら家路についた。

「ただいま! サオリ、これカエル肉50キロもあるけど大丈夫か?」

玄関を開けるなり、ケンは金貨の袋と、肉の詰まったマジックバッグをテーブルに置いた。

「おかえりなさい、ケン。ええ大丈夫よ、入れるのはマジックバッグだし、入れたら重さは関係ないから。……あら、この袋は?」

「素材の売却で金貨205枚になったんだ。ケルピーが高かったよ」

「205枚! まあ、それだけあればしばらくは落ち着いて生活できるわね。

いろんなスキルを付けてくれた神様に、本当に感謝ね」

「ホント助かるよな。俺の漢字回路も、サオリの浄化スキルも。神様に感謝だよ」

二人はしみじみと、この異世界での幸運を噛みしめた。

「ええ、ところでケンはこれからどうするの?」

「とりあえずお風呂を完成させたいな。ケルピーの魔石も手に入ったし。サオリは?」

「私は明日の屋台の仕込みをするわね」

「了解」

ケンは庭に出ると、以前に自作した水の魔道具を手に取った。

以前のものは魔石の出力が弱く、使い勝手に改良の余地があったのだ。

「水属性の魔石だから、出口を大きくするか」

ケンは土魔法を発動させ、庭の石材を魔力で捏ねるように加工して、これまでのパイプよりも二回りほど大きな「石の水道管」を作り出した。

そこへ、以前作った水の魔道具の魔法陣を組み込み、さらにケルピーの魔石を配置して、その上から複数の固定魔法陣を丁寧に重ねていく。

魔力の通りレッドラズリを最適化し、出力を最大限に引き出す設計だ。

「よし、大きさもちょうどいいな」

庭からお風呂の外側にある接続部にこの魔道具を取り付け、魔力を通して起動してみる。

すると、石の出口からこれまでにない勢いで清らかな水が噴き出した。

「凄いなこれ! これならお風呂もすぐ貯まるぞ」

お風呂の完成に満足したケンだったが、まだ太陽は高い位置にある。

お風呂の改良が終わっても、まだ時間があった。

「よし……。昨日のライフルも改良するか。そうなると、やっぱりスコープが欲しいな」

ケンはキッチンに向かい、仕込みをしているサオリに声をかけた。

「サオリ、渡してすぐで悪いんだけど、ちょっと金貨を貰っていいかな?」

「魔道具に使うんでしょ? いいわよ、好きに持って行って」

妻の許可を得て、ケンは再び村の道具屋へと向かった。

店に入ると、少し偏屈そうな店主がカウンターで作業をしていた。

「すいません、単眼鏡ってありますか?」

「単眼鏡なんて何に使うんだい?」

店主が不審そうに目を細める。

「一応これでも冒険者なんで、魔物の調査とかに使いますよ」

「おおそうかい、聞いて悪かったね。

単眼鏡を使うなんて軍隊か盗賊くらいだからよ。

えっと、確かこの辺にあったな……これだね。

もっと遠くまで見える奴なら、公都セント・シチューにでも行かないとねぇよ」

「ええ、わかりました。これだけ見えれば大丈夫です。おいくらですか?」

「金貨5枚だね」

ケンはやはりレンズ系は高いなと思いつつ、金貨を支払った。

「すいません、あとパイプもありますか?」

「パイプはそこの棚だよ」

棚を見ると、様々な太さの金属管が並んでいた。

ライフルとしての剛性を高めるため、いつもより太いものを3本ほど選ぶ。

「じゃあ、これで」

「はいよ、しめて金貨6枚だね」

「じゃあ、ここに置いときます。ちょうどですね」

「毎度あり! 気を付けて使いなよ」

買い物を終えて家に帰ると、ちょうどリナがギルドの依頼から帰宅していた。

「パパおかえりー!」

「ただいま、リナもおかえり。今日はどうだった?」

「うん! 草むしりの依頼中に、変な鳥を追い払ってきたよ!」

リナの元気な声が響く中、キッチンからは肉を焼く香ばしい匂いが漂ってきた。

「二人とも、ご飯の準備して。今日は以前に倒した**ワーベアーの肉で『熊カツ』**よ!」

「「やったー!!」」

サオリが以前から寝かせていたワーベアーの肉を、浄化スキルで臭みを取り除き、丹念に叩いて柔らかくした絶品カツだ。

テーブルに並べられた黄金色のカツに、リナは目を輝かせてかぶりつく。

サクッ、という心地よい音が静かなリビングに響いた。

「んんー! 最高においしい! パパ、明日もお肉たくさん獲ってきてね!」

「ははは、ほどほどにな」

美味しい料理と、手に入れたばかりの魔石、そして新しい魔道具への期待。

異世界の隅っこで送る三好家の生活は、また一歩、快適で賑やかなものへとアップデートされていく。

こうして、三好家の平和な一日は、満ち足りた夜ご飯と共に幕を閉じるのであった。



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