31.実は
「……ミラちゃん、何で?」
あたしは驚きのあまり、泣いていたことを忘れる。ミラちゃんは、首の後ろで手を結ぶと、あたしに歩み寄りながら語り始めた。
「せやな。ぴかりん、あんたはどっから話が聞きたいんや?」
「え…… 何で居なくなったの?」
「裏切り者のフィリップと邪魔なジェームズを処刑することと、エレーナとあんたを守るためや」
「どういうこと?」
「びっくりするやろうけど、うちは魔王の手先、魔王軍所属なんや」
「へ? いつから?」
「どのくらい前やろな? エレーナが聖女になってすぐの頃からや」
イミフ過ぎて、頭が真っ白だった。だって、魔王軍には仲間をたくさん殺されたばかりだし、え、ミラちゃんも魔王軍?
「その頃のうちは、あんたと同じように無力やったんや」
「何で? 魔力量は紫でしょ?」
「せや。せやけどうちには何故か、魔法が使えんかった。まあ、聖女継承してたら、聖女魔法は使えたかもしれんけどな」
「そんなことあるの?」
「あるんや。ちっちゃい頃、おかんに連れられてお医者さんに行ったら、出力不良と言われてん。1,000人に1人くらいの割合でおるそうや」
「……そうなんだ。ミラちゃんも大変だったんだね」
「せやねん。このせいでぎょうさんイジメられたんや。って、話を戻すで。うちは代わりに聖女になってくれたエレーナを守るために、魔法が使いたかったんや。それで、魔王に相談したんやけどな」
「え、どうやって?」
「エリザベスのおっさんが仲介してくれたんや」
「え…… てことは、エリザベスさんも魔王の手先?」
「せやで」
ヤバい。ヤバすぎる。勇者はもちろん、国王すら信頼を寄せている占い師が魔王の手先。てか、この国、マジで詰んでんじゃん――
「あっ! だから、王命を理由にして、今回の討伐隊に参加しなかったの?」
「ちゃうと思うで。あの人、嘘はつかへん。つく必要もないやろしな。そんなことより、見たで、明智魔導砲っ! えらいもん作りよったなぁ。さすが、ぴかりんやっ! うちの目に狂いはなかったっちゅーこっちゃ」
何だか頭はまたぐちゃぐちゃだけど、やっぱミラちゃんとの話は楽しくて、ついつい話してしまう。生きて再会できたことも素直に嬉しいし、何もなくなったあたしにはかけがえのない存在だった。
「しかし、エレーナも困ったもんやな。ああやって味方を失くしてくねん。ほんま、昔から言い出したら利かへん。堪忍したってや。それにたぶん、あいつなりのあんたへの気遣いでもあるんやと思うで」
「そうなのかな? でも、傷付けちゃったよ」
「時間が経てば、また話せる時も来るやろ」
「そうだといいな」
「そんでや、ぴかりん。本題に入るで」
「本題? 何かあるの?」
「魔王があんたに会いたいらしいんや」
「へ? 何で?」
「あんたの魔石技術のことは前から話とって、元々興味を持ってたんや。せやけど今回、明智魔導砲にはびっくりしとってん。何せ、あんたは、知らん間に反魔王派の超級魔物1体を巻き込んで消したんや。それもあって、魔王はえらくご機嫌やねん」
いやいや。魔王なんて怖すぎて会えないでしょ。
「ごめん、ミラちゃん。魔王なんて怖すぎるし、魔王軍には、目の前でたくさんの仲間を殺されたんだ。まだ割り切れないよ」
「せやな、まだその時やないかもしれんな」
そう言ったミラちゃんは、明智アーマーに手をかざす。次の瞬間――
「えっ!? フルチャージッ!? 嘘でしょっ!?」
「もう、力を隠す必要もなくなったんや。まだまだイケるで」
てか、魔王の手先、強すぎない? エリザベスさんも嘘ついてたってこと? 嘘つかない人じゃないの? どんどん分からなくなるんだけど。
「とにかく、そないな話や。ほな、また来るで。落ち込まんと、この世界を楽しんどき」
「え?」
そう告げたミラちゃんの姿は、もうなかった。てか今、この世界をって言ったよね? あたしは異世界人であることを、話したことはなかったはず。エレーナ様から聞いたのかな? でも、エレーナ様が2人の秘密って言ったんだから、話さないよね?
もやもやはする。だけど、ミラちゃんとの再会は想像以上に嬉しかった。大泣きしたこともあり、気分はかなり上がった。だから、町に散策に出かけることにした。
この町の中なら、何でも買える程度のロストは、魔物吸収のための狩りで稼げていた。雑貨屋の前で、思い出した。渡しそびれたプレゼントを腰袋から取り出す。次、会ったらミラちゃんに渡そう。それから、リネちゃんにはもう渡せないから、お墓に供えよう。
噴水公園の一角に子どもたちが集まっている。あれは、紙芝居? 見に行こう。
「魔法の始まりのお話…… 始まり始まり」
〜魔法の発祥は、数千年、あるいは数万年前に遡る。
とある集落に産まれた一人の巫女が、生贄になるための祈りを行っていた。
すると突然、彼女の思うがままに、空は稲妻を落とし、水は宙を舞い、風は木々を切り刻み、業火が村を包んだ。
これが魔法の始まりと言われている〜
「この時、生贄の巫女は何を願ったのか…… 神のみぞ知る。おしまい」
紙芝居をする人がそう告げると、子どもたちはこぞって、願いを予想していた。
神様助けてだの、集落を守ってだの、子どもって凄いなぁ――
「こんな世界、なくなっちゃえばいいんだ…… ってところかしらね」




