表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/28

18.粉末化

 屋敷に戻ったあたしは、愕然とした。あれだけ焼け焦げていた屋敷が、何事もなかったように元通りだったからだ。


 え? この世界の大工さん、ヤバくない?


「おかえりなさい、ぴかりん。ご不便をおかけしました」


 そういって迎えてくれたのは、あたしの推しのエレーナ様だった。


 うっひょ〜、尊みぃぃぃぃっ!


 嫌なことも、全て忘れられる。それが推し活。そして、最高のご褒美が推しとの対面。


「不便なんて、一つもしてませんっ!」


 マジで元気出た。それに、ミラちゃんのお母さんも、とても良くしてくれたしね。


「ふふ、そうですか。夕食の準備は出来ていますので、お待ちしています」

「はいっ! すぐ行きますっ!」


 そして、この日は和やかに夕食を終え、部屋に戻る。お風呂はちゃんとタイミング見て毎日入ってるからね? 大きな浴槽のある木造のお風呂があって気持ちいいんだよ?


◇◇◇


 翌日、朝食前。ベッドの上で、何気なく昨日貰った魔石が目に入る。サイズの割に出力が弱いんだよな〜。形も決まってるから、使い勝手も悪いし。精錬とかできないのかな?


 あっ! あたしは閃いちゃった。


 朝食を終え、エレーナ様を見送り、いつものようにミラちゃんの研究所に向かう。今日は、リネちゃんが一緒だ。こんなに心強い存在はないよね。


 研究所に着くなり、あたしは自分の魔石をテーブルに置き、その辺にいつも落ちているトンカチを手にする。


「ぴかりんっ! あんた何する気やっ! あかんっ!」


 止めようとするミラちゃんは間に合わず――


 ガシャンッ! 派手な音を立てて、魔石がバラバラに砕ける。


「……気でも狂ったのですか?」


 呆れた様子のリネちゃんを無視して、砕けた欠片を更に叩く。何度も砕く。


 カシャンカシャン……


 サラサラまでは行かないけど、いい感じに粉々になる。


「……どういうつもりやねん。魔石を砕くなんて勿体ないこと、何でしてんねん」

「ふっふ〜ん♪」


 不思議そうな表情で見つめるミラちゃん。あたしには確信があった。


「……やはり気が狂ったのですか?」

「狂ってないよ、大丈夫、リネちゃん」


 あたしは粉末を集める。そして、棚から適当な小瓶を取り出し、それを入れる。


「ミラちゃん、これに魔力を込めて」

「ええけど、粉々やんか…… 暗雲の轟よ―― って、魔力なんて込められへ…… 嘘やろ嘘やろ嘘やろっ!」


 魔石の粉末はそれぞれが雷を纏い、白く眩く輝いて見せた。


「やった、予想通りっ♪」

「考えもせんかったで。まさか、魔石を砕くなんて」

「これなら、色々な形に出来て、これまでの無駄な厚みや高さがいらなくなるから、より機能的な物を作れると思うよ?」


 あたしの言葉を聞き流すミラちゃんは、目を真ん丸にしている。


「そんな阿呆なことあるかいな」

「どうしたの? 何か問題があった?」

「ないで。問題はないんや。逆や」

「逆?」


 目をキラキラさせたミラちゃんが、鼻息荒くあたしに告げる。


「何倍か分からへんけど、砕いた魔石のサイズで吸収できる魔力の量より増えてるんや」

「マジで?」


 思わぬ副産物に、あたしは思考を巡らせた。何で吸収量が増えたの? 表面積が広がったから? そうだとしたら、砕けば砕くほど魔力を吸収できるよね?


 物は試しと、先ほど瓶に入れた粉末を更に砕く。砕く。砕く。そして、再び瓶に詰めて、ミラちゃんに渡す。


「また吸収量、増えたか試したいから、魔法をお願い」

「ええで」


 ミラちゃんは魔法を唱える。顔が青ざめているのが分かる。そして、あたしを見つめる。


「ぴかりん…… えらいことやで。特大魔石くらいの吸収量になっとる」

「……特大、ですか。領地が持てますね」


 黙って聞いていたリネちゃんも、特大という単語に目を見開いていた。


「そんなに凄いの? あたしには実感が湧かないよ」

「そらそうや、特大なんて目にしたことがある方が珍しいんやからな。ちなみにや、この一瓶で、うちの魔力は空っぽや」

「え、ミラちゃんってエレーナ様以上の魔力だったよね?」

「せやで」

「え、その瓶、何が出来るのようになっちゃったわけっ!?」

「分からへんけど、とんでもない雷の魔力が込められてるで」

「……ヤバいね」

「せや、ヤバいで」


 あたしはミラちゃんとしばらくの間、わざとらしくお互い目をパチクリしながら、見つめ合った。


「……粉末化は体系化されていないので、売却できなそうですね。領地は難しそうです」


 リネちゃんが、ボソッとそんなことを呟くので、あたしとミラちゃんは大笑いした。


「ケラケラケラ、リネット、あんた、領地に興味あるんかいな」

「あははは、リネちゃんも意外と現金なんだね〜」


 チャキッという音が首元に聞こえる。あたしの首だけじゃない。ミラちゃんの首にもナイフが当たっている。ヒィッ!


「……領地があれば、エレーナ様を守りやすいじゃないですか。違いますか?」

「違わへん」

「違いません」


◇◇◇


 あれから、持ってる魔石は全部砕いて瓶詰めにした。あたしの持ってた魔石でも、10日くらい暮らせる価値があるそうで、それだけ貴重だから、砕くなんて発想は誰も持たなかったみたい。

 この技法は3人だけの秘密ということになり、その後はドライヤー製作に着手していた。魔石の並列接続で、構造はほぼ完成していたけど、魔石が邪魔で使い物にならなかった。

 だけど、今日の発見で製品化へ更に一歩近付いた。それと、次の課題はもう決まってる。


 スイッチを付けること。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ