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7.サシ飲み

 ミラちゃんと面会してから数日が経つ。研究は進まないし、やる気も出ないあたしは、ベッドでゴロゴロしているだけの日々だった。

 部屋から出たら、リネちゃんに遭遇して、アクションを催促されそうで、最低限しか出ないようにしてたり…… なんかコソコソしてた。


 エレーナ様ともしばらく会えていない。やっぱあの笑顔が見られないとやる気が出ないな。


 手に取ったでんでん太鼓みたいな魔導具を鳴らす。デンデンと音がして、周りに少しだけ風が起きる。ただそれだけ…… 幼児用おもちゃかよっ! ポイッ!

 研究用にとミラちゃんから、いろいろな魔導具を届けてもらったけど、やっぱね、所詮錬金術師というか。ベースはインチキ臭い存在という認識であってるようで、正直ゴミばかりだった。


 この日の夕食には、エレーナ様が久しぶりに現れた。そのご尊顔、尊みぃぃぃぃぃぃっ☆ テンションは上がったけど、会話は最低限。何故なら、クソ執事がいるから。イケオジかと思ったら、ただのクソだった執事は、相変わらず、ニコニコとエレーナ様にお茶を注ぐ。気持ち悪っ! 態度に一切出さないエレーナ様は凄いなぁ、若いのに……


 ハッ!


 そう、エレーナ様やリネちゃん、ミラちゃんも皆、あたしより全然若いのだ。あたしは前の世界で死んだのは28歳。でも、彼女たちは雰囲気15、6歳。ヤバいよね。まだ、高校生くらいだよ? それで、暗殺だの権力争いだのに巻き込まれてるんだから。


 日本って平和だったんだって、つくづく思ったよ。


 食事後、立ち去ろうとするエレーナ様に、あたしは声をかけた。


「え、エレーナ様っ! 時間があったらお話しませんか?」


 疲れた顔してるし、駄目かな……


「そうですね、ではこの後、お部屋に伺います」

「え、あ、はいっ!」


 うっひょぉぉぉぉぉぉっ! 久しぶりのときめきタイムゥゥゥゥゥ〜ッ!


 浮かれたあたしは、部屋に戻り、ウッホッホ〜イッ! と怪しい儀式のように舞った。やっぱ、女神様とサシ飲みはテンション上がるぅ〜っ!


 興奮が冷めると、何を話そうか考え始める。あれ? 何話そう? 疲れてそうだから元気が出る話? それとも、あたしもチームエレーナに加わったから、なんでも話してねって、話?


 うーん…… コンコンコンッ!


 ノックが響く。えっ!? 早くないっ!? どうしよう……


「は、はいっ!」

「……失礼します」


 入って来たのは、リネちゃんだった。一安心。


「な〜んだ、リネちゃんか。どうしたの?」

「……これから、エレーナ様に会われるのですよね?」

「うん、そうだけど」

「……先日の話はしてもらって構いません。ミラージュと私が、エレーナ様のために動いていることをご存知です。ただ、貴女も加わったことはまだ伝えられていません」

「あ、そうなんだっ! なら、間違えて喋っちゃったぁぁぁぁっ! って、ならなくていいねっ!」


 それだけ告げると、リネちゃんは丁寧なお辞儀をして、部屋から出て行こうとする――


「ちょっと待って、リネちゃんっ!」

「……?」

「お酒ってある?」


 眉毛をへの字にしたリネちゃんが、戸惑った様子で答える。


「……ありますが」

「マジでっ! あるんだっ! ちなみにちなみに」


 あたしはリネちゃんにグイと近づく。


「エレーナ様はお酒は飲めるの?」


 近すぎて圧を感じたのか、若干のけぞり気味のリネちゃんは、ため息交じりに答える。


「……飲めますよ。何をするつもりですか? エレーナ様に手を出すと言うのなら――」


 リネちゃんは、素早くスカート中に両手を突っ込み、抜き出した。そこには、キラリと光る小さなナイフがあった。


「ちょちょちょちょ、待って待って待ってっ! 違うよ、違うから」

「……そうですか。貴女の言動には、それらしいものが多いので、つい」


 無事ナイフは仕舞われた。あ〜、良かったぁ。


「エレーナ様と楽しくお酒を飲みながら、語らおうかなって思ったの」

「……なるほど。では、エレーナ様は明日も公務がありますので、弱いお酒をご用意致します」

「感謝感激雨あられっ!」


 リネちゃんが去った後、しばらくするとノックが響いた。今度こそ、エレーナ様だ。


「はーいっ!」


 ドアノブをひねり、扉を開けるとそこには、プリンセス要素が宿りすぎてプリンセスを超えてしまった美しすぎるもはや魔女か何かのエレーナ様が、ラフなパジャマ姿でいた。


「あぁぁぁぁぁ〜っ! 神様仏様ぁぁぁぁぁっ! ありがたやありがたや南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏ぅぅぅぅぅ〜っ!」


 思わず膝をついて拝み倒していた。そんなあたしを見て、クスクスとエレーナ様は笑った。見てみて、久しぶりにエレーナ様が笑ってるっ! なんか嬉しいんだけどっ!


「本当に、ぴかりんはおかしな方ですね」


 そう言いながら、あたしの肩に手を添え、立つように促してくれた。優しい。可愛い。好きっ♡


「お誘い頂き、心から救われました。貴女にも嫌われてしまったのではないかと、不安で仕方がありませんでした」

「そ、そんなっ! 嫌うなんてこと、断じてあるわけがありませんっ! むしろ、好きですっ!」


 エレーナ様は、安堵の表情を浮かべ、相変わらずの破壊力な微笑みをあたしに見せる。


 きゃわいぃぃぃぃぃぃぃっ☆ 何この生き物、生き物なのっ!? いや、絶対生き物じゃないっ! フィギュアッ! まるでフィギュアッ!


 脳内が尊み成分で溢れる中、エレーナ様との禁断のサシ飲みが始まろうとしていたのだった。

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