26.明智アーマー
初めての魔物吸収の旅を終えてから2日。久しぶりにエレーナ様と会った。最近、あたしは早出の遅い帰りという、ブラック企業さながらの働きっぷりだった事もあり、エレーナ様とはすれ違っていた。
「……ぴかりん、おはようございます」
「おはようございます、エレーナ様」
今日も変装しているエレーナ様は、少し浮かない様子だった。話を聞いておきたい気持ちはあるけど、今日はやっと連結の終わった瓶17個の試し撃ちから、魔石集めの狩りに行かなきゃ……
「では……」
「はい、気を付けて」
何だか様子がおかしいかも? どうしよう。そんなことを思いながらも、結局試し撃ちに来てしまった。
前日に実験で3瓶使っちゃったけど、おかげでよいデータは取れた。直列だと距離が伸びて、約1.5倍。並列だと直径が広がって、だいたい2倍。思ってたよりは、ずっと現実的で良かった感じ。
あと、気になるのは連結数を増やすと倍率で伸びるのか、数値で伸びるのか、だ。前者なら、魔石の使用数は激減して、時間も短縮できるけど、後者だと想定よりは軽いけど、かなりの時間がかかる計算になる。
それと繋げてみてから発生した問題で、瓶が17個ともなると、かなりのスペースと重さになる。重さは風魔法を込めた魔石をサポートで付ければ何とかなりそうだけど、スペースはかなり問題だね。
固定式なら簡単だけど、あたしが欲しいのは携行タイプ。火力とは別で工夫が必要な課題かな。
よし、準備オッケー。
「倍率でありますように……」
あたしはトリガーを引く――
キィィィィィンッ! 耳が聞こえなくなった。光が凄すぎて瞼を閉じてるのに眩しい。地面が振動して、身体もビリビリとひりつく――
……ゴォォォォォォンッ! 遅れて炸裂音が響き渡る。
ハッと我に返ったあたしは、直径がどのくらい広がったのか確認――
「やったっ! 倍率だ」
これなら、並列は6瓶、直列も6瓶で済む。これで直径3.2m、射程は約380m。あたしの欲しかった数字には、あっさりと届いちゃった。エリザベスさんの言っていた戦争を始めるのかは、案外的を射ていたね。
それにしても…… やり過ぎてしまった試し撃ちは、周囲の地形をごっそり変えちゃった。並列をメインにしていたので、大事には至らなかったけど、これは町で騒ぎになるレベルだ。とりあえず、研究所に逃げよう。
あとは、この瓶12個をどう携帯するか、だよね。1瓶で、脇に抱えるほどの大きさだからな〜。今みたいに木箱に入れて、引きずるんだと戦場では使いにくい。かといって、背中に背負うのも重い。
まあ、別の魔石を使って風魔法を使えば、重さは感じないかもしれない。
だけど…… スタイリッシュじゃないっ! ヲタクのあたしが叫ぶんだ。もっとかっこよく作れるはずと。瓶を見つめながら、首を傾げていると――
ピコーンッ! となったように閃いた。
「粉末なんだから、全身で着ちゃえばいいんだ」
そう。本当の魔導アーマーにしちゃえばいいんだ。あたしの防御力も上がって、一石二鳥じゃん。
「でも、それだと魔導砲の直径が身体のサイズになっちゃうな……」
ゴロゴロピッカーンッ! となった気分。
「ガンザムだっ! 全身のパーツが可変して砲になる奴っ! 何だか忘れちゃったけど」
これは良いアイデア。だけど、どうやるの? 仕組みが難しい。とりあえず、全身に着るところから始めよう。
そこからあたしは、材料を買い出しに行き、ひたすら裁縫に勤しんだ。ちなみに、魔石集めで1人で頑張ったおかげで、ロストが20万以上あるから、買い物に困ることはなかった。
◇◇◇
翌日、あたしはエリザベスさんの元を訪れた。
「あら、そう。魔石は足りたのね、それは良かったわ」
「はい。魔物吸収はまだ必要ですけど、課題は別のものになりました」
「ふ~ん、あんた、意外にできるのね。びっくりしたわ」
「ありがとうございます。だけど、まだ試作段階ですし」
「鎧を全部魔石にして、それを駆動させて今度は魔導砲にするなんて、この世界で初めての試みよ? よく思い付いたわね」
あたしの纏う鎧を見ながら、ため息混じりにそういったエリザベスさん。まだ軽くするための風魔法は組み込めてないから、重たい。ほんと、肩こりそう。
「それじゃ、次は3日後南門ね」
「はい。また頼っちゃいますけど、魔物吸収、お願いします」
「いいわよ、あんたがどんなもん作り出すのか、興味もあるしね〜」
◇◇◇
3日後。南門に集まるセスさんたちパーティとエリザベスさんの元へ向かう。その足取りは軽く、思わず笑みがこぼれるほど、あたしは自信に満ちあふれていた。なぜなら――
「できちゃった…… あたしだけの着る兵器、名付けて明智アーマー」
元推しの名を冠したその鎧は、風魔法を注入した瓶1個分を背負う形で、アーマー全体を風に乗せている。そして、腰にタブレットサイズに収まった瓶1個分の雷魔力。これは鎧を可変させるためのコンソールパネル。かなり繊細な操作を要するんだけど、完成がギリギリになっちゃったから、ぶっつけ本番になっちゃった。少し不安はあるものの、これまで何とかなってくれたから、たぶん、大丈夫。
「ぴかりん、今日も頑張りましょう」
事情は知らないセスさんが、とんでもなく爽やかな笑顔で迎えてくれる。他の方々にも挨拶し――
「完成したみたいね〜。楽しみにしてるわ」
事情を知るエリザベスさんは、ニヤリと微笑んだ。




