27.お披露目
2、3時間経ったかな。明智アーマーの魔力は、満タンになった。白く輝くその鎧を見て、皆が驚いている。
「いろんな魔導具見たけど、こんなのは初めて見たよ」
「派手だな、羨ましいぜ」
ちょっと嬉しい。
「何言ってんの、あんたら。こっからが本番よ。ねぇ、ぴかりん?」
エリザベスさんの言葉に、あたしは頷いた。そして、皆に向けて告げる。
「次は、あたし1人で前線に立ちます。かなり危険なので、距離を取って後ろにいてください。もし、あたしが振り向いたら、失敗です。助けてもらえるとありがたいです」
そんなことを言っていると、正面に魔物の群れを捕捉。あれ? 射程内かも?
「皆さん、後ろにお願いしますっ!」
「何言ってる? まだあんな遠くだぞ?」
「安心しろ、慌てなくても俺が近くまで連れて行ってやるぜ?」
「あんたたち、言うとおりにしてやりなさい」
エリザベスさんの一言で皆が下がる。信頼が厚いみたいで、誰も逆らわない。ありがたやありがたや。皆があたしの後ろに下がったのを確認して、前には魔物と樹木だけになった。安全確保っ!
コンソールパネルを出して、操作を始める。それに合わせて、鎧が展開していく――
はずだった。嘘っ!? あれっ!? ここの操作は右で良かったはずじゃ……
最初からやり直す。今度は違う場所で躓いて、鎧は展開できずに元に戻ってしまう。あれっ!? あれっ!? 何でっ!? 何でなのっ!?
プツン―― 髪ゴムを雑に外して、髪を振り乱す。
「……はてさて。見てられないでありんすな。わっちに任せてくれなんし」
あたしの躓いたパートもあっさりクリアして、観月は明智アーマーを明智魔導砲に軽やかにセットする――
「初撃ちでありんす。お祝いに派手に散ってくれなんし」
キィィィィィィンッ! 耳をつんざく音と共に視界いっぱい埋め尽くす光が迸る。遅れて来る轟音の後、晴れた光の先は、先ほどまでの景色はなく、魔物たちも消滅していた。
「成仏してくれなんし」
振り返った観月を皆は唖然の表情で迎えてくれた。あまりに皆が硬直していたため、気付けば身体の主導権は、あたしに戻っていた。髪ゴムで髪を結ぶ。
「……ちょ、ちょっと、これ、武器じゃないぜ? 戦争する気かよ」
斧使いの戦士さんが、やっと口火を切ってくれた。あ〜、居た堪れなかった。ここから、皆、感想を呟き始める。これで何をするつもりだ、とか、敵に回られたら勝てる気しない、とか。
「確かにこれだけの力があれば、守りたいものを守れますね。ぴかりん、僕は君を尊敬します」
勇者様に尊敬されちゃったよ。あはは〜、嬉しい。
「だけど、魔力注入がネックよね〜。今回みたいに皆が一緒なら、注入も楽だろうけど、1人になったらそうもいかないわよ?」
「はい…… それは課題だと思ってます」
エリザベスさんの言葉に、あたしは真剣に頷いた。大魔石12個分の魔力。エリザベスさんに注入してもらうなら、12日も魔力を空にしてもらわないとならない。魔力が空ってことは他の事ができないってこと。
自分で集めるにしても、サンダーソードで戦える圏内で魔物吸収したところで、莫大な時間を要す。
凄い兵器だけど、現状、運用が難しい。
「いざって時に使う形が、一番良いんじゃないでしょうか? あれだけの兵器ですから、常に使う必要もないでしょう」
セスさんの提案に、一同頷く。だけど、あたしは腑に落ちない。固定のパーティメンバーがいる訳ではないからだ。
「セスさん。それだと、明智魔導砲を撃てる時が来ません。魔力を満たすことができないと思いますから。それにあたしは魔力ゼロです。注入すらできません」
「……失礼しました。そうでしたね。それでしたら、時々、今のように僕たちのパーティに加わりませんか?」
「え、良いんですか?」
「はい、もちろんです」
こうして、あたしは明智アーマーという最終兵器を携えて、時々、勇者パーティに参加することになった。
◇◇◇
数日後、あたしはセスさんたちと再び狩りに出ていた。今日の予定は、魔物の駆逐と魔物吸収。だけど、長い時間一緒にいるうちにあたしの気持ちは変わっていた。セスさんたちが毎回命をかけて戦っているのを見ていたら、傍観者でいるのが申し訳なくなってきて…… いつの間にか魔王討伐があたしの目的になっていた。
「セスよぉ、この姉さんがいれば、魔王城の近くにいるS級魔物たちとも渡り歩けるんじゃねぇか?」
「確かに、この辺りの雑魚狩りで消耗するのは惜しいな」
「そうよね〜、勿体ないのは事実よね〜。この辺りの哨戒業務より、乗り込んだ方が効果的だとあたしも思うわよ?」
皆に混じってエリザベスさんまで。注目がセスさんに集まった。腕を組み、うーんと唸るセスさんだったけど、しばらくすると意を決したように、力強い目で、皆を見渡した。
「全員無事で帰って来れるか分かりません」
その言葉に、皆分かってると言わんばかりに頷いた。
「では…… 明日、ここにいる皆さんで魔王討伐を強行します。国王には、僕から伝えます。せっつかれているので、反対される事はないと思いますが、反対されたら中止です」
こうして、急きょ、あたしは魔王討伐に加わる流れになってしまった。だけど、あの雰囲気、ヤバそうな予感。明日は、さすがに死んじゃうかもしれないよね…… 今日はエレーナ様にちゃんと話をしなきゃ。




