18 オレはおっぱいの感触を知りたいんだ
「それでだな、ライタのせいで本筋から話が逸れちまったんだが」
「百人が百人お前のせいって言うだろうがな」
――俺の濡れ衣騒動が一段落した所で、彰が本来の話をすることになった。
彰の要求はただ一つ。それは――
「オレが七瀬に頼むことは――オマエのおっぱいの感触を教えてほしい。それだけだ」
そう、彰の頼みは七瀬の胸の感触を知ることだ。
(でも、おっぱいの感触を知りたいっていうのは『おっぱいを揉みたい』って言ってるのと同じのような気がするんだけどなぁ……)
揉まずにおっぱいの感触を知ることなど不可能。つまりは知る=揉むって事なんだろう。というか彰がそう考えてなかったら驚く。
などと考えている中、彰の言葉を聞いた七瀬は訝しむような表情を作っていた。
「それはさっきも聞きましたけど……前田先輩、それって立派なセクハラですよ? まずそこを分かっています?」
「それがどうした」
「何開き直ってんのお前!? それがどうしたじゃねえよ! 立派なセクハラをその発言で受け流せると思ってるの!?」
あぐらをかきながら開き直った彰に対し、俺は考えを放棄して突っ込まざるをえない。
なんだこいつ。セクハラをそれがどうしたってもはや百年に一度の風雲児だろ。
などと再び思考がわき道に逸れそうになるが、七瀬は心底呆れたように溜め息をつき、話を進めた。
「まぁ、セクハラの件は一旦いいです。どうせやめないんでしょうし。それより本題の、おっぱいの感触を知りたいって話ですけど――要は、おっぱいを揉ませてほしいって事ですよね?」
――やっぱり、そうなるか。
彰の切り出し方から見ても、七瀬がそういう反応をするのは予想出来ていたことだ。
問題は、彰がここからどのような切り返しを行うか。いや、彰の脳内で感触を知る=揉むってなってたらもう積みだけど。
俺は7:3くらいで彰が効果的な返しを出来ないと予想。多い方に有泉君賭けておこう。
――だが、彰は嘘をつくような表情もせずにこう言った。
「いや、違う。オレが言ってんのは、おっぱいの感触を知りたいという事だけだ。揉む気持ちなんて
揉むほどもない」
そう、言い放った。
「……え、えっと、そのだから、私が言いたいのは――」
「彰、それだとその二つの違いが分からないだろ。感触を知るっていうのはどういう事をするんだよ」
「どういう事も乳もねえよ。おっぱいの感触を知りたいっていうのはそれだけの意味だ。七瀬が、オレとライタに、おっぱいの感触を教えればいいんだ」
「いや、俺は別に知りたくはないんだが」
「七瀬が、オレとライタに、おっぱいの感触を教えればいいんだ」
「なんで二回言った!?」
七瀬が困惑していたので俺が助け舟を出すと、彰がこれまたよく分からない事を言ってきた。
彰に対して、七瀬がおっぱいの感触を教える……? って事は、口頭で伝えればいいって事か?
「じゃ、じゃあ、私が前田先輩に、口でおっぱいの感触を伝えればいいんですか?」
「そういうこった。でもな、条件がある」
「――条件」
――うっ、なんか今の彰の言葉で、一気に嫌な予感がしてきたぞ。
この感覚、彰が変な事を言い出すときに来るものだ。いや、普段から変な事言ってるけど、特に変な事を言う時にこいつが来る。
という事は、彰がこれから言う事は――あの疑似おっぱい探しの時のような、超絶めんどくさいことに発展するぞ。
ただ、俺にはそれを止める事も出来ず――ただ、彰の言葉に注視する事しか出来なかった。
そして、彰が紡いだ言葉は――
「――七瀬のおっぱいの感触を、正確に、具体的に、どこがどういう感触かしっかり伝えて、寸分の狂いもなくオレに教えろ。範囲はおっぱいの端から端まで、勿論両方だ。それらの感触を伝えるんだ。それが――俺の出す条件だ」
――俺の予感は的中したと言えるだろう。
…………ていうかそれ、普通におっぱい揉ませてほしいって言うよりセクハラじゃね?
「……それが、おっぱいの感触を知りたいという言葉の真意ですか」
「これでも妥協してんだぜ? ほんとはライタにもやらせるつもりだった」
「え」
今なんかとんでもない言葉が聞こえた気がするんだが、気のせいだろうか。
「それで、七瀬は受けてくれんのかよ」
オレが人知れず震えている中、彰は七瀬に意思の確認をする。
これは確かに、おっぱいを揉ませてほしいという話ではないだろう。確かにその通りではある。ただ、はっきり言って揉ませてほしい、と頼むより不埒なものだろう。
これを七瀬が受けるとは思わないんだけどな……
と、俺が七瀬に視線を送ると、七瀬は顎に手を当てて何かを考えているようなポーズ。
――まさか、受けるかどうか悩んでいるのか?
有り得ないとは思う。だけど、七瀬もいまいち考えが読めない奴だ。この頼みにどう返答するかは分からない。
そこで、七瀬は顔を上げた。彼女の返答は――
「……分かりました。その頼み、受けさせてもらいます」
「……!」
七瀬の言葉に、俺は少なからず驚いた。
まさか、七瀬がこんな頼みを受けるなんて……
「――でも、私にも条件があります」
七瀬は体一つ動かさず、そう言った。
条件。つまり、彰と七瀬の条件の交換。
彼女は彰の条件に、条件を持ち出すことで叶える――いわゆるwinwinの関係を作り上げようとしているのだ。
「――私の頼みを、聞いてください。これが私の条件です」
第二章、スタート。




