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9.ハンド扇風機

 あれからあたしは、リネちゃんのガチのお説教に耐え、無事にお開きを迎えた。リネちゃんに支えられるように連れ出される、少し酔っぱらったエレーナ様は、帰り際にグイと顔を近づけ、耳元で甘く囁く。


「惜しかったですね、クスクス」


 そう告げて、部屋から出ていったエレーナ様だけど、残されたあたしは動揺しまくりっ! えっ!? どういうことっ!? オッケーだったのっ!? という具合に、あたしの頭を混乱させるかなりの小悪魔だということが判明した。


 翌朝、いつも通り、朝食の迎えに来たリネちゃんは、明らかに不貞腐れている。


「ねぇ、リネちゃん。ごめんって」

「……何がですか? 貴女と話すことはありません」

「事故だから、事、故」


 あたしの言葉をガン無視して、不機嫌そうに朝食の間の扉を開く。リネットさ〜ん、そこはエレーナ様のいらっしゃるお部屋ですよ〜? そんな怒り任せて開けるのはどうなの〜?


 なんて、頭の中で冷静なキャラ風にツッコミ入れたけど、もちろん、口にはしない。怒っちゃうかもしれないからね。


「おはようございます、ぴかりん、ふふ」


 朝からまるで朝露に濡れた白百合のようにキラキラとして元気な笑顔を浮かべるエレーナ様。逆に怖いんだけどっ!


 でも、尊みぃぃぃぃぃ〜っ☆


 綺麗ってそれだけで明るい。DNAに何か干渉してるのかと思うほど、綺麗じゃない人と世界が違う。それこそ、魔法みたい。


 魔法みたいで思い出したけど、今日はミラちゃんがまた道具を持って来て、相談に乗ってくれるらしい。今日はしっかり聞きたいこともあるからね、楽しみだよ。


 食事は終始無言。理由はもちろん、スパイのクソおじ。これ、なんとかできないのかなぁ? それから、リネちゃんは終始あたしを睨んでいた。も、もしかして、あのナイフで刺されちゃうかな? さすがにないよね。


 エレーナ様はクソおじを連れて公務に向かい、しばらくするとミラちゃんが屋敷にやって来た。


「……なんかあったん? リネット?」


 会うなり不機嫌そうにしているリネちゃんに声をかけるミラちゃん。強者だね、普通、触らないよね?


「……いえ、大したことでは」

「いつも冷静なあんたが、そないに怒っとるんや、大したことやで? 話してみ?」

「……本当に大したことではありません」

「何があったん、ぴかりん?」

「えっと、実は……」


 経緯を説明してる最中にミラちゃんは吹き出す。


「あかん、あんた聖女押し倒したんかいな、おもろすぎやんかぁぁぁっ! ウケるわぁっ!」


 ケラケラと笑いながら、リネちゃんの頭を撫でて、優しく話しかける。


「事故や事故。リネット、あんたの想いとはまるで違う、ただの事故や、安心せえ」

「……でも、長年仕える私だって、唇に触れたことなんてありません」


 怒ってるの、そこだったのかぁぁぁぁっ!


 まさかの展開に、あたしは正直ホッとした。従者として、あたしを警戒してるんだったら怖かったけど、恋心に対してならはっきり弁解できる。


「そういうことだったんだ。リネちゃん、エレーナ様のことが好きなんだね」

「……答える必要がありますか?」

「えっと、あたしもエレーナ様大好きだけど、あくまで推しとして、友達的な感じ?」

「……」

「だから、ごめんっ! 昨日はほんとに不可抗力っ! エレーナ様の魔性が天才過ぎただけで、そういうのじゃないから」


 しばらく沈黙が流れる。


「……分かりました。今回は見逃します」


 ホッ――


「……ですが」


 チャキという金属音と共に抜き出されたナイフが、あたしの喉元にいつの間にかある。鋭い視線が射抜き、冷徹な表情が間近に迫る――


「ひぃっ!」

「……次はありませんので、ご覚悟を」

「わわわ、分かりましたっ!」


 リネちゃん…… 怖すぎ……


「よっしゃ、仲直りが済んだとこで、今日はこないなもの、持ってきたんや」


 ガラガラガラッと、色々な物がテーブルの上に転がる。先日のガラクタと同じ匂いがするんだけど。


 あれこれ触りながら、効果を試す。何このハンド扇風機みたいなの。


「ミラちゃん、これってどう使うの?」

「貸してみ。これはやな、ここをこうすると――」


 微風が吹いてる。マジでハンド扇風機じゃん。


「作ったのはええが、使い道がなくて困っとる、ケラケラ」

「ミラちゃん、これってどうやって風を吹かせてるの?」


 上手くすれば、エレーナ様の役に立つアイテムが作れるかも。


「ここにある魔石に、風属性の魔力を込めとるんや」

「もうちょっと強い風、とか微調整はできるの?」

「できるで。ただ、これより強い風となるともう一段容量の大きい魔石が必要や」


 そこから、ミラちゃんの魔石講義が始まった。簡単に言うと魔石はバッテリーみたいなもので、使いたい効果に合わせた属性の魔力を込めることで魔導具として稼働できるという。


「ちなみに、ここの魔導具より強い魔力を使いたい場合、魔物を狩らなあかん」

「魔物がいる、よね……」


 男の人ならひゃっほ〜いっ! ってところだろうけど、あたしは戦いとか、野蛮なことは大嫌い。幼少期に名前でイジメられて、戦いごっことかで皆からぶたれた記憶がよぎる。


「ついでに、形に作り上げるのに、部品やら加工やらで結構かかるんや」

「……そっかぁ。それじゃ、あたしには作れないね」

「そないなことないで?」


 戦いとかしたくないけど、この世界でそんなことも言ってられないか。エレーナ様がいつ暗殺者に狙われるか分からないし、あたしも少しは戦えた方がいいよね――


「どうしたらいいの?」

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