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オレはおっぱいを揉みたいんだ  作者: はれ
第二章 おっぱいの感触を確かめるって、それもうおっぱいを揉むのと同じじゃ…
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19 七瀬の「頼み」

「――私の頼みを、聞いてください。これが私の条件です」


 そう、七瀬は言ったのだ。

 この言葉を要約すると、『お前らの頼みを聞いてやるから、私の頼みも聞けよ」ということである。よくよく考えたら要約する必要なかった。なんで要約したんだろう。

 などとオレが自問自答する中、彰がダンッ! と床を踏み抜くんじゃないかと思うほど強く踏み、七瀬に対して顔を上げてこう言った。


「いいぞ。頼みにもよるけど」

「床を踏み抜いた意味はなんだったんですか!? 大家さんに怒られますよ!?」


 思わず七瀬が突っ込むが、こんな感じになるだろうと思っていた俺はただ溜息をついただけ。彰と接するには彼の行動を深く考えない事が重要なのである。


「……それはそうと、ライタ先輩も人の事言えないような表情してますけど、二人ともきちんと私の頼みを受けてくれるんですよね?」


 そんなことを考えていたら七瀬によく分からない事を言われた。人の事言えないような表情ってどんな表情なんだ……? って、それはさておき――


「まぁ、彰と同様に頼みの内容次第って感じだな……別に俺、おっぱいの感触なんて知りたくないんだけど」

「分かりました。それじゃあ、私の頼みを聞いてください」


 俺の発言をスルーした七瀬は、少し崩していた姿勢を正座に正した。

 一体どんな頼みが出るのかと、少し身構える俺たちに――七瀬の口が、ゆっくりと開かれた。


「――明日、私と遊んでください」


 …………アレか。命がけの戦い=『遊び』的な意味か。


「明日、権田遊園地で私と遊んでください」

「お前遊園地で戦うのか!? いくらなんでも好戦的すぎるだろ!」

「時間は午前十時、権田公園前で待ち合せましょう」

「前座か!? 戦いの前に戦いの前座か!? 戦闘狂もいいとこだなオイ!」

「ライタ先輩何か勘違いしてますよね!? それも致命的な!」


 え、違うの? 

 

「どうせライタの事だから、七瀬の発言を斜め上の方向に解釈したんだろ。いつもの事だよ」

「それ多分前田先輩にだけは言われたくないと思いますけど……ライタ先輩、私の頼みを何だと思ったんですか?」


「七瀬が俺と彰相手に、遊園地で命がけの戦いを繰り広げるって話」


「何言ってるんですか!? アホなんですか!?」


 俺が思ったままの事を口にすると、顔を真っ赤にして反論された。どうやら俺の考えが間違っていたらしい。

 それはそうと、七瀬がアホだと言った瞬間に彰が『何を今更』という感じの表情をしたのがたまらなく腹立つ。


「じゃあ、俺たちと戦うってわけじゃないのか?」

「違いますよぉ……言葉の意味そのままです。私と権田遊園地で遊んでください。以上」


 きっぱりと言った七瀬に、俺はしばし表情に驚きの色を作った。

 ――つまり、七瀬は俺たちと遊びたい。それだけ。

 それが終われば、俺たちにおっぱいの感触を教えてあげてもいい、と……。

 

(いやいやいや、いくらなんでも割に合わないだろ……)


 俺たちと遊んだだけでおっぱいの感触教えるとか、もうぼったくりってレベルじゃない。

 ……ってことは、普通に遊ぶわけじゃない……って事か?

  

「なんだ、そんな事でいいのか? それならいくらでも付き合ってやるぜ」

「ちょ、ちょっと待てよ彰!」


 俺の考えも無視して話を進めようとする彰を、俺は腕を引っ張って止める。

 そしてそのまま引きずるように俺の体に寄せると、彰はキョトンとした顔をした。

 

「なんだよライタ。そんなにオレのことが好きなのか?」

「ちげぇよバカ! あのな、常識的に考えて、ただ遊ぶだけでおっぱいの感触を教えてもらえるわけないだろ」

「何言ってんだよライタ。おっぱいの感触を教える教えないのってやってる時点で常識的もクソも無いだろ」

「分かってやってるとかタチ悪いなお前……」


 遠くで訝しむように俺たちを見ている七瀬に悟られないよう、俺たちは小声で話し合う。


「俺が言いたいのは、何をやらされるか分からないに、二つ返事で了承しちゃうのはどうなんだよ。って事なの」


 俺は普段から猪突猛進の気がある彰に、少し踏みとどまって欲しい気持ちで続ける。

 七瀬が危険な事を俺たちにやらせるわけはないだろうが、それでも詳細が分からない以上――それにほいほい乗っかるのは危うい。せめて、七瀬から何かしらの情報を取りたいところだ。


「んな事言ったってライタ……七瀬はそういう事やる奴でもねえし、仮に何か俺たちに隠していたとしても、ロクな隠し事なんぞ出来ねえだろ」

「それは認めるけど。でも何も分からないんだし、少しくらい慎重でもいいだろ」

「じゃあオマエ、例えばの話――七瀬が何を企んでると思うんだよ」

 

 ――う。

 彰にそう言われて、俺は言葉に詰まってしまう。

 確かに彰の言う通りだ。七瀬との付き合いもそれなりのものだが、七瀬は嘘をつかない。というか付けない女なのである。一見いがみ合っているようにも見える七瀬と彰だが、意外な事に仲が悪いわけではないのだ。その彰がこう言っているのであれば、それはその通りと言わざるを得ない。


「……さっきからどうしたんですか? 二人で友達みたいにこそこそ話して」


 どうしたものかと思っていると、横から七瀬がにゅっと出てきた。

 っていうか、友達みたいって……


「いや、友達みたいって……俺と彰は友達だぞ?」

「――うっ、ゴホッ、ゴホッ」

「あれ、どうした彰。風邪か?」

「いや、恥ずかしげもなくそういう事いうライタにちょっとビビった。やっぱオマエすげぇな」

「――?」


 彰がどういう意味で言っているかは分からないが、とりあえずあまり重要な事じゃないのは分かったので、俺は七瀬の方へ向き直る。

 

「で、どうしたかと言われると……」


 一瞬、正直に言おうかどうか悩んだが、もうこの際言った方がいいだろう。という考えに至った。

 という事で、俺は包み隠さず正直に話す。


「ただ遊ぶだけじゃなくて、何か他に狙いがあるんじゃないかって事だよ」

「――狙い?」


 ――何のことですか? とでも言いたげな表情をして、七瀬は首を傾げた。

 その行為は『七瀬は本当に俺たちと遊びたいだけ』という結論を導き出すには十分なものだった。


「……いや、なんでもない。明日午前十時に権田公園な」

「はい。それじゃあ。先輩たちはで出てってください。ここは私の部屋なんですから」


 俺と彰は七瀬に背中を押され、半ば押し出されるように部屋を出た。まぁ、用が済んだからあの部屋に居座り続ける理由もないけど。


「んじゃ、帰ってダラダラしようぜ」

「お前ほんとにダメ人間だな」


 俺と彰は寮の階段を登って、自分たちの部屋へ戻っていった。


 ――七瀬が俺たちを追い出す瞬間、物憂げな表情をしていたことにも気づかずに。


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