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28.誤解

 夜も更けた頃、あたしは屋敷にようやく帰った。明日の打ち合わせが多く、持ち物の確認など、念入りだったせいだ。


「おかえりなさいませ」

「へ?」


 入口の扉を開けたあたしは驚いた。何故なら、目の前にメイドさんが居たからだ。


「えっと?」

「ぴかりん様ですね。エレーナ様がお待ちです」

「え、は、はい」


 案内されたのは夕食の間。中に入ると食事中のエレーナ様がそこにいた。


「おかえりなさい、ぴかりん。どうぞ、座ってください」

「あ、はいっ!」

「ごめんなさい。思ったより遅かったので先に食事しています」

「気にしないでください」


 部屋を出ていったメイドさんは、ほどなくしてカートを転がして戻り、積まれた食事をあたしの前に配膳する。


「あ、ありがとうございます」

「いえ、少し冷めてしまいましたが、ご容赦ください」

「ところで?」


 あたしはエレーナ様にアイコンタクトで疑問をぶつける。すると、さすがエレーナ様。


「彼女はアイリーンと言います。今日からうちのメイドとして働いて貰うことになりました」

「アイリーンです。よろしくお願いします」


 エレーナ様よりも更に若い、12、3歳なんじゃないだろうか。背格好も小さく、華奢だ。


「アイリーンは、魔王討伐に参加して命を落としたご夫婦の子どもだそうで、行き場がなくて盗みを繰り返して、生き延びてきたそうです。わたくしも、彼女の盗みに遭いまして、ふふ」


 ふふ、じゃないからっ! エレーナ様、器デカ過ぎでしょ。

 魔王討伐…… やっぱり、死んでる人もたくさんいるよね。それにその家族は、大変な思いをしているだろうし。


「話したら良い子なんです。ぴかりんも仲良くしてあげてくださいね」

「それはもちろんです。それじゃ、いただきます」


 食べ始めたあたしは、食べ終わったエレーナ様からの視線を感じていた。突き刺すような視線、疑いの目。あたし、何しちゃったんだろう……


「あ、あの、エレーナ様」

「はい?」


 微笑まない。おかしい、これ絶対おかしいやつ。え? 何で?


「あ、あたし、何かしちゃいましたか?」

「……貴女らしいかわし方ですね。白々しいです」

「え? 何のことですか?」


 ほんとに何っ!? と慌てるあたしをよそに、その態度が気に障ってしまったのか、バンとテーブルを叩き、立ち上がったエレーナ様は、本気で怒っていた。


「まさかあなたが国王側に付くなんて、思いもしませんでしたっ! 信頼していた自分が情けなくて仕方ありませんっ!」

「国王側? ほんとに何のことですか? 心当たりがないんです」

「よくもぬけぬけと…… 国王付きの占い師、エリザベスと組んでおきながらっ!」

「えっ!?」


 エリザベスさんが国王付きっ!? 待って待って、エレーナ様、違うっ!


「違うんです。セスさんに魔石の魔力注入できる人がいないかと聞いたら紹介され――」

「あの方は、最初にわたくしを偽りの聖女と呼んだ方なんですっ! よりにもよって、そんな方と組むなんて……」


 どうしよう。あの冷静で何事も受け止めてしまうエレーナ様が、こんなに怒ってるなんて。


「……まさか、あの日も貴女はわざと討伐に参加して、ミラージュの手を塞いだのですか?」

「違いますっ! 断じて違いますっ! エリザベスさんとは会ってはいましたけど、セスさんたちも一緒で、本当に魔物吸収が必要で――」

「……出ていってください。それだけで、今日までの罪は許します」


 エレーナ様は去ってしまった。


 何で? 何でこんなことに? あたしはリネちゃんのため、エレーナ様のために頑張ってたのに……


 あたしは屋敷を出て、ミラちゃんのお母さんの宿屋に向かった。


「何だい、浮かない顔してるね?」

「しばらく泊めてください」

「どうしたんだい? エレーナ様と喧嘩でもしたのかい?」

「……そんなところです」


 部屋に入ったあたしは、硬いベッドに全身を投げた。上手くいかないな、何でだろ? あんなに楽しい毎日だったのに――


「へこんでる場合じゃないか…… 明日は魔王討伐、死ぬかもしれないんだ」


 でも、これで上手くいけば、王国の体質は改善されるかもしれないよね。頑張ろう。


◇◇◇


 翌日。


「皆さん、後ろへ避けてくださいっ!」

「おうっ!」

「はいはーい」

「了解よ」

「了解しました」


 15人全員の退避を確認したあたしは、コンソールパネルを開き、集中する――


 プツン―― 髪ゴムを外して、髪を振り乱す。


「……はてさて。明日を照らす光になるか。散ってくれなんしっ!」


 耳をつんざいて、爆音を鳴らし、地形を変えた。射線上の魔物は跡形もなく、消し飛んだ。


「次の発射まで魔物吸収させてくださいっ!」


 あたしは、右へ左へ弱った魔物を吸収しに戦場を走る。そんな中、正面に尖った城が見えて来た。あれが魔王城――


「ぐぁっ!」


 悲鳴が聞こえた。そこから、立て続けに悲鳴が続く。視線がその惨状を確認できた頃には、仲間はすでに半数以下になっていた。


 嫌だ…… 昨日まで笑い合っていた人がちぎれる。


 やめて…… 子どもが可愛いと語った戦士の頭が吹き飛ぶ。


 もうやめて…… あたしに付き合わないかと軽口を叩いた斧使いが裂ける。


 あ、明智アーマーの魔力は? まだ足りないっ!? 何でフルじゃないと撃てない設計なのっ!?


「ぴかりんっ! 僕が先導しますっ! 退却しますっ!」


 セスさんがあたしの手を引いた。

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