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12.ぴかりんの発明

「おもろいやないか、その発想」


 あたしは思い付いたドライヤープロジェクトをミラちゃんに、事細かに説明していた。


「でしょでしょ? でも、一つだけ疑問があって」

「何やねん?」

「魔石って違う属性を並列に組み合わせて、属性を重ねたりできるのかなって」


 その言葉に、ミラちゃんは目を丸くしていた。それから、何か思考を巡らせているのか、顎に手を当てて考えている。


「……あかん。何や、その発想。なんで今まで誰もやらんかったんや……」


 そう言うと、テーブルに広げられていた魔導具の数々を床に落として避ける。空になったテーブルに、今度は奥から取って来た小サイズの魔石2つが雑に転がる。そして、一方を握ると、呪文を唱える。


「大空の息吹よ、天空の風よ、我が願いに応え給え――ウィンド・パッチ」


 握った魔石が光り、稲妻を帯びた。続けて、もう一方を握って、呪文を発する。


「大地のうねりよ、燃え盛る炎よ、我が願いに応え給え――ヒートソース」


 こちらの魔石も光を帯びた。てか、ミラちゃん、魔法使えるじゃんっ!?


「ミラちゃん、魔法使えるの?」

「使えるで? 一応エレーナよりも魔力があるっちゅー話は前にしたやろ? よっしゃっ! 準備万端やっ! 繋ぐで?」


 排出口のようなものを取り付け、銅線のようなものを接続すると、口から風が出始める。すぐに、風を確認したミラちゃんは、目が潤んだ。そして――


「……触ってみぃ、ぴかりんっ! あんたの仮説は正しかったでっ! あんたはうちに新技術っちゅー魔法を授けてくれたんやっ! これなら、やりたいことがぎょうさんできるっ!」


 あたしは恐る恐る手を出した。生ぬるい風が手のひらを吹き抜ける。これは、室温による生ぬるさではない。明らかに加熱されたという温度――


 ドライヤー作れるじゃんっ!


「こ、これで、大金持ち確定でしょ? あたしって天才じゃない? ムフフフ☆」


 発展途上国に、先進国の技術持ち込んだだけなんだけど、それは内緒だよ☆


 お金持ちになったら、何しようかな〜? などと夢を膨らませていると、ミラちゃんが提案してきた。


「これは、ほんまにおもろいで。金が大好きな貴族も食いつく話やと思うわ。エレーナに頼んで、国王と謁見して、紹介してみるのも手やで?」


 それで話が通れば、狩りに行かずに好きなだけ魔石が手に入り、銅線などの材料もいくらでも集められると熱弁する。


「うちは、国王に嫌われとるから一緒に行けへんけど…… この技術は、隣国に差を付け、魔王に一泡吹かせるはずや」

「研究環境はめっちゃ良いけど、政治に巻き込まれたくないかも」

「まぁ、ダメ元や。エレーナには、うちから伝えとくわ。もちろん、あいつが嫌がったら、この話は没や」


 といった具合で、半ば強制的に王国への援助の申し入れを行う流れになった。

 エレーナ様には、こんな異世界人のつまらない提案で、パワーバランス崩すような真似はしないで欲しい。ほんとそう思った。


 だけど、現実は違った。


◇◇◇


「ですから、彼女のこの発明は、我が国の技術を大きく革新するものだと、わたくしは強く感じていますっ! どうか、彼女に王国として援助をしていただけないでしょうかっ!」


 あのあと、ミラちゃんから話を聞いたエレーナ様は、とても積極的だった。あたしに、必ず成し遂げようと誓ってくれたり……

 そして、2日後。国政会議と言われる定例行事が行われるということで、あたしはエレーナ様の紹介者として出席した。その場で、エレーナ様からの議題という形で、魔導具研究プロジェクトを提案した。

 だけど、状況は悲惨なもの。周囲はエレーナ様の立場上、無視はできないというだけで、話をまともに聞いていない様子だった。そんな中でもエレーナ様は必死で提案したけど――


「……くどいぞ、エレーナ」

「ですが、国王陛下っ! 聡明な彼女の知恵があれば――」

「女子供の分際で、政治に口を挟むではない。聖女の位を維持してやってるだけでも、余は譲歩している。お前の見た目が飛び抜けてなければ、とっくにお払い箱だ。これにて終いだ、去れ」

「へ、いか……」


 王座の間にいた貴族たちは、エレーナ様を見下して、クスクスと笑っている。誰かが言う。


「子どもの出る幕ではありませんよ、エレーナ様?」


 酷い……


「聖女だからって、図に乗ってるんじゃなくってよ?」


 すれ違い様にそう告げ、フンと鼻を鳴らした貴婦人。


 聖女って、そんな扱いなの? 平民より扱い酷くない? なんで?


 すぐそこには、俯いて黙ったままのエレーナ様の背中が見える。あたしは彼女にいったいどんな言葉をかけたら良いんだろう。


 辺りに人がいなくなった頃、一人の貴族がニヤニヤしながら近寄って来た。


「エレーナ様。もし、貴女が身体で対価をお支払い頂けると言うのなら、私の方から陛下に口添えしてもよろしいですよ? せいぜい、ご検討ください。クスクス」


 ……クズ共が。


 誰もいなくなった広間に残ったのは、そっと肩を震わせるエレーナ様の背中だけだった。どこからどうみても、これはイジメだ。あの頃の自分とダブる…… 絶対、許せないっ!

 でも、あたしに何ができる? ひとまず、場所を変えようと、そっと彼女の肩に手を置くと――


(……えっ!?  なに、これ……あたしの頭の中に入ってくるっ!?)


 突如、ノイズのような映像が脳裏を駆け巡る。

 え?  何?  この中年の女性は誰?

 魔法を使っていない?  それにしても、どことなくエレーナ様に似てるような……

 あ、あの髪飾りは…… あたしたちが贈った青い兎――

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