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3.観月でありんす

 朝食もすっかり片付いた後、あたしはエレーナ様と一緒に庭へ出る。噴水があるよっ!? マジでっ!? めっちゃテンプレじゃんっ! などとはしゃぐあたしをよそに、昨夜はあれほど打ち解けたはずのエレーナ様は無言、カナシス…… イケオジ執事とメイドちゃんが一緒だから、立場とかあるのかな。

 少しすると、開けた場所に出る。


「……この辺りなら、差し支えないでしょうか」


 エレーナ様は立ち止まり、あたしの方を振り返って微笑む。キャッハァァァァァッ! ぷりちぃぃぃぃぃぃっ☆ 尊みぃぃぃぃぃぃっ♡


「では、お見せ致しますね」

「え、あ、はい! お願いしますっ!」


 魔法。恵方じゃないよ? 魔法だよ? そこの君ぃ、信じられるぅ〜? 我々ヲタク、そう同志たちが夢見てやまない、まさにマジックワード、それが魔法。魔法って言葉さえ使っておけば、大抵のことなんとかなる、そんな力を持つ神秘。

 そして、科学者たちが、そんな物は存在しないと全否定する、物理法則から完全に逸脱する存在――


 などと、物思いにふけっていると、エレーナ様の足元、半径0.5メートルくらいの地面が小さく振動していることを観測っ! この時点で激ヤバなんだけどっ! 彼女の掲げる手の周りの空間が揺らぎを見せ始める。ほどなくして――


「水の精霊よ、答えて―― 聖なる雫」


 うっひゃぁぁぁぁぁ〜♪ 美しい声っ! それに加えてテンプレに忠実なスペルっ! ありがたやありがたや……

 などと拝んでいると、次の瞬間、あたしが小学校から大学までに学んだ科学の知識が、音を立てて崩れ落ちる――


 プツン―― あ、これ、久しぶりの感覚。あたし、そこまで高揚してるんだ。女神様に失礼な事をしないでね、観月……


「……はてさて」


 彼女は観月。あたしのもう一人の人格。髪ゴムを解き、髪を振り乱す。


「おもしろうありんすなぁ。何もありんせん空間に水球のようなものが空を漂う…… ただごとではありんせんなぁ。声による引き金? はたまた、ただの己が思い込みによるまことの形でありんしょうか…… エレーナ姐さん。次は、黙りこくってやってくれなんし」


 あまりの言動と口調の変化に、動揺を隠せないエレーナ様。ごめんなさいごめんなさい、説明しておけば良かったです。それでも、対応しようとしてくれる姿は、まさに女神対応っ!


「え、えっと、えっと? ごめんなさい。黙って使うことはできません」


 その答えを聞きつつ、観月は水球の一歩手前まで近づく。気になるよねぇ〜、あたしも気になる。その結果、周囲の空気が冷却されているのが判明する。幻覚の類ではない、正真正銘、実体のある現象だった、マジかっ!


「分かりんした。声が引き金でありんすな。声に何がしかの力を混ぜ合わせることで新たな形を得る仕組み…… はたまた」

「危ないですよっ!」


 エレーナ様の制止を無視して、観月は勢いよく水球の中に手を突っ込んだ。ひぇぇぇぇっ! でも、知りたいっ!


 「冷たい…… 味はいかほどでありんしょう?」


 突っ込んだ手を出し、そこに滴る液体をいやらしくチロリと舐める。無味でいて、よく知る味をしてる。うん、これは、紛れもなくH₂O、その人だね。それを確認すると同時に、水球は弾け、地面に散らばった。しゃがみ込んで、土や草を観察すると、水滴がしっかり付いていた。


「真の水、でありんすなぁ…… エレーナ姐さん」

「は、はいっ!」

「もう一度、同じ魔法を使ってくれなんし」

「え? あ、はい」


 呪文の後、間もなく水球は生まれた。


「これは、いかように使うんでありんすか?」

「ええと、敵対者にぶつけます」

「ぶつけるんでありんすか? ただ水の塊を?」

「こんな感じです」


 次の瞬間、観月の視線は、水球の速度にあっさり振り払われちゃった。なにこれ、ヤッバァァァァァッ! 時速いくつ出てるのっ!? そんなことを思った頃、遅れて起こった風が、全身を駆け抜けた。

 驚き過ぎて、それを理解するまでに、本来よりも時間がかかっちゃったよ。


 激ヤバァァァァァッ! 魔法ヤバァァァァァッ!


 全く計算できないんですけどっ! 元々できないけど。それに、教えてもらった科学の知識じゃ、分からないんですけどっ!


「分かりんした…… これだけの速さが出せるなら打ち身、いやそれ以上の傷を負わせることも出来るというわけでありんすな」


 観月は少し離れていたエレーナ様の元に歩み寄り、握手を求める。彼女は首を傾げ、戸惑った様子で握手に応えた。


「興をそそられる事象でありんした。ありがたいことでありんす」

「いえ、これくらいは…… それにしても、聖なる雫に手を入れて、味見するなんて、これまでに前例がありません。体は何ともありませんか?」

「ありんせん。動かなければ、ただの水でありんす。案じることはありんせん。さて、魔法は他にもありんすか?」

「そうですか。それなら良かったです。魔法は他にもたくさんあります」

「多ぅ、でありんす、と…… 楽しみでありんすなぁ」


 そうだよね〜。テンプレ通りならたくさんあるよね〜。知ってたし。ほんと探求心がくすぐられすぎてゲラゲラ笑ってる。魔法なんて、ないってどこかで馬鹿にして生きてた昨日にさよならっ! 


 そうだっ! あたし、魔法を解明しようっ!


 テンプレ通りなら、異世界人、あたしだけだろうし、面白そう。心にそう誓うぴかりんでしたマル

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