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実は俺、最強でした?  作者: すみもりさい
第十章:バズっちゃいましたか

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行く手を阻む脅威……脅威?


 今日はどんなことが起こるのかな? なんて思いながら歯磨きしていると。


「ハハハハルトさん! 今ゴミ出ししていたらマリアンヌさんが!?」


 王女様にゴミ出しさせんなよ、とのツッコミは横に置き、そういやこの人にも説明せんとな、と思い出す。俺は歯磨きを終えてから、「実はですね」と切り出してイリスたちの状況(設定とも言う)を説明した。


「な、なるほど。大変なことに、なっていたんですね」


 今まで知らされなかったことに怒るでもなく、事務所の所長さんこと柊さんは長身を折り曲げて神妙な顔つきで尋ねる。


「ところで、シャルロッテちゃんたちといっしょにダンジョンにいた子って――」


 おっと、そっちの説明もあったな。


「誰なんですか?」


「って気づいとらんのかーい」


 びっくぅ! と仰け反る柊さん。


「いや、すみません。彼女は、その……第三の魔法少女です」


「第三の」


「正体は機密に関わるので言えません」


「機密に」


 柊さんはごくりとのどを鳴らす。

 べつに『ノエルさんが変装してます』と素直に伝えてもよいのだが、面白いのでこのまま黙っておこう。


 ともあれ、所長への説明義務は果たした。そんなわけで――。






 三十七層にやってきたよ。


 白っぽい石造りの塔が、あっちこっちに生えている。

 高さも太さもまちまちなそれらの間を、何段もの石橋や回廊がつないでいた。上下にも道があり、立体迷路みたいな景色だ。


 塔の間を進む魔法少女たち。

 でもわりと時間がかかってしまった。その理由は一目瞭然。


「ま、まだ! 手を離さないでください」


「まだ握っていますから安心してください。でもかなり姿勢制御は安定してきましたね」


「そうそう、うまいわよ、マユ」


 ふよふよと宙に浮く、魔法少女が三名。うち一人はいまだおっかなびっくりといった感じで、ピンクの魔法少女に手を引かれている。


〝いまきたナニコレ?〟

〝小一時間、飛行訓練しとる〟

〝探索はどした?〟

〝もうずっとこれでいいんじゃないかな?〟


「それじゃあ手を離しますね」


「はっ、ぅわぁ……」


「あら? また邪魔が来たわね」


 ノエルさん改めマユさんは、中腰で両手を前に出した、とても空を飛んでいるとは思えない姿勢だ。

 シャルは彼女に向かい合って優しく見守り、ユリヤは周囲に現れた魔物をさくっと倒していく。


〝あまりにもカオス〟

〝魔物さん意味なさすぎる〟

〝やっぱずっとこれでいいよ〟


 マユさんはへっぴり腰ながら、なんとか飛行できている。

 しかし不思議だ。

 飛行用の結界は過去にシャルたちのも含め俺が作ったのだが、いまだかつてこれだけ下手くそだった人がいただろうか? お子さまのメルちゃんだってすいすい飛んでたんだが。


「で、できました!」


 マユさんはめちゃくちゃ嬉しそうだが、相変わらず速度は出ていない。


〝よかったね〟

〝幼稚園かな?〟

〝マジほっこりする〟

〝ここの切り抜き百万回見るわ〟


 もはやダンジョン攻略ではなく『マユちゃん成長日記』的コンテンツに成り変わろうとした、そのときだ。


 どっかーん、と爆音が響いた。


 前方にもうもうと土煙が上がり、ゆっくりと風に流され現れたのは。


「ふははははっ! よくぞ来た、魔法少女たちよ!」


 でっかい魔物だ。

 石でできたような体は獅子のそれ。大型バスほどある。頭部はたてがみをもっさもっさたたえているものの、そのほとんどが地面に埋まっていた。背中には折れた翼。その上に、高笑いする女がいた。


「フレイ!」


 シャルが叫ぶ。

 女剣闘士風の衣装は、肩当てが片方ない以外は以前と同じ。腕を組んでふんぞり返り、足元の巨大魔物をげしっとひと蹴り。


 しゅわわん、と魔物が消え始める。

 フレイはひょいと降り立ち、シャルたちを見上げた。


 不敵な笑みに、シャルは真剣な眼差しで問う。


「今の魔物さんはお仲間では?」


「ふん、お前たちを待ち構えていたら急に現れたのでな。邪魔なので排除した」


〝こわい〟

〝戦闘狂すぎる〟

〝俺は好きよ? えっっだもの〟


「そして今やお前たちもまた、私の進撃を阻む者たちだ」


 ギランと赤い瞳が光を放つ。両手の爪が伸び、戦闘準備は万端だ。

 ちなみにリザもいるが、遠く石橋の欄干に腰かけて、分厚い魔導書を膝に広げていた。戦う気ゼロである。


「さあ! どこからでもかかって――」


 ドギューン、と。

 特大の光線がフレイへ向かう。


〝不意討ちかよww〟

〝シャルちゃん容赦ねえw〟

〝まあ敵認定した時点でね〟


 そう、すでに戦いは始まっていたのだ!


「なんの!」


 しかしそこはフレイ。ただのケモ耳コスプレ女じゃあない。

 両手を前に出し、特大光線を防いだ、直後。


 ガッコーンッ!


 ものすごい音がしたかと思うと、フレイがぐらりと前に倒れる。

 その後ろから、トンファーをくるくる回すユリヤが姿を現した。


〝なにやったんだ?〟

〝背後から後頭部に一発?〟

〝俺でも見逃したね〟


 コメント欄は正解。

 ただ実際、見えてた奴はいないだろう。俺はそれぞれにカメラを配置してるから、ユリヤカメラで確認できたけど。

 さすがにこれは立てないかな、と思った矢先。


「ふんーーっ!」


 すげー、立ち上がったぞ。


「よふもやっへふれはなはぁ~」


 舌回ってないがな。足元もふらついて覚束ない。が、


「おにょれ~!」


 ぼわっと、全身が炎に包まれた。衣装が燃え、身体がわずかに膨れる。あ、これってもしかして……。


〝変身バンク?〟

〝あのお姉さんも魔法少女なの?〟

〝いいぞ燃えろ! 燃えろよ衣装!〟


 このままではフレイが巨大狼だとバレる以前に、マッパの女が全世界に晒されてしまう。

 俺が慌てて止めに入ろうとした、次の瞬間。


 ゴッ!


 強烈な鈍い音。

 今度はフレイの脳天に、分厚い本の角が振り下ろされた。痛そう。


 半裸状態のフレイはそのままぱたりと前に倒れた。ぴくりとも動かない。

 ひとまず大事なところは謎の光で隠せたので、チャンネルBANは免れた、と思いたい。


 突如参戦したリザはフレイをひょいと持ち上げ肩に担ぐ。


〝ちっちゃいのに力持ちやん〟

〝絵面が頭に入ってこん〟

〝なぜ、止めた……?〟

〝てかこの青髪の子は味方なの?〟


 怨嗟に染まるコメントが一部あるものの、困惑が多くを占めていた。


 リザは空いた方の手で、指を差す。さっき巨大な獅子が消えた場所。空間が、陽炎みたいに揺らめいていた。


「次の階層への近道」


 言って、そこではなく、この階層の奥へ向けて歩いていく。


「リザ、あなたも、なのですか……?」


 ぴたりと止まり、顔だけ振り向いたリザはしかし、シャルと目を合わせることなく、うなずいた。


「ただ、立ちはだかるにしても、ルールは守る。それはダンジョンの意思でもあるから」


 そんな言葉を残し、今度は大きく跳んで、塔の林の向こうへ消えていった。


〝謎が謎を呼ぶ展開〟

〝トウキョウ=ダンジョン、始まったな〟

〝いやこれ茶番だろ〟(即削除)


 さあ、先を急ぐぞ!

 次はまともな対決を見せたいものだ。

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短編書きました。よろしくどうぞ~

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