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オレはおっぱいを揉みたいんだ  作者: はれ
第二章 おっぱいの感触を確かめるって、それもうおっぱいを揉むのと同じじゃ…
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28 おっぱい屋敷には男のおっぱいが詰まってる

「ぎゃあああああああぁぁぁぁぁ―――ッ!!」


 ――おっぱい屋敷の暗い通路。その曲がり角で俺を待ち受けていたのは、何故か胸が膨らんでいる大男だった。

 まぁそれはお化け屋敷に寄せているのか、客を驚かせるために胸に詰め物をした男を曲がり角に待機させていたのだろう。それはまだ分かる。いやはっきり言って状況的には訳分からんけどもそれでもまだ分かる。

 ――だが、その男の乳を……彰が揉んでいたのはさすがに耐えられなかった。

 

「うっせえなライタ。オマエはそうやって叫ぶことが多すぎなんだよ」

「いや叫ぶわ! こんな状況誰がどう見ても叫ぶわ! ていうかいつまで胸揉んでんだ!」


 未だに男の胸を揉み揉みしている彰。もうそろそろ吐くからやめてくれ。

 というか叫ぶのを耐えられる訳がない。大男に胸がある地点でホコリと髪が絡み合っているみたいな絶妙な気持ち悪さがあるのに、彰がそれを揉んでいるとなれば――それはもうホコリと髪が絡み合っている中に使い終わった絆創膏も追加されて更にそれらが湿っているみたいな、もうそんな気持ち悪さだ。

 今日一日だけで数えきれないほどに気持ち悪くなったんだが、どうしてくれるのかこの吐き気を。


「ていうか、この人喋らないんだな」


 今も尚、彰に胸を揉まれている大男だが、微動だにしない。この仕事に何かこだわりがあるのだろうか。

 ――そんな事を思っていたら、唐突に大男の左胸から白い液体が出てきた。服越しに。


「キモっ! 母乳出てきたんだけど!?」

「母乳ではありやせん。ミルクティーです」

「いらねえよ!?」


 大男がようやく喋ったと思ったら、左胸の中身の説明をされた。そんな事の説明するくらいだったらずっと黙って欲しかったよ!

 ミルクティーがだぼだぼと零れる中、大男は右胸を差し出し、こういった。


「こっちからはタピオカも出てきやす」


「いらねぇ――――ッ!!!」


 何でもかんでも流行りに乗るとこういう事も起きるのだろう。俺はまた一つ賢くなったのだ。賢くなるたび馬鹿になる気がするけど。


「――おい、七瀬もなんか言ってやれ……七瀬?」


 今までずっと沈黙を保ってきた七瀬の方へ振り向くと……


「――――」


 七瀬はそこだけ時間が止まってしまったかのように、微動だにしていなかった。息すらもしているのか分からないほど固まっている。豊満な胸ですらカチコチに見えてきて、まるで石だ。

「お、おい……七瀬?」


 余りの石化っぷりに、俺が心配そうな声を出すと――


「……ぴ」

「……ぴ?」



「ぴあああああああぁぁぁぁぁっ――ッ!」


 突然として七瀬がその場から逃げ出した。それも目にも追えないほどの猛スピードで。

 

「七瀬ッ!? 急にどうした!?」

 

 俺は慌てて追いかけようとするが、胸に重りをつけているとは思えないほどの速度で七瀬は消えていってしまった。

 その場には、俺と彰と大男。それと先程の俺と七瀬の絶叫が嘘なほどの静寂が残されていた。



 ************************



「おーい! 七瀬ー! いないのかー?」

「七瀬ー。今ならさけるチーズ上げるぞー。出てこいー」


 俺と彰は七瀬を探しておっぱい屋敷を進むも、どこにも七瀬の姿は見当たらない。

 完全にはぐれてしまった。というわけになる。別に俺達は大学生なので、はぐれても問題はないのだが……七瀬は俺達の連絡先を知らないのだ。そんな七瀬に何かあったら、俺達も困る。

 なので、こうして探しているのだが……


「ライタ。七瀬はもうここにはいねぇんじゃないか?」

「……」


 彰の言う通り、確かに七瀬はおっぱい屋敷の中にはいなさそうだ。

 ただ、俺が今思案している所はそこではない。

 

 ――どうして七瀬は、俺達を遊園地に誘ったんだ――?


 この日が始まる前から、ずっと思っていたんだ。なぜ七瀬は遊園地に俺達を誘ったのか。七瀬は俺達をセクハラ人間として扱っている時だってあるし、誘うならそれこそ同年代の友達と行くべきだろう。いくら寮が同じで、よく部屋に遊びに行く(彰が勝手に乗り込む)からといって、遊園地などに誘われるほどの間柄じゃないはずだ。

 どうしてこのタイミングでこんな事を――と、自分でも思うが、これは今日一日ずっと引っかかっていたことだ。そろそろ明らかにするべきだろう。


「なぁ、彰」

「ああ。それならオレはデカい方がいいな」

「違うよ!? デカい方って何!? おっぱいか!? おっぱいの事考えてただろお前!」

「そうだよ」

「否定しろ!」


 こんな時でもおっぱいの事ばかり考えている彰に、俺は溜息をつかざるを得ない。

 それでも……こいつなら何かを知っているんじゃないかと思うのだ。彰はこう見えて、人の内情を見抜く力があるんだ。――なぜなら、俺も見抜かれたことがあるから。

 だから俺は、時としてこの男に頼るのだ。


「そうじゃなくて……七瀬の事だよ。俺と彰でも何回か話しただろ。どうして七瀬が俺達を遊びに誘うんだ~って話」

「ああ。それね。それならまず、乳房じゃなく乳輪を見るべきだな」

「すまん、一ミリたりとも分からないから翻訳してくれ」

「だから、理由を求める順番が違うって言ってんだよ」

「――――は?」


 暗いおっぱい屋敷を進みながら、彰の思わぬ言葉に、俺は素っ頓狂な声を出してしまう。 

 理由を求める順番が違う……?


「どういうことだよ。それ」


 全く理解できない俺が思考を放棄して投げると、彰は頭を掻きながら返してきた。


「オレ達を遊びに誘ったってのは、一番分からねぇ理由なんだよ。だから、その理由じゃなく、今日の七瀬の行動の理由から明かしていけって言ってんの」

「……行動。例えば、七瀬が変な恰好で来た事とかか?」

「そういうことだ」


 まるで刑事の様に語りかける彰に、俺も言われた通りに理由を探っていく。

 今日、七瀬はまるで痴女のような恰好をしてきた。理由は……本人が言っている。『クラスの子が遊びに行く時に大胆な恰好をしていたと聞いていたから』というものだ。でもこれ、よくよく考えると七瀬は遊びに行ったことがないのか……? って思えるような言葉だな。

 ええと、他には……俺と腕組みをしてきた事もあった。理由は……『友達っぽいことをしてみる』だったよな。これも……まるで友達っぽいことを知らないような……

 そういえば、七瀬が俺達を遊びに誘った時も、『遊んでください』って、遊びに行くのにそんな言い方……人を誘ったことがないような言い方で言っていた。


「……あ」

 


 少し、少しだけだけど分かりかけてきた。

 七瀬は、遊ぶという事を『知らない』友達っぽいという事を『知らない』のだ。


『――さっきからどうしたんですか? 二人で友達みたいにこそこそ話して』


 ――七瀬は、友達を『知らない』

 そうか。彼女は知らなかったんだ。だから俺たちを……俺達なんかを誘ったんだ。それくらいしか、誘える人がいなかったから。

 俺は彰に向き直る。その彰は、俺から視線を外して――こう言った。



「七瀬は……友達がいないんだよ」





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