4.れん・きん・じゅつ
異世界転移なのかもしれない現象に巻き込まれてから、3日が過ぎようとしていた。
ちなみに説明してなかったけど、服はなんとっ! エレーナ様の物を貸して頂いて過ごしておりますです。尊み…… 凄く、ほんとに凄くいい匂いがして、初日はしばらくほわわ〜んとして意識が朦朧としてたくらい。身長が同じくらいで良かったぁ♪ もちろん、胸がダボダボなのは内緒だよ☆
話を戻して――
魔法を初めて見せてもらった日は、水球の他に火柱や地割れ、稲妻、かまいたちなど、超常現象と言える魔法の数々を、エレーナ様は惜しみなく披露してくれたんだ。
中でも驚愕し過ぎて顎もガクガクだったのは、観月が興味本位で火柱に手を突っ込み、大火傷を負った際にかけられた治癒魔法。
さすがに服までは直らなかったけど、皮膚はグズグズに溶けちゃって、最先端の手術を行ったとしても、切断レベルの腕が、一瞬で元通りになっちゃったんだよね〜。
唖然としたよ、ほんと。物を生み出すだけでも意味分からないのに、ぐちゃぐちゃに溶けた腕が元通りって、何なの? 時間を巻き戻したの? それとも、とんでもない速さで治したの? もう全然分からない。
あたしの知ってる知識じゃもう、どうにもならないと諦めた。
ちなみに、欠損すらなかったことにできると知った観月…… 全ての魔法に手を突っ込んでみたのは、言わなくても分かると思う。
それでも、かまいたちの検証はマジでヤバかった。文字通り右腕が落ちてしまい、動脈から噴出する鮮血の放物線を眺めながら、意識を失って、肝心のデータが取れないという大失態を演じちゃった。
ほかにも、稲妻に打たれる実験も、手だけのつもりが全身が炭のようになり、焼け焦げた匂いが鼻を刺激したと思ったら、脳が一瞬シャットアウト。ギリ意識を失わずに済んだんだけど…… エレーナ様に治癒されて、一命を取り留めた観月は、今後こういうことはしないで欲しい、とキツく言われちゃったんだ。
ほんと観月は危なっかしくて困っちゃうんだよね。一応、あたしは観月の行動を観測できるけど、彼女が納得するまで見守ることしかできない。
お医者さんからは、あたしが主人格って言われてるんだけど、あたしは、観月が主人格だと思ってる。
エレーナ様は、あの日以来、公務で忙しく出かけて、帰っては疲れた顔をして、すぐに休んでいた。力になってあげたいけど、あたしは魔法も使えなければ、この世界の知識もない。ただのお荷物になっちゃうから、何も言えなかった。
観月が勇んでいた割に、何から手を付ければいいのか、全く分からなかった。うーん、うーん、唸っていると、メイドちゃんが町の散策に連れ出してくれた。
やっぱ、中世ヨーロッパを舞台にしているみたいで、文明レベルは、エジソンが電球を輝かせるずっと前なのかな。
この頃の科学って、錬金術とか呼ばれる代物。錬金術師とか、黄金の錬金術師で詳しく知ってるくらいで、実際の歴史上では何をしていた人なのか、分からない。賢者の石? ホーリー・ポッター?
少しだけ錬金術師にワクワクしながら、今度は道中の魔導具店が、あたしをドン引きさせてくれた。
何このインチキ臭いアイテムたちはっ!? 炎のランタン、、ジッポライターじゃんっ! 風の扇とか、振ったらちょっとだけ強い風が吹く程度。こんなの魔導具なの? 詐欺かよっ! ってツッコみたくなったけど……
もし、あたしが魔法が解明できたら、こういうのも自分で作れるんだ。そう思うだけで、脳内ドーパミンドバドバだった。
4日目の朝、あたしはエレーナ様を呼び止めた。
「エレーナ様」
「はい、何でしょう?」
キャッハァァァァァッ♪ 振り向いただけでサラサラでいい匂いっ☆
「お、お忙しいところ、至極恐縮なんですけども、魔導具の構造に明るく、かつ検証という概念を理解している方を、ご存知じゃありませんか?」
エレーナ様はしばし視線を彷徨わせた後、慎重に口を開いた。
「……錬金術師をお探し、ということですか?」
「錬金術師……」
いたぁぁぁぁぁぁっ! やっぱいるよね。あの魔導具たちも、錬金術師が作ったに違いない。知り合えれば、作り方を教えてもらえるかも? ヤッバ、大興奮なんですけど。
「はい。わたくしが、聖女になる前からの友人で良ければ、ご紹介いたします」
「ぜひ、紹介してくださいっ!」
「分かりました。今晩にでも、彼女へ使いを出しましょう」
聖女になる前? 聖女って生まれながらの家系でなるじゃないんだ。そうなると、選ばれる基準とかあるのかな? でも、暗殺される未来が確定してる聖女なんて、誰もなりたくないよね……
「……ただ」
再び口を開いたエレーナ様だったが、すぐに口ごもる。あたしが首を傾げると、彼女は困ったように眉を下げて応えた。
「悪い子ではないんです。ただ…… その…… だいぶ変、でして」
「変? 大丈夫ですよっ! 気にしませんっ!」
「……気を悪くしないでくださいね」
偏屈なお爺さんなのかな? それとも、口の悪いお婆さん? もしかして、超絶イケメンとか、ワンチャンあったり? それはそうと、何を聞くかまとめておかないと。
「はいっ! ご協力に感謝致します、エレーナ様っ!」




