表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オレはおっぱいを揉みたいんだ  作者: はれ
第二章 おっぱいの感触を確かめるって、それもうおっぱいを揉むのと同じじゃ…
34/49

32 オレはおっぱいが好きなんだ

「おっぱいの事、大好きだからなッ!」


 …………はい?


 彰が放った一言に、俺は咄嗟に反応することが出来ない。

 意味が分からないから。ではない。


(こいつ……今更何言ってんだ……!?)


 ――知っていることを今更言われたからである。


「知ってますけど?」


 ということで、俺の第一声も当然そういったものになった。


 ――観覧車のゴンドラは、回転に合わせて段々と高度を上げていく。

 観覧車がある位置の都合上、俺から見て左側の窓を見ると、遊園地全域を見渡せるようになっている。もっとも、まだ高度が低いので見れないが。

 

「いやいやライタ。そういうことじゃねえよ」


 俺の言葉を否定するように――というか否定する彰は、自らの手を小さく横に振った。


「俺が言いてぇのは――オレはおっぱいが好きって事だぜ!」

「それを知ってるって言ってるんだからな!?」


 先ほどと何も変わらない彰の発言に、俺は項垂れる。

 まったく、こんなんじゃ七瀬を見つけ出すことなんて――


「そう、オレはおっぱいが好きだ。見ただけで胸のサイズが分かるくらいな。そんな俺なら……出来るはずなんだ」

「は……?」


 未だに意味が分からずに困惑する俺に、

 ――ニッ。

 彰が、笑った。


「……!」


 その笑みは、彰が度々見せる、『確信を得た時の歪んだ笑顔』だ。

 つまり、こいつがこういう笑い方をしたならば、それだけの手ごたえを得たのだ。


「胸のサイズを見分ける事が出来るなら、胸で人を判断する事だって――」


 ――ゴンドラの高度が上がり、遊園地の全域が見渡せるようになってくる。夕陽が、観覧車の中に光を入れ込む。

 その光に当てられながら、彰は――





「七瀬の胸を見つけることだって、出来るはずなんだ!」


 そう、言った。

 彰は窓に張り付き、外の景色をその目に焼き付け始める。

 その視線は遊園地の全域を見渡しているようで――その実、見ているのは女の胸だけだ。


「彰……!」


 今、彰の瞳には胸しかない。


 ――おっぱいしか、無いのだ……!


「あれは違う。あいつも……違う。七瀬はあれだけデカいんだ。この遊園地で一番デカい胸を持つ女、それが七瀬のはずなんだ!」


 今、観覧車は頂点をを少し過ぎたあたり。

 あまり傾けば、遊園地の全域を見渡せなくなる。

 

(時間との戦いだ……!)


 彰は全感覚を瞳に集中させ、食い入るように胸を探す。その息が……段々と荒くなってきた。

 ポタリ。と彰の汗が落ちる。見れば、異常なほどの発汗が起きている。


「彰! 大丈――」


 ――夫か。そう声をかけようとするも、俺は声を出せなくなる。

 それほどまでに、真剣な表情をしているのだ。俺が声をかける事をためらってしまうほどに。

 だが――それでも、七瀬は見つかっていない。

 やはりどこか屋内に入ってしまってるのか。


(いや……それ以前に、()()()()()()


 元より広い遊園地だ。見つけるなんて……無理なんだろう。

 よく、『砂の中で針を見つけるほど難しい』という言い方をするが……それほどまでではなくても、彰一人で見つけ出せるようなものではないのだ。


「チクショウ……! いるはずなんだ! 七瀬が、必ず!」


 呻くような彰の声には、どこか諦観しているようにも聞こえて。

 俺も、無理なんじゃないか。という諦めの気持ちが心を支配していく。 

 悪態をつくくらいしか、出来ない。


「クソッ!」


 何か……何かないのか。 

 七瀬が、七瀬がいるはずなんだ。探さなきゃいけないんだ。見つけなきゃ、いけないんだよ。

 あの子は一人なんだ。友達がいないんだ。だから放るわけにはいけない。俺たちが見つけて、彼女の元に行って、それで……言ってやらなきゃいけない。

 だから見つけるんだよ。おれが、おれたちが――


 ――その瞬間、俺の頭に一週間前の出来事が蘇る。


 探す。彰。見つけて、落ちて、そこは――



「――彰ッ! 池だ! 池を探すんだ!」


「――ライタ!?」


 俺の叫びに、彰が困惑したような声を出した。

 当然だろう。急に七瀬と関係ない事を言ったのだ。そんな反応をされる事は分かっている。

 だが、予感が――したのだ。かつての彰と同じように、()()と、俺の中で確信が迸ったんだ。

 だから、俺は――


「遊園地の中に池があるはずだっ! そこに、いるはずなんだよ!」


 根拠はない。でも――


「……ああっ!」


 俺の悪友は、すぐに俺を信じてくれた。

 俺もそれを分かっていた。信じて、いたんだ。


 だが、


(もう、見れなくなる……ッ!)


 ゴンドラが傾き、遊園地の全域が、見えなくなる。

 そうすればもう、七瀬を見つけられない。見つけなきゃいけないのに。

 ああ、もうダメだ。

 見つける事が、出来ない。






「七瀬ええええぇぇぇぇぇ――ッ!!!」



 

 その叫びは、どこにも届かなかった。 

 ――ただ一人を、除いて。



「……見つけたッ! 居たぞ、七瀬が!」


 興奮した声で、彰が俺に抱き着いてくる。


「近くの池にいたんだ! オマエのお陰だ! ライタ!」

「……」



 ドッと、体から力が抜ける。

 見つけられないと思ったのに、見つけたのだ。

 俺は、見つけたのだ。


 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ