解説の途中ですが
ズズン、と。
ひときわ大きく地面が揺れて、それは闇から姿を現した。
ぬりk――でかい扉だ。いや、門か。
高さは十メートルを軽く超える。石を組み上げた巨大なアーチに、ずんぐりした柱の脚が二本と左右に腕が一本ずつ。アーチの内側は二枚の扉で閉ざされ、表面には見知らぬ文様がびっしりと刻まれている。
上部には顔っぽいものがある。目しかないのに、めっちゃ怖い顔してる。
イリスとマリアンヌお姉ちゃんは振り返りもしない。それどころか、
「女王の激励」
マリアンヌお姉ちゃんは掲げていた片手を門へ向けると、静かに告げた。
巨大な門の魔物が淡い光に包まれた。文様が明滅し、なんか両腕の力こぶを自慢するようなポーズをしてますね。
「イリスさん! マリアンヌさま! どうして……」
シャルちゃんの声が震えている。
イリスが静かに首を横に振った。
「理由は言えない。だがこれだけは伝えておこう」
横に並んだマリアンヌお姉ちゃんをちらりと見てから、
「ボクたちは自分の意思で、ここに立っている。操られているとか、洗脳されているといったことはない」
「つまり、スズキさんに共感するところがあった、と?」とシャル。
「ぇ。いや、あんなの……彼に従うのは本意ではないというか、嫌というか……」
「やはりなにかしら精神汚染を?」
「そういうのではなくて、ね?」
ちらちらとこっちを見ないでほしい。ちなみに俺は光学迷彩結界で見えなくしているはずなのだが?
〝つまりどゆこと?〟
〝察しろ。さすれば救われる?〟
〝マユちゃん映して〟
コメント欄も混乱ぎみだ。
「ともかく! 彼とは無関係な事情でボクたちはダンジョンの側についた」
イリスが指をぱちんと鳴らす。
ゴゴゴゴゴ……と巨大な門が厳かに開いた。
「フレイとリザも、この先にいる」
先にマリアンヌお姉ちゃんが開いた門の中へ進んでいく。
「三十七層にも、通じている。先に進みたければ……」
イリスも踵を返した。
「門を越えてくることだ」
その言葉を残し、門の中へ消えていった。
門はまたも厳かに、閉まっていく。
束の間の静寂。
それを破ったのは、ギラリと目を光らせた巨大な門だ。
ウオォォオオーーーッ!
口もないのに雄叫びを上げた。
ノエルさん改めマユさんが指差す。
「門扉の中央付近を見てください。鍵穴のようなものがあります。あそこに『鍵』を差して回せば、開くはずです」
「知っているの? マユ」
隣にいたユリヤが問う。
「いえ、知りません。あれは新種です。ですがこのダンジョンのボスクラスの魔物であれば、相応の仕掛けがあるはずです。形状が『門』で、扉に『鍵穴』があるのなら、十中八九それに合った『鍵』があると考えるのが自然です」
〝解説はじまた〟
〝どこのライデンやねん〟
〝ろくろ回し可愛い〟
カメラ、寄ってます。
さらに、とマユさんは続ける。
「その『鍵』はきっとどこかに隠されています。まずはそれを探しましょう」
〝なかなか鋭いな〟
〝あわあわするだけじゃなかった〟
〝キメ顔可愛い〟
「でも先に進むなら、倒した方が早くない?」
「いえ、イリスさんは『先に進みたければ門を越えろ』と言いました。逆に正規の手順でなければ、おそらく門は閉ざされたままにな――ってぇ!?」
「シューーット! です!」
話してる途中でシャルちゃん、マジカルステッキを振るって特大の魔法光線を撃ち放った。
ずがびゅーん、と真っ直ぐ進み、門のど真ん中を撃ち抜く。
〝解説聞いたげてw〟
〝吹っ飛ばせばよかろうなのだ理論〟
〝マユちゃん涙目可愛い〟
なんかマユさんに沼ってるのおるな。
〝あれ? でも……〟
〝元に戻ってる?〟
〝姫様のスキル効果か?〟
うん、あっという間に直ってしまった。
さっきマリアンヌお姉ちゃんがかけたスキルの自動回復効果だろうな。
ちなみに前回の『仲間がつかまっちゃった』配信で初お披露目となった四人だが、その後は以前ダンジョン内で彼女たちに助けられた人たちの証言も加わり、考察祭りとなっていた。それぞれのファンも付いている。
でもってマリアンヌお姉ちゃん、スキルと容姿から『姫様』と呼ばれているのだ。鋭いね。
「さすがはマリアンヌさま。それなら!」
シャルちゃんはカッと目を見開く。ステッキをぶんぶん振り回した。ピンクの光線を乱射する。
巨大な門も負けてはいない。
両の腕がぐいんと伸び、すさまじい速さで張り手をかます。
門の前で弾けては消える無数の光線。
激しい攻防が繰り広げられる。
「え? ちょ、だから倒しちゃダメって……」
〝あわあわ可愛い〟
〝おれシャルちゃん派。推しが二人になっても、いいよね?〟
〝そろそろベールとろっか〟
コメント欄は平和だなあ。
と、様子を見ていたユリヤが、にんまりと笑った。
「試してみたくは、あるわよね。まあ、シャルは話を聞いていないだけだろうけど」
ふわりと小躯が浮き上がる。
「威圧」
静かに告げると、巨大な門がびしりと音を立てて動きを止めた。
「シャル、特大のをいくわよ!」
「はい!」
二人は左右に分かれる。
シャルは両手を上へ。
ユリヤはトンファーをしまい、こちらも両手を掲げる。
そうして、声を合わせた。
「彗星☆乱舞!」
数多に降りそそぐ箒星のごとく。
いやそれ流星では? というツッコミは横に置き、光の玉が尾を引いて巨大な門に流れていく。
巨大な門が咆哮を上げた。
動きを取り戻したようで、腕がさらに伸びた。
両手を前に突き出して、受け止めんと短い脚を踏ん張る。
だが両手からするりと抜けた光の玉は、容赦なく門扉を削っていく。自動回復が追いつかない数の暴力で、やがて防ぐ両手をも粉砕した。
巨大な門が、しゅわしゅわと溶けて消えていく。
たぶんベールの下で口をあんぐり開けて放心しているマユさんに、ユリヤがすいーと寄ってきた。
「先への門、消えちゃったわね」
「~~~っ!」
声なき声とともに、非難の目を向けるも。
「ま、正規のルートはあるんだし、鍵を見つけるより早かったかもよ?」
ユリヤは悪びれもせず、ウィンクで締めくくった――。
今日の配信はこれで終わり。
明日もがんばろー、となったのだけど。
イリスとマリアンヌお姉ちゃんのあの演出。
というか、あの魔物ってどこからもってきたんだ? 俺、指示してないんだけど。
短編書きました。
『未来の私がネタバレしてくる! どうせなら詳しくお願いできますか?』
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以下はあらすじ。ご興味あれば作者ページからどうぞ。下に直リンクも貼っておきます。
ーーあらすじーー
ある日、手鏡に見知らぬ美女が映っていた。
口も態度も悪いが、予言はすべてぴたりと的中する。
地味で平凡な私だけど、侯爵令嬢にして第二王子の婚約者。いわゆる超勝ち組。
なのにその女、あろうことかこんな予言をしてきた。
『公衆の面前で婚約破棄を言い渡されるわ』
え、私、どうすればいいの?
いつの間にかそばにいる、この覆面男は誰なのよ?
待って。今の平手打ち、やっちゃってもよかったの?
どうせネタバレするのなら、もっと詳しくお願いします――。
作者ページに作品リンクがありますので、そちらからどうぞ。
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